韓国では2009年6月に5万ウォン紙幣が登場。1973年に登場した1万ウォン紙幣をぬいて最も高額な紙幣となっています。 先端技術を駆使し、様々なところに驚きの工夫が隠された5万ウォン札を、徹底解剖!

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=表、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=裏、『韓国旅行コネスト』より引用)

サイズ

154×68mmと、現存紙幣の中では最も大きいサイズ。 ちなみに韓国の紙幣は額が上がるにつれ6mmずつ横幅が大きくなっていて、千ウォン札とは18mm、「区別がつきにくい」という声があがっている5千ウォン札とは12mmの違いがあります。

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=5千ウォン札よりも12mm長い、『韓国旅行コネスト』より引用)

5万ウォン札の色は「黄色」を基調としています。「赤みがかった黄色」の5千ウォン札とは、色の面でも間違いやすいという指摘が少なくありません。 夜間タクシーの料金支払い時など、暗い場所では特に注意してくださいね。

人物

申師任堂(1504~1551)

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=紙幣に描かれている人物は申師任堂(シン・サイムダン)。朝鮮時代中期の女流書画家です。、『韓国旅行コネスト』より引用)

韓国の貨幣で実存女性が描かれたのは今回が初めてで、話題を集めました。申師任堂の肖像画製作にあたっては、生存当時の頭髪や服装等について専門家による検討が練られたとのこと。

一般的にお札に描かれる人物は、偽造防止の観点から細かい髭や曲線のラインが強調されるそうですが、申師任堂の場合はまとめ髪にそれが表れているのかもしれません。

どんな人物?

申師任堂は、山水、葡萄、草、虫などの絵画、漢詩などの分野で優れた作品を残しています。 また、徳水(トッス)李氏の元秀(ウォンス)と結婚、7人の子女の教育に励んだ申師任堂は「良妻賢母」の象徴的人物ともされています。

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=江原道(カンウォンド)・江陵(カンヌン)には、師任堂の生家烏竹軒(オジュッコン)もあります。、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=師任堂の人生を描いた韓国歴史ドラマ「師任堂、色の日記」(2017年)もヒットしました(イ・ヨンエ&ソン・スンホン主演)。、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=長編小説「女子、師任堂」も2015年に出版されました。、『韓国旅行コネスト』より引用)

実は5千ウォン札の肖像となっている儒学者・栗谷李珥(ユルゴッ・イイ)も息子の1人で、紙幣で親子共演を果たしています!

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=息子の儒学者・栗谷李珥は5千ウォン札に、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=5千ウォン札の裏に描かれている草蟲図(スイカとケイトウの絵)も申師任堂の作品、『韓国旅行コネスト』より引用)

背景の絵(表)

「墨葡萄図」と「草蟲図繍屏」

申師任堂の作品と伝えられている2つの絵画。 「墨葡萄図」はつるから下がったブドウの絵。「草蟲図繍屏」は、8幅の屏風に草木や虫の姿が描かれている作品ですが、その中で紙幣にはナスの絵が採用されています。

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

背景の模様

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

肖像の左側には蘭と幾何学模様が、右側には高句麗(コグリョ)古墳壁画の模様がそれぞれ配置されています。 他の紙幣には建物や道具が描かれているのに対し、5万ウォン札は自然の草木など、柔らかさが強調された優美なデザインです。

背景の絵(裏)

初めての縦デザイン

裏面には既存の紙幣にはなかった縦向きのデザインが採用されました。朝鮮中期画家・李霆(イ・ジョン)の「風竹図」、その上に魚夢龍(オ・モンリョン)の「月梅図」が調和をなしています。

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

偽造防止技術

これまでで最高額紙幣の5万ウォン札。 額面金額が大きくなっただけに、偽造紙幣が出る可能性も、より心配されています。これを防ぐために韓国銀行は先端技術を駆使して様々な箇所に偽造防止の工夫をほどこしました。

その1 特殊フィルムによる帯状のホログラム

紙幣表面の左端に、これまでのお札には見られなかった輝きが見られます。特殊フィルムによる帯状のホログラムが採用されました。

さらにホログラムの中には角度によって模様が変化する太極、朝鮮半島の地図、4つの卦(占いの一つ、易に用いられる基本図象)が描かれています。

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=帯状のホログラム、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=ある角度から見ると太極模様、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=違った角度から見ると朝鮮半島図があらわれます、『韓国旅行コネスト』より引用)

その2 立体型部分露出銀線

新紙幣の偽造防止技術で最も注目を集めたのはこちら!なんと紙幣に隙間が空いています。 これは韓国国内の紙幣では初めて導入された「立体型部分露出銀線」という技術によるもの。 ただし、この隙間は使用するにつれて広がっていくとATMなどに障害を引き起こす可能性があるとの懸念もあるので、無理に広げないようにしましょう。

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=紙幣の間に隙間が!、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=隙間は波状に、『韓国旅行コネスト』より引用)

その3 マイクロ文字

紙幣に顔を近づけて、よくよく目を凝らして見ると、紙幣の図柄のあちこちにマイクロ文字が施されています。

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=襟元に注目!、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=襟元にはハングル創造当時の28字が隠れています。何事もないかのようにちゃっかり偽造防止技術が潜んでいるのがニクイですね。、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=凹版潜像印刷、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=円を囲む「50000WON」の文字が隠れています。、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=「月梅図」に注目!、木の幹に隠れているのは
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=木の幹に隠れているのは 「BANK OF KOREA」!、『韓国旅行コネスト』より引用)

その4 肖像と数字が浮かび上がる

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

絵が描かれておらず薄くなっている部分を光に透かすと、申師任堂の顔が浮かび上がります。 肖像の顔が浮かび上がる点は他の紙幣も同様ですが、5万ウォン札はさらに五角形の中に数字の「5」が入った模様も現れる、凝ったしくみになっています。

その他もろもろ

その他、視覚障害者用の印はもちろん、絵の部分だけざらざらして触感が違ったり、裏の「50000」数字の色が変わって見えたりと隠れた秘密がもりだくさんです!

発行日のにぎわい

2007年1月に新1万ウォン札が発行された際、韓国銀行の前には発行番号の早い新札を手に入れようとする人々が数日間にわたり徹夜で列を作り、現場は混乱しました。

そのため5万ウォン札は、発行番号1~100番は貨幣金融博物館に展示、101~2万番はオンライン上の競売に。2万1番以降100万番までは都市銀行などに無作為に配布されました。

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=5万ウォン札発行当日の韓国銀行は、朝から大変なにぎわいでした。、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=徹夜組は減ったものの、長蛇の列ができました。、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=新札を手に入れてほくほく顔の人が大勢見られました。、『韓国旅行コネスト』より引用)

5万ウォン札の流通

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=5万ウォン札は、ATMでも5万ウォン札対応機器が別途設けられています。、『韓国旅行コネスト』より引用)

韓国銀行によると、5万ウォン札の貨幣還收率(貨幣発行額に対する貨幣還收額の比率。比率が高いほど流通しているという意味)は2012~2014年の間に25%台まで落ち込みました。 カード社会の韓国では、現金よりもカード払いが一般的です。また、インターネットバンキングはもちろん、最近はモバイル決済サービスも充実しています。そのため、高額の紙幣が使われにくいことも関係しているかもしれません。

そんな中、2017年3月にはかつてない65%台まで回復。この背景には、大きく2つの要因が影響しているとされています。

1つは、韓国銀行が、かねてから社会的に疑惑が持たれていた5万ウォン札での裏金工作・不正取引の防止対策を2015年から積極的に行なったこと。5万ウォン札還收率の高い銀行や金融会社を対象に新札の1万ウォン札が割り当てられ、5万ウォン札回収が促されたことで、より正確な還收率の算出が実現したという見方です。 もう1つは、公務員や教職員らへの贈り物の上限を5万ウォン以下と定める「不正請託および金品授受禁止法」(通称キム・ヨンラン法)の制定(2016年9月)によって、法人カードの使用が自然に減り、代わりに現金払いが増えたことです。

[おまけ] 5万ウォン札1枚で何ができる?

(2017年現在)

韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=韓国高速鉄道KTXで地方旅行 ソウルから慶州(キョンジュ)までは5万ウォン札1枚で行けます!、『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国紙幣のお話~5万ウォン札~
(画像=高級韓定食 沢山のおかずが出てくる高級韓定食も、お店やコースによっては5万ウォン前後で食べられます!、『韓国旅行コネスト』より引用)

提供・韓国旅行コネスト

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