多い日には1日で2000人近くの方と触れ合うCAという職業。ここでは、過去にCAとして働いていた星名さんが、このような空の上で培ったコミュニケーション力やおもてなしの心をみなさんに少しずつシェアしていきます。今回は、「手渡しによって伝わるもの」がテーマです。

今年の例年以上に寒い冬も過ぎ去り、ポカポカと春の陽気が感じられる今日この頃。

菜の花や桜も咲き始め、春の訪れを感じています。

そして、この時期と一緒にやってくるのが別れと新しい出会い。

そんな季節にぜひ皆さんにお試しいただきたい「心遣い」について、今日はご紹介したいと思います。

■目と目を合わせてとるコミュニケーション

客室乗務員として入社し、新人訓練が終わると、一人ひとり先輩インストラクターがつき、実際の機内でのOJT(実際の職務現場において、業務を通して行う教育訓練のこと)が始まります。

皆さんも機内にご搭乗になると、訓練生バッジをつけた新人CAの後ろを、目を光らせた先輩CAがピタッとくっつき、指導をしているのをご覧になったことがあるかもしれません。

お客様にとっては新人もベテランも関係ありません。

たまたまご自分の席を担当することになったCAが新人だからといって、ドリンクがもらえなかったり、安全性に問題があったり、そのようなことは絶対に許されません。先輩CA方も、早く一人前のCAになって欲しくて、ビシビシと厳しい訓練が続くのです。

そんな中、新卒採用でありながら、ワーキングホリデーで海外で働いた経験もあり、年齢も周りより2歳年上だった私は、社会人経験のない卒業したばかりの新入生と比べてサービスが得意で、機内で指導されることはほぼなく、すんなりとOJTを終えることができました。

職場で“話しやすい環境”をつくる手渡しの心
(画像=『DRESS』より引用)

話は少し変わりますが、客室乗務員はシフト勤務で、いつも異なるメンバーでフライトをしています。そのため、一人ひとりにメールボックスが割り当てられ、そこにプリント類が配られたり、同期からお土産が入っていたりするのです。

夏休みに旅行に行った私は、お世話になったOJTインストラクターさんにお土産を渡したく、しかし、次にお会いできるのがいつかわからないので、付箋にメッセージを書いてお菓子をメールボックスに入れました。

お菓子を入れるだけよりも、メッセージをつけたほうが気持ちが伝わると、私なりの配慮をしたつもりでした。

ですが、その後先輩は「人にものをプレゼントする時に、付箋にメッセージはやめたほうが良いと思います」とおっしゃったのです。

普段はとても優しかったインストラクターさん。私は先輩がきっと喜んでくれるだろうと思ってやったことでしたので、びっくりして、少し悲しい気持ちになりました。

しかし、振り返ると、その先輩はすごく大切なメッセージを伝えてくださったのだと感じています。コミュニケーションは直接取ることで、その心をお届けすることができるからです。

■話しかけやすい環境を作ってくれた機長さんのお菓子

もうひとつ、コックピットにいる機長さんとのお話です。

さまざまな事故や事件から、お客様の安全を守るため、最近ではコックピットへの入室は非常に厳しく制限され、客室乗務員であってもコックピットに入る機会はほとんどありません。

フライト前にブリーフィング(状況説明・報告のようなもの)が行われ、機長さんや副機長さんとお顔を合わせることもありますが、定時運行のため、そこでの会話は必要最低限の情報提供であることが多く、ゆっくりお話する機会はありません。

そのような環境で、ときどきいらっしゃるのが、空港でお菓子を買ってきてくれる機長さん。

チーフパーサーに「みんなで食べてね」とお渡しくださる方がほとんどで、それだけでもお心遣いはありがたいのですが、その中で、一人ひとりの客室乗務員に手渡しでくださる機長さんもいらっしゃいました。

「お菓子をあげたらみんなが喜んでくれる」という思いはもちろんあると思います。しかし、きっと心の中には、メンバー間の心の距離を縮め、「いつもは頑丈にロックされているコックピットのドアだけれども、何か異変があった時には気軽に話しかけてくださいね。」というメッセージが込められていたように思います。

職場で“話しやすい環境”をつくる手渡しの心
(画像=『DRESS』より引用)

■たった10秒のコミュニケーションで、伝わる何かがきっとある

その後勤めていた外資系企業では、お土産を買ってくると、真ん中にあるテーブルに箱ごとポンっと置かれ、「お好きにどうぞ」とメッセージが書かれていることがしばしば。

時には名前もないので、誰からのお土産かはわからないまま、頂戴し、そのままお礼は言えないということが良くありました。

そのような中で、私はCA時代の学びを生かし、「〇〇さん、お休みをいただきありがとうございました。〇〇へ行ってまいりました。おひとつどうぞ」と手渡しするよう心がけておりました。

「お礼を言って欲しいから」ではありません。

「手渡し」するからこそ、私の気持ちを伝えることができると思っていただからです。

このたった10秒の会話のおかげで、一人ひとりの社員さんとコミュニケーションを取ることができ、秘書として、スケジュール調整などで依頼をすることが多い立場にあった私は、仕事の効率化も図ることができていたように思います。

出会いと別れの季節。

皆さんも、これからたくさんの「ありがとうございました。お世話になりました」や「初めまして。よろしくお願い致します」という言葉を伝える機会があるかと思います。

そのような際には、直接面と向かってご挨拶をすることで、伝わる何かがあるはずです。ぜひ皆さんのそのお気持ちを、笑顔と一緒に相手に届けてみてはいかがでしょうか。


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