「生き方がヒップホップ的」とラップの道へ
「高校はさすがに出たほうがいいと親戚から言われ、何か問題を抱えている人ばかりいる高校になんとか入れてもらいました。その間もいろんな人の家でお世話になっていました。この頃、弾き語りだけでなくラップも聞くようになっていました。
きっかけは、家のない子たち同士で集まっていたとき、のちに一緒にTENG GANG STARRというラップグループで活動することになり、リーダーになるkamuiさんという人がやってきて、家庭の事情や母親が依存症の回復施設に通っていることなどを話したら『それはすごくヒップホップ的だからラップにしたほうがいいよ』と言われたことです。
そして翌日、Chief Keefというシカゴのラッパーのドキュメンタリー映像を持ってきてくれました。『Don’t Like』という楽曲のMVがあって、犯罪をおかして保護観察中で外に出られないため家の中で全て撮影されています。それがすごくカッコよくて、これ、私たちとも似てないか?って思ったんです。その曲を聴いて、こういう表現方法があるのかと救われました」
路上で寝るときはモノや壁になりきる
家のない暮らしを送っていたなかむらさんでしたが、18歳の頃、当時暮らしていた親戚の家の人とうまくいかず、家出をします。その家の人は、彼女が奇抜なファッションをすることをよく思わず、小言を言い続けていたそうです。最終的にとあるトラブルに巻き込まれた際「あなた自身に問題がある、尼寺に行きなさい」と言われ、家出をすることにしたといいます。
「知人の家に泊まることもあれば、道端で寝ていたこともあります。あるときはバス停の椅子で寝ていたらバスが停まってしまったこともありました。よく、『道端で寝ていてレイプとかされないの?』ときかれますが、道で寝るときはモノや壁になりきります。
リュックにコンバースの紐をつけたりゴミのようなものをぶら下げたりして寝ていました。そういう格好だったせいもあったのか、被害には遭いませんでした。他にも生きていくためのライフハックとして、原宿に行って落ちているタピオカを拾って食べたりしていました。そのことは『Kokodoko』 という楽曲でラップにしています」