新型コロナのせい?

どうして私は精神科に入院したのか。コロナ下で40歳を迎える女性の手記
(画像=『女子SPA!』より引用)

気晴らしをしたくても、この頃緊急事態宣言が延長されたため、出掛けにくくなっていました。友人を飲みに誘うこともできません。気分転換ができると期待していた出張取材も中止になりました。

 新型コロナを憎く思います。ですが、新型コロナのせいとばかり言えません。思えば、昨年の5月にTwitterで「コロナが収束したらしたいこと」というハッシュタグを見たときから、ずっともやもやしているようにも思うのです。いろんな人がさまざまな楽しい事柄をつぶやいていました。「私は何をしたいだろう?」

 少し考えてみましたが、何も思い浮かばず愕然(がくぜん)としました。答えは「緊急事態宣言が明けても、元の通り仕事をするだけだろう」。私はただ日々を仕事に費やしているだけの何もない空っぽの人間のように感じました。

まさかの入院を勧められる

 自分でもわかるほど表情がどんよりして、「誰か助けて」と心の中で繰り返していました。それから、私はやたらと精神科を訪ね回るようになっていました。ですが、イライラや不安を和らげる薬、睡眠導入剤をもらっても、なかなか気持ちが元に戻りません。

 そして、4軒目の病院で「驚くかもしれませんが、入院しませんか?」と言われました。私はものの見事に驚いて「まさか」と思いました。入院なんてそんな大げさな。

 とりあえず、ということで、看護師さんに病棟を案内してもらうことになりました。ホテルのようにきれいな施設です。  ピンクの可愛らしいゆったりとしたソファが置かれたラウンジで、患者さんが思い思いに寛いでいました。緑が日の光を浴びてきらきらと輝く中庭があり、木目調の壁がモダンな廊下に病室が並んでいます。一番奥には一面ガラス張りの向こうに山々を望むラウンジが。  おしゃれなペンダントライトをいくつも吊るし、色とりどりのクッションが所狭しと置かれたソファもまた心地良さそうでした。

どうして私は精神科に入院したのか。コロナ下で40歳を迎える女性の手記
(画像=『女子SPA!』より引用)

気になるのは周囲の目

 「高いでしょう?」 診察室に戻った私は開口一番そう言ってしまいました。ですが、高額療養費制度と生命保険の医療保障を使えば、そんなに費用はかからないとのこと。ここで心がぐらりと傾きます。もしかしたら私、入院できるかも? 「入院する中でいろんな角度からゆっくりあなたを掘り下げましょう」。確かそんなふうに言われたと思います。

 帰りの車の中で、もうほとんど「入院したい」に変わっていました。何も障害がないのなら。仕事はフリーランスだし、誰にも許可を取る必要はありません。でも、精神科病棟に入院することを周囲の人はどう思うだろう、どういう目で見られるだろう?

 すぐさま「入院しよう」と思わなかったのは、それがどうしても引っかかったから。なかなか大きなハードルのように感じました。精神科にお世話になることになったら、同じように考える人は少なくないのではないでしょうか。この精神科に対する偏見の話は追々いたしましょう。

 私は自分の考えを整理した結果、「なんだか面白そうだ」というライターとしての興味の方が勝ってしまったのでした。

どうして私は精神科に入院したのか。コロナ下で40歳を迎える女性の手記
(画像=『女子SPA!』より引用)

ちょっとこじらせただけと思っていたのに

 こうして私は精神科病棟に入院することになりました。でも、このときは今考えると自分がどうしてこんなことになったのか、まだよくわかっていなかったように思います。たまたま、ちょっとこじらせてしまっただけ、と考えていました。

 ですが、その後送った病院での日々の顛末(てんまつ)を考えると、やはり必然だったのでしょう。

―ルリ子の精神科入院手記―

<文/カンザキルリ子> カンザキルリ子

提供・女子SPA!



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