体罰、暴言、過干渉……子どもを自分の思い通りに支配しようとする毒親。ふつうの親でも、忙しさやプレッシャーで余裕をなくして、子供を追い詰めてしまうことはある。あなたは「自分は毒親ではない」と確信をもって言い切れますか?
日本社会が抱える子育ての問題について、幼い子どもを育てる小説家の樋口毅宏氏と、エッセイストの犬山紙子氏がリモート対談した。
子育てに比べると、仕事は楽だった
犬山:息子さんは、確か今年で5歳ですよね?
樋口:はい。犬山さんの娘さんは4歳で。ウチはおむつも取れて、前よりは楽になったのですが、犬山さんのところはどうですか?
犬山:そうですね。まだ大変な部分もありますが、小さい子特有の“命の危険”でヒヤヒヤするような不安は減ったかもしれません。
樋口:わかります! 赤ん坊の頃は、窓に近づかれるだけでもゾッとしました……。
犬山:自ら死ににいってるのか!?って思いますよね。
樋口:もうね、僕は今まで、“この世で一番大変なのは小説を書くこと”だと思っていたんですけど、子育てに比べれば楽(笑)。
犬山:私も同じ感想でした(笑)。あと、子どもを育てていると、今まで見えていなかった世間の厳しさも感じるようになりました。
樋口:子どもが騒ぐと、舌打ちされたりね。男親の僕でもされるんだから、ひとりで子どもを連れている女性はもっと大変でしょう。
犬山:はい。子連れに冷たいなあ、と感じたことは何度かあります。育児に対する理解度が高い人と、低い人の差が本当に激しい印象。
親になったらプライベートな時間を捨てろ?
樋口:やっぱり虐待するような親でなくとも、余裕がないと子どもを追い詰めてしまうことってあると思う。
犬山:まず親にプライベートな時間がないのもよくないですよね。
樋口:そう。僕の場合、夫婦二人でライブに行くとなると、ヘルパーさんにお金を払ってようやくです。それも年に1回あるかないか。
犬山:ウチもそんな感じです。しかも恐ろしいことに、お母さんと赤ちゃんは24時間一緒じゃないといけないという価値観を押しつける人もいる。少しでも自分の時間が欲しいと言うと、母性がないだの、子どもがかわいそうだの……。
樋口:女性が自分のパートナーをどんなに好きだとしても、一日に数時間は別々の時間が欲しいのは当たり前。それを口に出していいのに、対象が「夫」から「赤ん坊」に変わると、「母親のくせに」って怒る人がいるんですよ。マザコンの母性信仰!
犬山:親になったら自分の時間は捨てろみたいな考えね。でも、親だってプライベートは絶対に大切。それがなくなって心が死んじゃったら、子どもに笑顔で接するのも難しくなると思うんです。