DRESSに何度も寄稿していただいている美LIFEクリエイターの長谷川朋美さん。現在はペットの4匹のワンちゃんと一緒に東京と葉山で充実した二拠点生活を送っている長谷川さんですが、過去には「子どもができない」と深く悩んでいた時期が続いたそうです。そんな長谷川さんに現在の心境についてお伺いしました。

22歳で起業してから経営者として多忙な毎日を過ごしてきた長谷川朋美さん。

子どもの頃から「ママになりたい!」という夢はあったものの、自分やまわりのことで精一杯で、そこに費やす時間も体力もなかったと言います。

28歳で結婚されたときは、30歳までには子供が欲しいなと思うようになり、仕事や時間もそのために調整していったそうです。

ですが、子どもはなかなかできず、苦悩する日々が続きます。そして訪れた最愛の夫との永遠の別れ――。

「あるがままを受け入れたい」「今の自分がベスト」と話す長谷川さんに、現在の心境とそうなるに至った経緯についてお話していただきました。

「今あるものを大切にしたい」夫が亡くなってから考えた子どものこと
(画像=長谷川朋美さん、『DRESS』より引用)

■夫を事故で亡くしてから、見える世界がガラリと変わった

――長谷川さんの「ママになる未来」と題されたブログ記事には、長谷川さんも子どもができなくて悩んでいた時期があったと書かれていました。具体的にはどのようなことだったのでしょう?

(婦人科の)病院に通ったりはしていなかったのですが、自分なりにタイミングをとったり、基礎体温を記録したり、排卵の時期を見たりしていました。

それでもなかなかできなかったですね。20代後半から35ぐらいまではよく落ち込んでいました。「タイミングばっちり!」と盛り上がっても、生理がくると「ああ、またやっぱり……」と落ち込む。その繰り返しでした。

――ちょっと意地悪な質問かもしれませんが、そういう時期にお子さんのいる女性を見て、うらやましさや妬みなどのマイナスの感情が生まれることはありませんでしたか?

それは思いますよね……。
同じような境遇の友達と話し合ったりしたこともありましたし、すがるような気持ちで情報を聞きに行ったり、勉強したりもしました。

でも、それをしているときは、足掻いている感じで辛かったです。

――どうやってその辛さを乗り越えたのでしょう?

やっぱり自分を変えるしかないですね。

私だけじゃないと思いますが、なにかに過剰に期待して、それが叶わなかったとき、過剰に落ち込むじゃないですか? 

それを5年以上繰り返して、過剰に期待することをやめようと思うようになりました。それは自分にとって必要なことだったと思っています。できることはするけど、過剰に執着や期待をしない。今も辛さはゼロではないですけど、かなり楽にはなりましたね。

――そう思うようになった大きなきっかけは……。

子どものことに限らず、人生にはいろいろピンチがあると思いますが、私は夫を事故で亡くしたことが一番大きかったです。人生観がガラッと変わりましたね。

――どのように変わったのか、あらためて教えていただけますか?

すべての人、ものに対する見方、捉え方が変わりました。

すべてを受け入れるスタンスに変わったんです。

――すべてを受け入れるスタンスですか……?

それまでは「ああしたい」「こうしたい」と思っていても、それが叶わないと悔しいと感じてきました。「ないもの」にフォーカスして体力やエネルギーを消耗していたんです。

でも、今は「あるもの」にフォーカスするようにして、「ないもの」や「ない状況」に対してはなにも考えなくなりました。……そうでもしなければ自分を支えきれない部分もあったのかもしれません。

「もし事業を起して失敗したらどうする?」とか「もし病気になったらどうする?」とか「もし」を考えはじめるとキリがないじゃないですか。

そうなったら考えますけど、そうなる前から不安を感じて無駄にエネルギーを使いたくない。それならポジティブなほうにエネルギーを使って、心地よく楽しく過ごしたいんです。

――どこにフォーカスするかが大切なんですね。長谷川さんは、今の生活のほとんどを楽しいことが占めているんですか?

9割以上ですね(笑)。

ネガティブなことがあることはわかっているけど、フォーカスしていないからそれほど気にならないんです。

――ああ、なるほど。子どもがいない人に対して一番失礼なのは第三者の「いないんですか?」「まだ作らないんですか?」というような声だと思いますが、それは長谷川さんが言う「フォーカス」させる言葉だと思います。

そうですね。本人はまったく気にしていなかった可能性もあるわけですから。

――自分に欠けている部分をいちいち気にして苦しむ必要はない?

そうそう! 子どもに関して言えば、40歳になって授かる人もいれば、授からない人もいる。縁としか言いようがないですよね。

ただ、「親のために子をつくりたい」「夫婦仲のために子をつくりたい」という考え方は自分を苦しめることになると思います。「誰かのために」でも「自分のため」でもない。自然現象のようなものなんですから。

――不妊治療をしても授からないときもあります。それも縁かもしれませんね。

私の友達で不妊治療をしている方も大勢いますよ。

お子さんが授かって、とても幸せに暮らしている方も大勢います。私は今の状況では不妊治療を選ばないのですが、将来パートナーによっては私の考え方が変わることもあると思います。

――長谷川さんのポリシーである「私たちは誰でも、理想のライフスタイルを作れる。なりたい自分になれる」というフレーズを読んだとき、この人は何でも手に入れられるのかな? とも思ったのですが、今のお話しを聞いて、そういうことではないのだと思いました。

あはは(笑)。今は「もし、子どもを授からないとしても、それが自分にとってベストなんだろうな」と思えます。手に入らなくてもそれがベストだと考えればいいんですよ。とっても楽になります!

――ご主人の事故があって、長谷川さんが今おっしゃった考えに至るまで、どれぐらいかかりましたか?

えっと、5年ぐらいかかりましたね。今年の夏でちょうど6年なので。

――そうですよね……。

でも、自分の人生の中盤以降のテーマはそこなんだろうな、と思っています。このような考え方を、経験を通して他の方に伝えるのも私のミッションですね。

■まずは、今の私が楽しく生きていくこと

「今あるものを大切にしたい」夫が亡くなってから考えた子どものこと
(画像=『DRESS』より引用)

――今、子どもができなくて悩みを抱えている女性にアドバイスを送るとしたら、どのようなものになるでしょうか?

子どもはパートナーあってのものですが、最終的にはパートナーとの関係が充実していればいいと思っています。

「子どもがいなくても幸せだけど、子どもがいたらもっと幸せ」くらいがいいですね。逆に、パートナーとの関係が崩壊寸前なのに「子どもができたら幸せになる」とは思わないほうがいい。いつまでも幸せにはなれないと思います。

まずは自分を満たすことができないと、他人を満たすこともできない。
子どもは自分を満たすものではなく、自分から満たされて、そこからあふれ出たものだと思っていて。栄養にしても、血液にしても、自分から分け与えるものですからね。精神的にも肉体的にも不安定なままの状態で子どもを持つと、余計に不安定になるんじゃないかと思います。

なにより大切なのは自分のマインドです。

自分が自分でよかったと思ってほしいですし、自分の人生を受け入れてほしい。自分が満たされている人は、仕事や子どもの悩みも引き受けることができます。他人の価値観を押し付けられて、振り回されることがなくなりますからね。

――やみくもに「ポジティブになれ」ということではなく、悲しいことがあれば悲しめばいい。自分の人生を素直に受け入れるということですよね。

そうですね。

――「40歳までに子どもが欲しい」という目標を立てて、それが現実にならず、苦しんでいる人もいるかと思いますが、長谷川さんはどうお考えですか?

私にとって「目標」は自分を縛るものでしかないんです。

もちろん怠け癖がある人には目標があったほうがいいですし、一概には言えませんが、神経質で心配性で自分と他人を比べてしまいがちな人にはあまりおすすめしません。

私も20代の頃は目標を立てて生きていましたが、だから辛かったんだな、と気づきました。今は5年後のこともよくわからないです(笑)。

子どもをつくるにはタイムリミットがあるので、スケジュールを意識することは大切ですが、タイムリミットを人生の一大事だと捉えると辛くなってしまうと思います。将来やりたいことやワクワクすることはイメージしていますけど、人生において「○○までに☓☓をしなければいけない」という目標は必要ないと感じています。

――では、最後に長谷川さん自身が、今、子どもについてどのようなお考えをお持ちかお聞かせください。

たとえば「プール付きの大豪邸が欲しいですか?」と聞かれれば、そりゃ手に入るなら欲しいじゃないですか(笑)。でも、手に入らなくても落ち込むことはありません。今は、子どものこともこれと同じ話だと思っていて……私にとっては、子どもはいてくれたら最高に嬉しいけど、いなくても、最高に楽しい人生かなと思います。

まずは今を楽しく生きていく。将来、子どもが欲しくなるときが来るかもしれませんが、それはそのとき考えます。特別養子縁組を行い、養子を授かる選択肢もあると思っているので。

取材・Text/大山くまお

取材協力/長谷川朋美

美LIFEクリエイター。株式会社ルミエール代表。22歳で起業し、8年間述べ6店舗のトータルビューティーサロンを経営を経て、現在は、葉山と青山を拠点に、全国で講演や、世界中を旅しながら、女性の自由でクリエイティブな生き方やライフスタイル、心と身体のヘルス&ビューティーについて発信している自分と向き合う学校ビューティーライフアカデミー主宰。 著書に『やりたいことを全部やる人生』『自分の人生が愛おしくてたまらなくなる100の質問ノート』など8冊出版。


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