京畿道龍仁市 (株)マシンヌン サンサン

時を重ねながら熟成する醤(ジャン)は造り手の人生そのもの。 醤(ジャン)を知り、韓国食文化の魅力を味わう。

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

醤油や味噌など日本の味に欠かせない調味料があるように、韓国でも味の基本となる調味料が古来から発達してきた。それが、コチュジャン(唐辛子味噌)、カンジャン(醤油)、テンジャン(韓国味噌)をはじめとした、「醤(ジャン)」と総称される穀物主体の伝統調味料だ。

古代、高句麗(コグリョ)の時代に起源を持つとされる清麹醤(チョングッチャン)。ツンと鼻をつく特有のにおいから韓国では敬遠されがちな食べ物のひとつだが、豊富な栄養価と優れた消化・整腸作用から健康ブームの近年特に脚光を浴びる伝統食品だ。

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

そんな清麹醤に魅せられ、さらなる普及のために奔走している女性がいる。ソウル・京畿道(キョンギド)を中心に、韓国料理のフランチャイズチェーンを展開する(株)マシンヌン サンサン、オ・ウォンジャ代表。

清麹醤をはじめとし、店舗で使用する醤(ジャン)類は全て自家製というこだわり。韓国固有の味を広めることを自らの使命とし、周囲から「清麹醤の伝道師」とも呼ばれるオ代表に話を聞くため、京畿道・龍仁(ヨンイン)市にある本社を訪ねた。

数知れぬ失敗から導かれた独自ノウハウ

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

元々、自信のあった料理の腕を生かそうと、それまで営んでいた伝統茶店から韓国料理店へ業種転換したのは1990年代初頭。オ代表が醤作りを始めたのも、その時に遡る。コチュジャン(唐辛子味噌)やテンジャン(韓国味噌)といった醤類は、チゲやナムルなど韓国料理に不可欠の調味料。だからこそ醤にはこだわりたいという思いがあった。

「家庭でも店舗でも市販の醤でまかなうことが主流になるなか、昔ながらの製法で作った本物の醤の味を届けたいと思いました。それなら自分で仕込んでみようと、経営と平行して醤作りを行なうようになりました」 醤の仕込みは夫の両親から教わった。初年度は両親の助けもあり何とか成功したが、生産量を増やし自分で仕込むようになった翌年以降は予想に反して失敗の連続。インターネットでの情報収集はもちろん、知人や店に来たお客さんにまでアドバイスをもらい、清麹醤の権威と言われる教授がテレビで紹介されると研究室に電話をかけて教えを請うた。

しかし、家庭用として少量作る場合の経験談や、実用的とは言いがたい学術知識は、伝統製法で大量生産を行なおうとするオ代表には何の助けにもならなかった。最終的に出した結論は、自分自身が学び、試行錯誤を重ねるしか方法はないということ。現在のノウハウは、無数の失敗作と引き換えにようやく手に入れた努力の結晶だ。

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
本社から車で30分。龍仁市郊外の山間にある仕込み場
韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
陽光、雨雪、風…自然の力で熟成していく ## 食べるクスリ、清麹醤は最良の健康食材
韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

韓国の醤というと、コチュジャン、カンジャン(醤油)、テンジャンが代表的だが、オ代表がとりわけ注目するのが清麹醤。幼い頃から食べてきた清麹醤だったが、その魅力に改めて気づかされたのは、店舗視察のために訪れた日本でだった。

「連日の飲食店巡りで疲れ気味だった胃腸を癒してくれたのが、朝食で食べた納豆ご飯でした。胃にもたれることなく、翌日にはお腹の調子も良くなり、『体にとって薬になる食べ物だ』ということを身をもって実感しました。韓国には納豆に近い清麹醤があります。お客さんにも私と同じように感じてもらいたいと、帰国後は清麹醤を活用したメニュー開発に一層力を入れました」

清麹醤に含まれる酵素には、血液を浄化させ、血栓を予防する効果があると言われている。また、整腸作用を促す乳酸菌の量はヨーグルトをはるかに超え、ダイエット中の便秘予防も期待できる。 最良の健康食であること―それが清麹醤の一番の魅力であるとオ代表は語る。

味も糸引きも力強い、評判の清麹醤

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

(株)マシンヌン サンサンでは、現在、清麹醤を龍仁市内の店舗に併設された仕込み場にて1週間に1~2回ペースで仕込み、1カ月に約2,000kgを生産している。チゲ1食に約90gが使用されることを考えると、ざっと22,000食分を超える量だ。

これらはチョングッチャンを看板メニューとするチゲ専門店「チゲ愛感動(チゲエカムドン)」など傘下ブランド全店に供給される。

【清麹醤作りの流れ】

作り方は古くから伝わる伝統方式。明け方からかまどに火をくべ、8時間かけて大豆を茹で上げる。茹でた豆はざるに広げられ、四方に稲わらを立てかけた発酵室で2日間寝かせると完成。仕込みから熟成まで最低3年かかる味噌や醤油と異なり、熟成期間が短い清麹醤は速成醤(ソッソンジャン)とも呼ばれる。

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

「よく熟成した清麹醤は、まろやかで味に深みがあります。また、むっちりとした粘り気があり、しゃもじを入れると、ずっしりとした感触が伝わってきます。糸引きの良さは納豆ほどではありませんが、清麹醤は糸自体にしっかりとした力強さがあるのが特徴です」

40~45度に保たれた清麹醤専用の発酵室に入ってみた。湿度は発酵に適した75%。もわっと押し寄せる熱気に一瞬くらりとする。気温・湿度ともに適度で快適な春・秋は、比較的発酵工程に手間がかからない。

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

問題は湿度の高い夏場と、外気との温度差が開く真冬。熟成し過ぎると苦味が強まり、反対に熟成が浅いと味に深みが出ない。温度・湿度調整は機械の力を借りるが、機械とて常に完璧とはいかない。温度・湿度のコントロールには特に注意を払う。

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

オ代表の作る清麹醤は、においが控えめで食べやすいと評判だ。納豆に似た独特のにおいは、清麹醤だけが持つ美味しさの秘密でもあるが、一方でこのにおいのために清麹醤を苦手とする人も少なくない。

不快なにおいは、発酵途中に雑菌が繁殖するために発生する。かといって無菌状態で発酵させると、清麹醤特有のにおいと味は生まれない。発酵に欠かせない菌の繁殖管理は、生産者の重要な役割のひとつである。

「衛生管理には気を使いますが、他にこれといった秘訣はありません。現在の発酵室は10年以上使用してきました。そのためか、自然と清麹醤以外の菌が繁殖しにくい環境が形成されているようです」

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

ソースへの活用など世界を意識した開発が必要

2005年、飲食店経営の豊富な経験を土台に、オ代表は韓国料理専門の外食フランチャイズグループ、(株)マシンヌン サンサンを設立。2011年7月現在、定食料理店や民俗居酒屋など4ブランドを展開している。

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

韓国料理に特化したのは、醤類をはじめとする伝統食を後世に伝えていかねば、という使命感からだ。ファストフード、インスタント食品が食生活で大きな幅を占めるようになると、手間も時間もかかる伝統食の存在は徐々に忘れられていく。そんな状況をただ見守るわけにはいかなかった。 「食べ物というのは、食べれば食べるほど味を覚えていくもので、その過程は『練習』と言えます。それは、母親のお腹の中にいたときから始まり、大人になっても味に対する記憶は残り続けるものです。だからこそ、歳をとっても忘れない、韓国固有の味を提供していくことが重要だと考えています。」

経営なら経営、醤作りなら醤作りと、どちらかを専業で行なうケースは多いが、オ代表のように、それらを同時に成し遂げた例は少ない。伝統醤類の研究と普及に向けた絶え間ない努力は世間の注目を集め、2007年には韓国外食産業経営学会が主催する「外食産業経営人賞」にて、見事大賞の栄誉を手にした。

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

韓国料理の発展には、絶え間ないメニュー開発が欠かせない。オ代表は、その足がかりとして伝統醤類をいかに活用していけるかが重要だと強調する。

「オイスターソースや豆板醤ソースなど、海外には世界的に有名なソースが多数存在します。韓国にもコチュジャン、カンジャン、テンジャン、そして清麹醤と、世界に誇れる醤類が存在するにもかかわらず、アレンジを加えてソースにするなど形を変えてアピールしていく努力が十分に行なわれていません。まだまだ弊社は規模が小さく、私自身も研究不足ですが、今後はそういった伝統醤類のグローバル化にも取り組んでいくつもりです」

自らを無類の清麹醤好きと称し、醤類に関する話題には生き生きとした表情で熱く語るオ代表。その眼差しには、伝統食の担い手として世界というさらに大きな舞台を見据える旺盛なチャレンジ精神があふれていた。

幼い頃から食べ続けてきた韓国の伝統食、そして自家製醤への強いこだわりにより実現した、高い水準での標準化。ソウル、京畿道の各支店で、ぜひ「本物の味」に出会ってみてほしい。

(株)マシンヌン サンサン

韓国料理の継承・発展を目的に、2005年に設立された外食フランチャイズグループ。社名は日本語で「美味しい想像」。セントラルキッチン(集中調理施設)導入による徹底した品質管理、伝統醤類の自家生産を通じ韓国固有の味を広く提供し、2011年7月現在、ソウル・京畿道地方を中心に4ブランド、約40店舗を展開中。

住所:京畿道(キョンギド) 龍仁(ヨンイン)市 処仁区(チョイング) 慕賢面(モヒョンミョン) 陵院里(ヌンウォンリ) 137-11(位置) 電話番号:031-322-4992 ホームページ:www.zzigae.com

土俗韓定食店「チョックモン!」

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

伝統製法で作られる自家製の味噌、醤油、清麹醤などを利用した各種料理と多彩な惣菜がずらりと並ぶ定食メニューがメイン。

モダン民俗居酒屋「ウォルソンネ」

韓国の醤(ジャン) 第4回チョングッチャン
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

バラエティー豊かなマッコリと一品料理を楽しめる洗練された雰囲気の居酒屋。昼食・夕食時ともに利用できるチゲやクッパなどの食事メニューも人気。

京畿道龍仁市 (株)マシンヌン サンサン 時を重ねながら熟成する醤(ジャン)は造り手の人生そのもの。 醤(ジャン)を知り、韓国食文化の魅力を味わう。

醤油や味噌など日本の味に欠かせない調味料があるように、韓国でも味の基本となる調味料が古来から発達してきた。それが、コチュジャン(唐辛子味噌)、カンジャン(醤油)、テンジャン(韓国味噌)をはじめとした、「醤(ジャン)」と総称される穀物主体の伝統調味料だ。

古代、高句麗(コグリョ)の時代に起源を持つとされる清麹醤(チョングッチャン)。ツンと鼻をつく特有のにおいから韓国では敬遠されがちな食べ物のひとつだが、豊富な栄養価と優れた消化・整腸作用から健康ブームの近年特に脚光を浴びる伝統食品だ。

そんな清麹醤に魅せられ、さらなる普及のために奔走している女性がいる。ソウル・京畿道(キョンギド)を中心に、韓国料理のフランチャイズチェーンを展開する(株)マシンヌン サンサン、オ・ウォンジャ代表。

清麹醤をはじめとし、店舗で使用する醤(ジャン)類は全て自家製というこだわり。韓国固有の味を広めることを自らの使命とし、周囲から「清麹醤の伝道師」とも呼ばれるオ代表に話を聞くため、京畿道・龍仁(ヨンイン)市にある本社を訪ねた。 数知れぬ失敗から導かれた独自ノウハウ

元々、自信のあった料理の腕を生かそうと、それまで営んでいた伝統茶店から韓国料理店へ業種転換したのは1990年代初頭。オ代表が醤作りを始めたのも、その時に遡る。コチュジャン(唐辛子味噌)やテンジャン(韓国味噌)といった醤類は、チゲやナムルなど韓国料理に不可欠の調味料。だからこそ醤にはこだわりたいという思いがあった。

「家庭でも店舗でも市販の醤でまかなうことが主流になるなか、昔ながらの製法で作った本物の醤の味を届けたいと思いました。それなら自分で仕込んでみようと、経営と平行して醤作りを行なうようになりました」 醤の仕込みは夫の両親から教わった。初年度は両親の助けもあり何とか成功したが、生産量を増やし自分で仕込むようになった翌年以降は予想に反して失敗の連続。インターネットでの情報収集はもちろん、知人や店に来たお客さんにまでアドバイスをもらい、清麹醤の権威と言われる教授がテレビで紹介されると研究室に電話をかけて教えを請うた。

しかし、家庭用として少量作る場合の経験談や、実用的とは言いがたい学術知識は、伝統製法で大量生産を行なおうとするオ代表には何の助けにもならなかった。最終的に出した結論は、自分自身が学び、試行錯誤を重ねるしか方法はないということ。現在のノウハウは、無数の失敗作と引き換えにようやく手に入れた努力の結晶だ。 本社から車で30分。龍仁市郊外の山間にある仕込み場 本社から車で30分。龍仁市郊外の山間にある仕込み場 陽光、雨雪、風…自然の力で熟成していく 陽光、雨雪、風…自然の力で熟成していく 食べるクスリ、清麹醤は最良の健康食材

韓国の醤というと、コチュジャン、カンジャン(醤油)、テンジャンが代表的だが、オ代表がとりわけ注目するのが清麹醤。幼い頃から食べてきた清麹醤だったが、その魅力に改めて気づかされたのは、店舗視察のために訪れた日本でだった。

「連日の飲食店巡りで疲れ気味だった胃腸を癒してくれたのが、朝食で食べた納豆ご飯でした。胃にもたれることなく、翌日にはお腹の調子も良くなり、『体にとって薬になる食べ物だ』ということを身をもって実感しました。韓国には納豆に近い清麹醤があります。お客さんにも私と同じように感じてもらいたいと、帰国後は清麹醤を活用したメニュー開発に一層力を入れました」

清麹醤に含まれる酵素には、血液を浄化させ、血栓を予防する効果があると言われている。また、整腸作用を促す乳酸菌の量はヨーグルトをはるかに超え、ダイエット中の便秘予防も期待できる。 最良の健康食であること―それが清麹醤の一番の魅力であるとオ代表は語る。 味も糸引きも力強い、評判の清麹醤 チョングッチャン チョングッチャン (株)マシンヌン サンサンでは、現在、清麹醤を龍仁市内の店舗に併設された仕込み場にて1週間に1~2回ペースで仕込み、1カ月に約2,000kgを生産している。チゲ1食に約90gが使用されることを考えると、ざっと22,000食分を超える量だ。

これらはチョングッチャンを看板メニューとするチゲ専門店「チゲ愛感動(チゲエカムドン)」など傘下ブランド全店に供給される。 【清麹醤作りの流れ】 作り方は古くから伝わる伝統方式。明け方からかまどに火をくべ、8時間かけて大豆を茹で上げる。茹でた豆はざるに広げられ、四方に稲わらを立てかけた発酵室で2日間寝かせると完成。仕込みから熟成まで最低3年かかる味噌や醤油と異なり、熟成期間が短い清麹醤は速成醤(ソッソンジャン)とも呼ばれる。

「よく熟成した清麹醤は、まろやかで味に深みがあります。また、むっちりとした粘り気があり、しゃもじを入れると、ずっしりとした感触が伝わってきます。糸引きの良さは納豆ほどではありませんが、清麹醤は糸自体にしっかりとした力強さがあるのが特徴です」 ふっくら柔らかな豆と、もちっとした粘り気 ふっくら柔らかな豆と、もちっとした粘り気 湿った熱気がこもる発酵室 湿った熱気がこもる発酵室 40~45度に保たれた清麹醤専用の発酵室に入ってみた。湿度は発酵に適した75%。もわっと押し寄せる熱気に一瞬くらりとする。気温・湿度ともに適度で快適な春・秋は、比較的発酵工程に手間がかからない。

問題は湿度の高い夏場と、外気との温度差が開く真冬。熟成し過ぎると苦味が強まり、反対に熟成が浅いと味に深みが出ない。温度・湿度調整は機械の力を借りるが、機械とて常に完璧とはいかない。温度・湿度のコントロールには特に注意を払う。 豆の表面を覆う綿のようなものは菌膜 豆の表面を覆う綿のようなものは菌膜 オ代表の作る清麹醤は、においが控えめで食べやすいと評判だ。納豆に似た独特のにおいは、清麹醤だけが持つ美味しさの秘密でもあるが、一方でこのにおいのために清麹醤を苦手とする人も少なくない。

不快なにおいは、発酵途中に雑菌が繁殖するために発生する。かといって無菌状態で発酵させると、清麹醤特有のにおいと味は生まれない。発酵に欠かせない菌の繁殖管理は、生産者の重要な役割のひとつである。 「衛生管理には気を使いますが、他にこれといった秘訣はありません。現在の発酵室は10年以上使用してきました。そのためか、自然と清麹醤以外の菌が繁殖しにくい環境が形成されているようです」 敷地内にある清麹醤専用の新工場。本格稼動に向け試験中 敷地内にある清麹醤専用の新工場。本格稼動に向け試験中 新工場で導入予定の電気釜 新工場で導入予定の電気釜 ソースへの活用など世界を意識した開発が必要

2005年、飲食店経営の豊富な経験を土台に、オ代表は韓国料理専門の外食フランチャイズグループ、(株)マシンヌン サンサンを設立。2011年7月現在、定食料理店や民俗居酒屋など4ブランドを展開している。

韓国料理に特化したのは、醤類をはじめとする伝統食を後世に伝えていかねば、という使命感からだ。ファストフード、インスタント食品が食生活で大きな幅を占めるようになると、手間も時間もかかる伝統食の存在は徐々に忘れられていく。そんな状況をただ見守るわけにはいかなかった。 「食べ物というのは、食べれば食べるほど味を覚えていくもので、その過程は『練習』と言えます。それは、母親のお腹の中にいたときから始まり、大人になっても味に対する記憶は残り続けるものです。だからこそ、歳をとっても忘れない、韓国固有の味を提供していくことが重要だと考えています。」

経営なら経営、醤作りなら醤作りと、どちらかを専業で行なうケースは多いが、オ代表のように、それらを同時に成し遂げた例は少ない。伝統醤類の研究と普及に向けた絶え間ない努力は世間の注目を集め、2007年には韓国外食産業経営学会が主催する「外食産業経営人賞」にて、見事大賞の栄誉を手にした。

韓国料理の発展には、絶え間ないメニュー開発が欠かせない。オ代表は、その足がかりとして伝統醤類をいかに活用していけるかが重要だと強調する。

「オイスターソースや豆板醤ソースなど、海外には世界的に有名なソースが多数存在します。韓国にもコチュジャン、カンジャン、テンジャン、そして清麹醤と、世界に誇れる醤類が存在するにもかかわらず、アレンジを加えてソースにするなど形を変えてアピールしていく努力が十分に行なわれていません。まだまだ弊社は規模が小さく、私自身も研究不足ですが、今後はそういった伝統醤類のグローバル化にも取り組んでいくつもりです」

自らを無類の清麹醤好きと称し、醤類に関する話題には生き生きとした表情で熱く語るオ代表。その眼差しには、伝統食の担い手として世界というさらに大きな舞台を見据える旺盛なチャレンジ精神があふれていた。

幼い頃から食べ続けてきた韓国の伝統食、そして自家製醤への強いこだわりにより実現した、高い水準での標準化。ソウル、京畿道の各支店で、ぜひ「本物の味」に出会ってみてほしい。 (株)マシンヌン サンサン 韓国料理の継承・発展を目的に、2005年に設立された外食フランチャイズグループ。社名は日本語で「美味しい想像」。セントラルキッチン(集中調理施設)導入による徹底した品質管理、伝統醤類の自家生産を通じ韓国固有の味を広く提供し、2011年7月現在、ソウル・京畿道地方を中心に4ブランド、約40店舗を展開中。

住所:京畿道(キョンギド) 龍仁(ヨンイン)市 処仁区(チョイング) 慕賢面(モヒョンミョン) 陵院里(ヌンウォンリ) 137-11(位置) 電話番号:031-322-4992 ホームページ:www.zzigae.com 土俗韓定食店「チョックモン!」

伝統製法で作られる自家製の味噌、醤油、清麹醤などを利用した各種料理と多彩な惣菜がずらりと並ぶ定食メニューがメイン。

チェーン店一覧を地図で見る モダン民俗居酒屋「ウォルソンネ」

バラエティー豊かなマッコリと一品料理を楽しめる洗練された雰囲気の居酒屋。昼食・夕食時ともに利用できるチゲやクッパなどの食事メニューも人気。

チゲ専門店「チゲ愛感動(チゲエカムドン)」

チョングッチャンの他、スンドゥブチゲ、味噌チゲなどチゲ料理が豊富。カフェのような雰囲気にこだわり、学生から会社員まで若い世代にも人気の店。

サムパッ専門店「ウリ味(ウリミ)」

有機農栽培による野菜と韓国産豚肉を使用したサムパッ(包み野菜)定食が人気。手作り豆腐など、健康を意識したヘルシーメニューが多数。

提供・韓国旅行コネスト

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