世界的にコミッションを受け取ることが禁止される傾向が広がっている。投資アドバイザーの立場にも関わらず、取引頻度によって増大するコミッション収入に依存していることは中立的でなく不適切との指摘を受けての動きだ。アドバイザー選定の要素のひとつ、売り手側と買い手側について説明する。
欧州、米国に広がるコミッション受け取り禁止の波
英国、豪州、オランダなどは金融アドバイザーに金融商品を販売することによるコミッションの受け取りを全面禁止している。そしてヨーロッパ各地にも受け取った手数料を開示する方向が大勢を占めている。また米国でも手数料の受け取りを廃止する動きが発生し、さもなければ手数料開示する方向に動いている。
証券業界では証券会社はセルサイド(Sell Side)、投資顧問など運用会社はバイサイド(Buy Side)と呼ぶ。証券会社は有価証券等の売買を盛り上げて、手数料を増やすことを目的としていると言って良いだろう。給料の源泉がどこにあるのかを考えれば、それは仕方が無い面がある。
本稿では金融商品の販売に関わって手数料を受け取っている人を「売り手側」、それ以外を「買い手側」と表現する。投資家は当然買い手側である。世界では、「アドバイザーが売り手側から手数料をもらっては中立性に欠ける」との考えが主流になりつつある。
日本の投資アドバイザーは投資家の利益を最大化出来ない?
日本の多くの金融機関は投資家に商品を勧め、「委託手数料」を受領している。投資信託を例に挙げれば、運用開始時の「販売手数料」、保有期間中の「信託報酬」を投信販売会社から委託手数料として受け取っているわけだ。
伝統的な日本の投資アドバイザーは、投資家の利益を最大化することよりも、自身の営業成績が上がることに注意が向いても不思議ではない。アドバイザーの収入の源泉が会社であれば、会社の利益を増加させる働きが評価に繋がることに経済合理性がある。会社の利益も営業員等の利益も「高い手数料」を得る方向性だ。アドバイザーが熱意を持つのは、成績を上げてボーナスを増やすことだ。結果としてこんな事柄がおこるのは必然と言えるだろう。
その投資アドバイザーは自分自身の投資では採用しない商品を勧めたとしても、結果として投資商品の高いコストが運用成績を押し下げても気にしない場合も考えられる。将来、顧客が苦情を言う事態が発生しても、その時には自分は担当者ではないかもしれない。数年経てば転勤してしまうのだから。