元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。
そんな宇垣さんが映画『Summer of 85』についての思いを綴ります。
●作品あらすじ:1985年の夏、フランス。セーリングを楽しもうとヨットで一人沖に出た16歳の少年アレックスは、突然の嵐に見舞われ転覆してしまいます。そんな彼に手を差し伸べたのは、ヨットで近くを通りかかった18歳のダヴィド。
少年たちは急速に惹かれ合い、友情を超えやがて恋愛感情で結ばれます。アレックスにとってはこれが初めての恋。互いに深く想い合う中、ダヴィドの提案によって「どちらかが先に死んだら、残された方はその墓の上で踊る」という誓いを立てます。
運命の出会いを果たした2人でしたが、その6週間後に永遠の別れが訪れました…。
フランス映画界の巨匠フランソワ・オゾン監督が、自身が17歳の時に出会い深く影響を受けたエイダン・チェンバーズの小説「Dance on my Grave」(おれの墓で踊れ/徳間書店)を映画化しました。少年同士の瑞々しいひと夏の恋を描いた本作を宇垣さんはどのように見たのでしょうか?
フランソワ・オゾン監督が、原点となった小説を映画化。少年同士のひと夏の儚い恋
16ミリフィルム撮影によるどこかノスタルジックで色鮮やかな映像と、懐かしさを感じさせる往年のヒットソングで彩られたフランスの港町は、見ている人みなを忘れられないひと夏の思い出へと誘う。
一途でシャイなアレックスが出会ったのは、自由奔放で刹那的な魅力に溢れるダヴィド。
ふとしたきっかけから惹かれ合い、親友以上の存在となった二人はその関係にのめりこむようになる、一瞬たりとも離れたくないと思うほどに。
熱に浮かされたように相手を求め、互いが世界の中心かのように仰ぎ合ったその様は、待ち受けている悲劇を知っているからこそハッとするほど甘く瑞々(みずみず)しく、一瞬たりとも目が離せない。二人の対照的な佇(たたず)まいや若さゆえの危うさ、早熟な色気と傲慢さの熱量にくらくらした。
心が壊れるほどのまっすぐな激情とその終わり。追い求めた果てにすれ違い、相手に理想を押し付け、見失い、苦しんだその先に悲劇的な死があり、誓いだけが残った。
“俺の墓で踊れ。”
きっと誰も理解してくれない、アレックスとダヴィド二人の約束は、例えどんなそしりを受けようと、恋をまっとうするために、前に進むために必要なことだった。鮮烈な経験を弔(とむら)うかのような姿を、誰が愚かと笑えようか。
ただ別れるだけなら、やがて大人になることで受け止めることもできただろう。時間をかけてゆっくり咀嚼(そしゃく)し、互いが未熟だったと知ることも。でも、運命がそれを許さなかった。他人にとっては些細(ささい)でも、その人にとっては全てをひっくり返してしまうほどの出会いが、別れがある。あの夏があったから、気づけたことがあった。出会えた自分がいた。そしてダヴィドと過ごした6週間、362万8800秒は彼の血肉となった。彼だけの。
誰しも永遠であれと願い終わった夏がある。「君の物語じゃない」。アレックスはギラギラとした鋭い眼光で観客に告げた。分かってる。これはあなたの物語。でも、共に走り抜けたような鑑賞体験に胸はひりつき苦しい。夏に見られてよかった。
『Summer of 85』 ’20年/フランス/101分 監督・脚本:フランソワ・オゾン 出演:フェリックス・ルフェーヴルほか 配給:フラッグ、クロックワークス ©2020-MANDARIN PRODUCTION-FOZ-France 2 CINÉMA‒PLAYTIME PRODUCTION-SCOPE PICTURES
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<文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 宇垣美里 ’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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