ここ数年で急速に拡がっている、サスティナブルなライフスタイルへの取り組み。マイボトルやコンポストなどを実践する人も増えていますが、実は「お気に入りの服を長く着ること」も、身近にできるアクションのひとつ。
でも、トレンドに左右されずに“自分軸”で服を選ぶことや、長く着るための適切なケアは、いざ実践してみると疑問だらけ、なんてことも多いのではないでしょうか?
そこで今回は、ヴィンテージショップ『DEPT(デプト)』のオーナーeriさんに、セルフで出来る環境にも優しい服のお手入れ方法や、愛着を持って服を着ることの楽しさを教えていただきました。
「本当にいいものって何だろう?」古着が教えてくれること
古着の買い付けでルールにしているのは、意外にも「これはダメ!と決めつけないこと」だそう。世間一般にあるビンテージの付加価値に捕らわれず、より広い視野で“かわいいもの”を探すことが「1枚でも多くの服を救い、長く着てもらうことへと繋がります」と教えてくれました。
eriさんは古着の魅力について「今まで着たことのないテイストの服でも『古着なら!』と、一歩踏み出せること」と話します。
その時代ごとの人々の意識が服に反映されているのも、古着ならでは。特に1980年代以前の服は、長く着ることを前提に丈夫に作られており「安いものって本当にいいんだっけ?」「本当にいいものって何だっけ?」ということを見直す機会を与えてくれるそう。
服にも環境にも配慮したお手入れで、気持ちまでポジティブに
ヴィンテージショップ『DEPT』の創業者であるご両親の影響で、「幼い頃から古着で育ち、服を長く大切に着ることが当たり前の生活を送ってきました」と話すeriさん。愛着のある服を長く着るには、適切なケアが不可欠。夏におすすめの素材や自宅で出来る地球にも服にも優しいお手入れ方法を教えていただきました。
【素材選び】夏はリネンとテンセルをさらりと着こなそう!
麻や綿はイージーケアが可能ですが、特におすすめなのはリネン。ガシガシ洗うことができて、環境への負担も少ない素材です。夏にさらりとした気心地を楽しみたいなら、再生繊維のテンセルもおすすめです。「レーヨンも肌ざわりがいいですが、生産工程で材料のロスが多いことを知り、今はテンセルを選ぶようになりました」とeriさん。
【洗剤選び】洗剤は計り売り。代用品も
『DEPT』では、古着の黄ばみやシミ汚れに「シャボン玉せっけん」の酸素系漂白剤を使用。Tシャツの黄ばみやシミがよく落ちて、さらに漬け置きすることで洗浄力がアップします。
タオルなどのリネン類には「ソープナッツ」がおすすめ。「無患子(ムクロジ)」という植物の種を小さな袋に入れて洗濯機で回すことで、果皮に含まれる“サポニン(天然の界面活性成分)”が汚れを落としてくれます。洗剤ではないのに、しっかりと泡が立つのも驚きです。
その他、洗濯洗剤は「エコストア」を筆頭に、計り売りで購入。リキッドよりもパウダーの方が洗浄力が高いですが、水に溶けにくいため、冬場はお湯に溶かしてから洗濯機に入れると汚れが落ちやすいそう。
【洗濯・乾燥】脱水時間ゼロ!でシワ対策
洗濯時のもう1ポイントとして教えてくれたのが、脱水時間の工夫。リネンなどの素材は、あえて脱水時間をゼロにして、水の重さでシワが伸びるようにしてあげるとアイロン要らずに。
eriさんは、普段から「どれだけ洗濯せずに服を着られるか」を重視しているそう。数時間袖を通しただけの服なら、ユーカリのアロマオイルを入れたスチームを充てて、消臭&殺菌。洗濯機にかける回数が少ない程、服は長持ちして、環境への負担も減らすことができます。
【服の保管】ヒノキブロックで、服を守る
服の保管には、ヒノキのブロックを使用。服と一緒に置いたり、ハンガーにかけておくだけで、殺菌や防虫効果を発揮。爽やかな香りにも癒されます。
それでも着られないものは、解体してエコラップに
服として着られなくなってしまったものを『DEPT』ではエコラップにして販売。ミツロウや天然オイルでご自宅でも簡単に作ることができます。古着には素敵な素材や柄のものが多いため、個性のあるエコラップができるはず。どうしても今後着られそうにないものもアイデア次第で、より長く楽しむことができます。
“背景も含めてデザイン。制約の中で服を選ぶことが楽しい”
ファッションはもちろん、ブレない価値観で“好き”を集めたライフスタイル全体が支持されるeriさん。街を歩いていて「素敵だな」と思うのは、どんな人かを尋ねてみました。
「趣味趣向が滲み出ている人です。私は“ファッション”を外側ではなく内側の話だと思っていて、言い換えれば、自分がどういう人間で、どういう生い立ちで、何を表現したいかが現れたもの。『どこかで見たから』とか『誰かがいいって言ったから』で服を選んでいると、モノをきちんと選ぶ力までなくなってしまいます。
ファッションは多かれ少なかれ“表現手段”。きちんとした軸があれば、自分なりのステップを踏んで、周りに左右されずにモノを選べるようになるはず。
私自身は最近、モノの背景も含めてデザインだと感じていて、自分の生き方と整合性があるか、どういう人やモノにお金をお支払いしたいかで、服を選んでいます。一見すると選択肢が狭まりそうですが、そういう制約のなかで、モノを選ぶことがとても楽しい。
さらに、古着は『モノは長生きする』ことを教えてくれる存在。前のシーズンに買った服からおばあちゃんにもらった服まで、すぐに捨ててしまうのは『ちょっと変だな』と考え直すような。そんなマインドセットのお手伝いを、古着を通して引き続きしていきたいです」。
「数年先までずっと好き」を想像して服を選んだり、大切にしたりすることが、環境への配慮にも繋がる――ちょとしたことですが、こんなマインド変化が、自分らしいおしゃれを楽しむワクワク感と、環境や自然を守りたいというエコな気持ち、その両立を肯定的に叶えてくれます。
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eri
ヴィンテージショップ『DEPT(デプト)』オーナー兼ファッションブランド『mother(マザー)』、ジュエリーブランド『ユートピア(VTOPIA)』、テーブルウェアブランド『TOWA CERAMICS(トワセラミックス)』デザイナーで、環境アクティビストとしても活動中。「1シーズン過ぎたら時代遅れ」とされていたファッションサイクルの通説にもいち早く疑問を持ち、自身のブランド『mother』では、2015年からシーズン制を廃止。現在は、独自のペースでコレクションの発表を続ける。サステナブルなモノづくりに対する試行錯誤のプロセスまで紹介しているInstagram(@e_r_i_e_r_i)は、多くの人々から共感を集める。
■お店情報
名前:DEPT
提供・PARIS mag(シンプルで上質なライフスタイルを提案するWEBマガジン)
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