北のウォール街と呼ばれた小樽は、小樽運河や北一硝子をはじめとするガラス工芸や様々な歴史的建造物などを目当てに道内外、海外から観光客が訪れる街です。その小樽にある田中酒造は、1899(明治32)年創業から120年続く酒蔵で、市内に2つの店舗を構え古くから市民に親しまれてきた老舗です。
田中酒造株式会社
田中酒造は120年続く老舗の酒蔵です。本店は小樽市の「歴史的建造物」に指定されており、1927年(昭和2年)建築の木造2階建ての建物で、店内は昭和初期を感じさせる空間になっています。
本店とは別に、亀甲蔵(きっこうぐら)と称する酒蔵と併設する店舗があります。今回は、この亀甲蔵と併設する店舗をご紹介していきます。小樽には、最盛期に50軒以上の酒屋がありましたが、2019年現在、小樽の地酒「宝川」を造っている田中酒造だけが残っています。
建物の左側が店舗、右側が工場になっています。
歴史ある建物に「亀甲蔵」の趣のある看板が掲げられています。
酒蔵(亀甲蔵)の見学
こちらは店舗の2階から店内全体を撮影した1枚です。工場とは2階でつながっていることから、酒蔵見学へ向かうには2階から向かいましょう。
田中酒造の亀甲蔵(きっこうぐら)は、明治38年築の1~3号棟からなる木骨石造1階一部2階建の旧岡崎倉庫群で、小樽市の「歴史的建造物」に指定されています。
店内から2階に上がってきたところです。この奥が工場の入口になります。田中酒造の酒は全てこの蔵で造られています。
ちなみに田中酒造の特徴は次の3つ。
- ①原材料は全て北海道産
- ②造る酒は全て純米酒
- ③1年を通じて仕込む「四季醸造」
田中酒造では、道産酒造好適米が誕生した1998(平成10)年以降、 ニセコ、音更、古平、厚真などで栽培する「彗星」を使用しています。「しぼりたて生原酒」は、蔵元でしか味わうことが出来ない貴重なものですが、ここでは年中試飲が出来ます。
見学過程
それでは実際に見学していきましょう。この蔵は、ガラス越しに仕込みを見学することが出来て、年間を通して日本酒の仕込みを行う「四季醸造蔵」という特徴があるため、仕込みを年中見られる全国的にも珍しい酒蔵です。
工場の中の見学用廊下です。壁には、酒造りに関連した道具や様々な角度から出題されたクイズが展示されています。
クイズの一例です。答えは、現地に出掛けて行って確認してみてください。難解なクイズもあり、頭の体操にもなります。
こちらは「麹室」です。麹作りは日本酒造りの中で最も重要な工程であり、高温多湿の「麹室」において、麹菌により米のでんぷん質を糖分に分解して、麹を作っています。
麹室もガラス張りで見学することが出来ます。手前には、麹菌に関する資料が展示されています。
ここでは発酵した日本酒を圧搾機で搾った後、貯蔵タンクで熟成させていますが、この搾った際に残ったものが酒粕になります。
作業の様子です。
見学の最後は試飲で締めましょう。試飲コーナーでは10種類以上の「しぼりたて生原酒」や「小樽の地酒」などを試飲することができます。また田中酒造では季節限定酒や数量限定酒も作られ、亀甲蔵では季節ごとに様々なイベントも開催されています。
酒造りの仕込み水
外にでると、亀甲蔵を背にして仕込み水の試飲場所が設置されています。仕込み水は小樽天狗山の伏流水を使用しており、酒造りをしている亀甲蔵の地下75メートルから汲み上げています。
屋根付きの赤い旗に挟まれて建っています。
仕込み水をその場で試飲したり、ペットボトルなどに汲んで持ち帰ることもできます(冬季間は閉鎖)。
※伏流水:河川敷や山麓の下層にある砂礫層(荒い砂を含んだ層)を流れる地下水であり、この層により、水の不純物がろ過され、飲料水や酒の仕込み水として使用されています。