韓国の伝統的な建築方法で建てられた韓屋(ハノッ)。韓国の昔ながらの住居として、気候や韓国文化、時代の変化と共に発達した韓国家屋の魅力をご紹介します。
韓屋の特徴
夏すずしく冬あたたかい
韓屋の最大の特徴は、夏向きの板の間(マル)と冬向きの暖房のためのオンドル(床暖房)がバランスよく組み込まれた構造にあります。
板の間は韓国南部で発達した構造。地面と床との間に空間を持たせることで、地面からのじめじめした湿気を遮断し、夏でも足元はひんやりしています。また板の間の前方には庭が広がり、後方に付いた建具を全開にすることで風通しをよくさせ、夏でも涼しく過ごせます。
一方オンドルは、韓国北部で発達したもの。薪や練炭を焚いた時に出る煙を利用した韓国独特の暖房法です。床下に造ったトンネルを煙が通り、室内が暖まる仕組みとなっていて、冬でも温かく過ごすことができます。
自然の材料を活かす
韓屋には主に木と土、流しすきの技法で作る韓国の伝統工芸である韓紙(ハンジ)など自然の材料が用いられています。製材はせずに、木は曲がっていたら曲がったまま使い、それが韓屋の構造的な美しさを表しています。
壁や屋根、床には土を使用。土は寒暖調節機能や湿度調節、通気性に優れていて、夏でも冬でも快適な空間を作り出します。
また壁や建具には、韓紙が貼られています。耐久性と通気性に優れた韓紙は、冬の隙間風を防ぎ、夏には日差しを適度に遮断してくれる効果があります。
時代と共に変わる韓屋
板の間(マル)とオンドル構造が備わった韓屋が現れたのは、韓国の三国時代(400年初め~600年中頃)から。この頃からオンドル石が使われ始めました。
そして朝鮮時代後期から日本植民地時代にかけ 北村韓屋マウルにあるような都市型韓屋が集中して建てられるように。マルやオンドルなど伝統韓屋の特徴は残したまま、窓ガラスやトタン板など新しい材料を取り入れ造られました。
1945年以降には、現代化の流れと共にアパートなどが主な住居となり、韓屋は過去の住居スタイルとなっていきます。現在では文化遺産として注目され、韓屋が集まる北村韓屋マウルや西村などは観光地として賑わいを見せています。
また近年では、自然素材で建てられた韓屋が住居として再び関心を集めています。環境汚染やPM2.5が日増しに酷くなる現代、環境ホルモンによる疾患やアトピーの患者たちに住みやすい空間を提供するため現代的な生活様式に合わせた韓屋造りの研究が続けられています。
韓屋の構造
儒教社会と大家族文化が作った建築構造
年長者を敬い家族や先祖を大切にする儒教の精神が深く浸透している韓国社会。また親族が緊密な関係を築く大家族文化も特徴的です。そしてこれらは、韓屋の造りにも大きく影響を与えています。
特に上流階級の韓屋では、身分・男女・長幼で空間を区別。上中下で住居スペースを分けました。
まずは貴族階級の両班(ヤンバン)が使う上の空間は、サラン房とアン房。サラン房は男性が使い、アン房は女性が使うことで男女の住居空間を分けました。
次に召使が使う中の空間は、中門間(チュンムンガン)。サラン房とアン房の間に位置しサラン房とアン房をはっきり区別する役割も担っています。
そして使用人が使う下の空間である行廊房(ヘンランバン)。この部屋は門に最も近い場所に位置しています。
身分制度で異なる韓屋の形態
韓屋の造りは、両班と庶民で違いを見せます。最も違いが良くわかるのは屋根です。上流階級では瓦葺の屋根を使い装飾的で芸術性に重きを置いています。一方庶民は、藁葺の屋根を使用。冬は熱を逃がさず夏は太陽熱を遮断、雨が染み込みにくいなど機能性を重視しました。
また韓屋の大門は、身分が高いほど大きい造りとなっています。これは当時、駕籠に乗ったまま大門をくぐれるように身分によって大門の高さが決まっていたからです。
韓屋の構造(室内)
オンドル
韓国に古くから伝わる床暖房。 一昔前までは練炭や灯油を燃料とするオンドルがほとんどでした。今は電気やガスの普及により、熱湯を循環させる温水循環式が主流です。
そんなオンドルは時代が変わっても韓国の人々の生活に根付いています。現在、韓屋だけでなく一般住居、食堂の座敷席やホテルの客室にも取り入れられています。韓国の冬は、マイナス10度以下になることも。
冬場の韓国旅行で体を温めてくれるオンドルの魅力を体験してみてはいかがでしょうか。
板の間
高温多湿な南部地域で発達した板の間。設置場所によって大きく4種類の板の間があります。
最も広く家族が共に過ごすリビングのような役割の板の間(テチョン)、狭い縁側のような板の間(チャンマル)、家全体を囲む縁側のような板の間(トェンマル)、サラン房につながった一段高く造られた板の間(ヌマル)。
いずれも風通しがよく、夏でも涼しく自然を感じることの出来る憩いの空間です。
板の間の体験は韓屋カフェがおすすめ。ただし、現代風にリモデリングしている店舗も少なくないので、文化財にも指定されている城北洞(ソンブットン)の壽硯山房がおすすめです。
窓・建具
自然の色合いを活かした韓屋は、素朴ながら細部に美しさが表現されています。 木製建具で装飾が施されている韓屋の窓。一見同じように見えても、少しずつ異なる模様が魅力です。
ソウル市にある古宮唯一の世界遺産の「昌徳宮(チャンドックン)」。東に位置する「楽善斎(ナッソンジェ)」では、洗練された建物と繊細な美しさの木窓装飾を間近で見ることが出来ます。
家具
韓屋の特徴であるオンドル。この暖房構造は、韓国の人々の暮らしに様々な影響を与えています。家具もオンドルの影響を受けたものの一つ。熱い床暖房により家具が傷まないよう、そして居間に効率的に熱を通すために脚のついた木製家具が多く作られました。
そんな昔ながらの家具がたくさん集まっている骨董街「踏十里古美術通り」。アンティーク好きなら是非行ってみたいショッピングスポットです。
提供・韓国旅行コネスト
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