「モデル」といえば、女性にとって憧れの職業のひとつでしょう。とはいえ、収入は不安定だし、仕事内容はピンキリだし、そもそもどうやってなるのかわからない。 そんな中、とある仕事で出会ったモデルの彩雪さん(あやせ、28)は、前職が「高校教師」、しかも数学の先生だったそう。めずらしい転身に興味を持ち、話を聞いてみました。
教師になると決めたら一直線
スラリとした長身の彩雪さんは、その日、マニッシュなパンツスーツで現れました。富山県出身で、大学はなんと理学部数学科。しかし高校で数学を教えるなんて、聞くだけで頭が痛くなりそうです。
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「中学生の時に、数学にハマったんです。パズルみたいで面白くて。中3で受験勉強をしながら、もっとレベルの高い数学をやりたいなと思って、高校の参考書を買って勝手に勉強するくらい好きでした。 それと、小学生から大学までバスケットボールをやっていました。数学とバスケを両方生かせる仕事はないかな?と考えたとき、教師をパッと思いついたんです。親が教師だったこともあるんですけど」
昔から、負けず嫌いで「ハマったら結果を出さないと」という性格だった彩雪さんは、大学卒業後に、地方都市で目標どおり数学教師になります。 ですが、同時に子供の頃からアートや表現することにも興味があったそう。実は「数学」って、哲学やアートと重なる部分も多いんです。
「私の専門は複素解析学といって、虚数の微分積分を扱うんです。i2 = -1、はじめてこれを知ったとき、なんで数の2乗がマイナスになるんだろうって不思議に思いました。謎が多いから面白い。 あと、これもちょっとオタクっぽい話なんですけど、『マンデルブロ集合』ってYouTubeで検索してみてください。数式からアートの世界が垣間見れてとても美しいです」
えっと、これ以上の数学話はついていけません…。
楽しかった教師を1年で辞めたわけ
そこまで好きな数学の教師になったのに、彩雪さんは1年で辞めてしまいました。やっぱり教師はストレスが多いから?
「いえ、教師の仕事はめっちゃ楽しかったです。生徒も、お姉ちゃんみたいに慕ってくれて。担任を持って、バスケ部の部活もあったので、学校と家の往復で土日もない感じでした」
そんなに楽しかった教師を、1年で辞めたのはなぜでしょう?
「私、学校以外の環境を知らないんですよ。で、『一生これを続けていいのかな?』と思い始めた。生徒から、進路相談とか人生相談を受けるんですけど、人生について私が教えられることが少なかったんです。 生徒たちから進路の話を聞いていると、いろんな職業があるんだな、もっといろんな世界を見てみたい、と思いました。生徒たちはみんな行動し続けている。私も、行動し続けないとダメな気がして…いっぺん外に出てみよう、と決心したんです」
辞める時には、生徒たちがサプライズで色紙やアルバムを用意してくれて、「人生で一番泣きました」と彩雪さん。