結婚後、家族を優先するために勤務日数や時間をセーブして、フルタイムからパートに働き方を変える女性は少なくありません。
妊娠・出産はとっても喜ばしいことですが、パートや派遣で就業している場合、仕事を辞めることになるのでしょうか?
今回はパートタイムで働く女性に向けて、産休・育休の取り方や、注意しておくべきことをご紹介します。
パートでも派遣でも取得可能◎産休・育休の取得条件とは
まずは気になる「パートや派遣社員でも、産休や育休をとることはできるの?」という疑問。
結論から言うと、雇用形態にかかわらず、パート・アルバイトでも条件を満たしていれば産休・育休の取得は可能です!
労働基準法では、雇用形態を問わず、パート・アルバイト・派遣社員など非正規雇用でも産休・育休を取得できると定められています。
では、産休・育休についてもう少し詳しく説明します。
産休・育休の期間や条件って?
「産休・育休」と続けて取得する人が多いのでセットで覚えられがちですが、それぞれ制度は異なるもの。
まずはそれぞれの制度内容、期間、条件をおさらいしておきましょう!
〇産休とは?
産休は、出産する人であればだれでも取得することができる出産のための休業制度です。
正式名称‥産前産後休業
期間‥産前6週間~産後8週間
条件‥出産する人はだれでも取得することができる。
※双子以上の場合は、産前14週間前から取得可能。
※産後休暇については通常出産日の翌日から8週間が経つまで就業できないことになっていますが、医師が認めた場合かつ取得者が希望した場合、産後6週間から出勤が可能になります)
※出産当日は、産休扱いとなります。
〇育休とは?
就業先に申し出ることで、子どもが1歳になるまでの間、育児のために休業することができる制度です。
正式名称‥育児休業
期間‥産後から、子どもが1歳になるまで
条件‥
同じ事業主に過去1年間以上雇用されていること。
子どもが1歳を迎えた後も引き続き雇用されることが見込まれていること、所定労働日数が週2日以下でないこと。
※上記を満たしていても、日払い契約で勤務している場合は対象外です。
※育児休業は男女ともに取得が可能(産休は出産する人が取得できる休業のため女性のみ)。保育園の入園待機などの理由があれば、2歳まで延長することができます。
ちなみに、産前休暇は希望制なので取得しなくても問題ありません。実際、臨月でも出産ギリギリまで働きたい!という人もいますよね。
出産後の6~8週間(産後休業)は、必ず休むように法律で定められています。
少々難しいのが育休。
育休も、取得するかしないかは個人が選べることになっています。休みを短縮して復職するのもOKなので、1歳になる前にお仕事を再開することもできます。
個人の希望にかかわらず原則休むよう規定されているのは産後6~8週間です。
企業側も、産後8週間を経過していない女性を就業させてはいけないことになっています(ただし本人が希望し、医師が許可した場合は6週間を経ていれてば就業可能)
また、取得条件を簡単に言うと「週2日以上の勤務で、1年以上同じ事業主のところで働いており、出産1年後も引き続き雇用される見込み」となります。
ただ、パートや派遣でしばしば問題になるのは「1年後も引き続き雇用される見込み」という部分。有期雇用で契約期間が切れてしまう可能性もありますし、「1年後どうなっているかわかならい」というケースが多いからです。
そんな場合は「1年後も雇用継続の見込み」と仮定して申請できるように、平成29年に規制が緩和されました。
ちなみに、産前産後休暇+育児休業をフルに使うと、1年3ヶ月ほどの休みがもらえることになります。
※なお派遣社員の場合、育休取得に注意が必要です。妊娠・出産を理由とする解雇・雇止めは禁止されていますが、契約期間が産休取得と同時に切れてしまう場合、解雇ではないので契約終了は禁止されてはいません。派遣元会社が自社の直接雇用に切り替えてくれるケースがあるので、派遣元企業に確認するようにしましょう。
産休・育休の手続きをしよう!
妊娠がわかってからは、やることがたくさん!
まずは妊娠が判明してから育休を取得するまでの手続きの流れを見てみましょう。
•妊娠の報告
まず、妊娠したことが確定したら、早めに職場に伝えましょう。
このとき、会社から聞かれるのはあなたの働き方の希望です。出産後も仕事を続けたいかどうか、育休を取得したいかどうか、希望を伝えましょう。出産予定日も伝えておきます。
また、妊娠判明~出産前には産婦人科などに通院し、妊婦健康診査を受けます。
病院によって検査内容、日数、金額も異なるのですが、厚生労働省では標準検査として14回ぶんのスケジュールと内容を提示しています。
つまり、平均的に14回は通院しなくてはいけない、ということですね。
妊娠中には様々な変化があなたの体に起こります。血圧や血糖値などの注意を受けることもあるかもしれませんし、点滴をしてもらったり入院をするよう勧められることもあります。
そのため、正社員などフルタイムで働く人の場合は職場の理解が欠かせませんし、パート・アルバイトなどで就業日数を抑えていてもある程度遅刻早退や欠勤の相談が発生します。
妊娠したことを職場に伝えるのは、できるだけ早めがおすすめ。
安定期と呼ばれるのはだいたい妊娠5か月目ですが、つわりで体調が変わってから安定するまでの3か月間に急な欠勤等で職場に迷惑をかける可能性もあります。
希望すれば、時間外勤務、休日出勤、深夜残業をしないように配慮してもらうことができますし、その時担当している仕事の継続が難しい場合、他の軽易な業務に転換したいという希望を出すこともできます。
上司に早めに相談してみましょう。
派遣社員の場合は、派遣元に申し出ることになります。事前手続きをするところがほとんどなので、できるだけ早めに伝えるようにしましょう。
•産休の申請
産休の申請は、会社によって手続きが違うので、職場のフォーマットに従っておこないましょう。
産前は医師の診断書、産後は出産証明書が必要になる場合もあります。どんな書類が必要になるか、事前に職場に確認しておくと安心です。
活用したい制度として「出産育児一時金」「出産手当金」もチェックしておきましょう!
出産育児一時金は、出産にかかる費用の負担を軽減するために設けられた制度です。
1人の子どもにつき42万円(産科医療補償制度の対象外となる出産の場合は40.4万円)出産育児一時金が支給されます。
加入している保険が国民健康保険でも、社会保険でも、夫の会社の保険の扶養として入っている場合でも、申請・受給することができます。
また、出産手当金は、会社で加入している健康保険組合(協会けんぽ、共済組合など)から支給があります。
出産手当金は、出産によって収入が減ってしまう女性に対する休業補償です。休業補償が目的の制度なので、期間内に収入がないこと(もしくは出産手当金より収入が低いこと)が条件となります。
この手当金は、出産前6週間~出産後8週間までの間、欠勤1日について賃金の3分の2の相当額が支給されます。
支給期間中は健康保険・厚生年金保険といった社会保険料が免除されます。免除期間中も保障をそのまま受けることができますし、保険加入の実績も継続されます。
この制度は自身が健康保険組合に被保険者として加入していないといけません。
パート・アルバイトでも、社会保険料を払って被保険者として加入していれば、対象となります(勤務継続期間などは決められていません。)
「出産手当金支給申請書」に必要事項を記入して、会社または健康保険組合へ申請が必要です。
申請してから2週間~2か月程度で指定した口座に振り込まれることが多いようです。
※出産手当金の支給条件
・健康保険に加入していること
・妊娠出産のために休業していること
・妊娠4ヶ月(85日)以上で出産すること(日数を超えている場合、死産・流産・人工中絶でも対象になります)
・事業主から給料が支払われない、または、支払われる給料が少ないこと
参考:全国健康保険協会(協会けんぽ)出産手当金 / 出産育児一時金
•育休の申請
育休の申請は、育休に入る1か月前までに申請することになっています。法律で決まっているので注意!
そのため、産前産後休業に続いて育児休業を取得するなら、産休に入る前に申請しておきましょう。
男性でも女性でも、下記の条件を満たせば子どもが1歳になる誕生日の前日まで取得ができます。
条件はこちら。
・同じ事業主に過去1年間以上雇用されていること
・子どもが1歳を迎えた後も引き続き雇用されることが見込まれていること
・所定労働日数が週2日以下でないこと
また、1歳になっても保育園に入れず預け先がない、などの理由がある場合は1年6か月まで延長できます。
2017年の法改正で、1歳6か月を過ぎても育休が必要な場合で、雇用の継続のために特に必要と認められる場合は再延長として2歳まで延長できるようになりました。
雇用継続のために特に必要と認められる場合は、下記の2点です。
・保育所など(幼稚園、保育園、こども園、家庭的保育事業を含め)入所を希望しているが、入所のめどが立たない** ・配偶者が病気・離婚のため子育てができなくなった
また、育休の際に手続きをしておきたい制度に「育児休業給付」があります。
雇用保険加入者に支払われるもので、原則、休業開始時の給料の50%相当額にあたる給付金を、子どもが1歳になるまでの間受けとることができます。
パート・アルバイトでも雇用保険に加入していれば受け取ることができるので、忘れずに手続きをしましょう!
「育児休業給付受給資格確認票」「育児休業給付金支給申請書」を記入し、会社に提出します。
ちなみに、女性の場合は産休後(産後8週間後)から受け取れ、男性は出生日もしくは出産予定日から受け取ることができます。
もし1歳以降も待機児童になり保育園に入園できないなどの理由があれば、2歳まで休業が延長でき、給付金の給付期間も2年までになります。もし延長する場合、育児休業終了予定日の2週間前までに手続きが必要なので気をつけてくださいね。
パートの産休・育休取得のメリット・デメリット
条件を満たしていれば、パートでも育休・産休を取得できることがわかりました!
しかし、現実では産休・育休後に復帰する社員が7割近くいるのに対し、パートなど非正規雇用の復帰率は半数以下ともいわれています。
取得実績がまだまだ低く、出産を機に離職してしまう人が多いのがパート主婦の実情です。
では、パートの産休・育休取得にはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
メリット
・戻る場所があるというのは精神的にとても安心。
・社会保険に加入していたため、社会保険料免除、出産一時金、出産手当金などがありとても助かった。
・保育園の入所の申し込みは、パートだとしても、働いていないよりは断然有利になる。
デメリット
・当たり前のことですが、収入が激減してつらい。
・職場から定期的に状況伺いの連絡があるのが面倒。
・本当に復職させてくれるのか疑心暗鬼になってしまい、焦る。
パートでも社会保険に入っている場合は助成金などがあるので、育休を取るのがオススメです。
それ以外の場合は、負担を考慮して決めたほうがよさそうです。
まとめ
妊娠したら即退職、という考え方はかつての話。パートでも、まずは職場に相談してみましょう。
パートで働く人の中には「家庭の事はもちろん大切にしたいけど、働ける時間はキャリアアップに繋がるような仕事をしたい」「ライフイベントごとに職場を変えずに、一つの職場で長い期間じっくりと仕事を極めたい」という人もいるでしょう。
産休・育休を気持ちよく取得して、職場に戻ってくるためには「また戻ってきてほしい、一緒に働きたい」と思ってもらえるように日頃の関係性を築き、仕事ぶりを評価してもらえるように心がけてみましょう。
保育園に入れなかったら育休が増えるという育休延長制度もありますし、3年育休という独自の制度がある企業や、妊娠・出産で一度離職してもまた戻ってこられるような制度を取り入れている企業も増えてきました。
活用できる制度はできるだけ利用して、安心して育児ライフをおくりましょう!
提供・しゅふJOBナビ
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