ところ変われば味変わる…韓国の醤油

カンジャン(醤油)は、韓国でも古くから醸造され、煮物料理や各種ヤンニョム(合わせ調味料)のベースなどとして使われてきました。

コチュジャン(唐辛子味噌)やテンジャン(韓国味噌)と同じく、韓国の伝統調味料のひとつです。 味を調えたり旨味を引き出したりと、様々な用途で使われます。 カンジャンケジャン(ワタリガニの醤油漬け)やカルビチム(カルビの蒸し煮)といった人気韓国料理のメイン調味料にもなっています。

見た目は日本の醤油とウリふたつですが、実際に口にしてみると、味・香りが微妙に異なります。どんな違いがあるのでしょうか。

韓国醤油の製造方法は「在来式」と「改良式」の2つ

伝統甕「オンギ」の中で熟成する在来式醤油

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

韓国で醤作りがスタートした時期は明確には分かっていませんが、文献上、カンジャンに関する記述が初めて登場するのは683年の「三国史記」。高麗時代に書かれたこの歴史書には、ペベッという王妃を迎える婚礼の儀式の品目として、カンジャンとテンジャンの記録があります。

伝統的な製法で作られた醤油は、「在来式(チェレシッ)醤油」と言われます。冬場に仕込んだ豆麹を自然発酵させた後、それらを塩水に漬けて熟成。数ヵ月後に圧搾して得られた液体(このとき残った固体がテンジャン)を日光の下でさらに熟成させて完成します。

韓国の一般家庭でも作られてきたため、「チッカンジャン(直訳すると家醤油、チッは家の意味)」とも呼ばれてきました。

様々なメーカーが揃う改良醤油

日本植民地時代に入り、軍用食料の大量生産が必要になると、季節を問わず短期間で製造可能な方法が新たに日本からもたらされました。丸大豆や脱脂加工大豆(油脂分を取り除いた大豆)などに種麹を接種した後、食塩水を混ぜて熟成させる「醸造(ヤンジョ)醤油」や、たんぱく質を塩酸分解して作ったアミノ酸に食塩と添加物を加えて作る「アミノ酸醤油(酸分解醤油とも言う)」などが代表的で、これらは「改良(ケリャン)醤油」と言われます。

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

改良醤油は製法が日本から伝わったということで「倭醤油(ウェカンジャン)/日本醤油(イルボンカンジャン)」とも呼ばれる一方、伝統製法で作る在来式醤油は「朝鮮醤油(チョソンカンジャン)」とも言われています。

韓国醤油、カンジャンの種類

大型スーパーの調味料売り場には、たくさんの醤油がずらりと並ぶ醤油コーナーがあります。製造方法や原料はもちろんのこと、用途によっても名称や種類は様々。その中でも家庭でよく使用されるのが汁醤油(クッカンジャン)、陳醤油(チンカンジャン)、醸造醤油(ヤンジョカンジャン)の3種類です。

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

汁醤油(クッカンジャン)

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

100%大豆のみを使用した伝統製法による醤油で、朝鮮醤油(チョソンカンジャン)、家醤油(チッカンジャン)とも言われる。塩分含有率が高く、色が薄めなのが特徴で、塩の代わりに使用することも多い。 汁物や和え物など、素材本来の色を残しつつ味を調えたいときに最適。日本の薄口醤油の感覚で使える。

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)
家庭料理の定番、わかめスープの仕上げにも
韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

白い餅が入るトックッなど、色をつけたくない料理に

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

ナムルを作るときは塩の代わりに 使ってもOK

陳醤油(チンカンジャン)

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

改良式の醤油で、倭醤油(ウェカンジャン)とも呼ばれる。元々は長期間熟成した在来式醤油のことを陳醤油と呼ぶが、現在はその代用として使われており、各メーカーの商品名にもなっている。

汁醤油に比べて塩分が少なめで甘味があり、色が濃い。熱を加えても味の変化が少ないため、加熱する料理に向いている。

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

濃口醤油のような味で 料理への活用度が高い

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

カンジャンケジャンは 煮立たせて冷ました醤油ダレを使用

醸造醤油(ヤンジョカンジャン)

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

微生物による自然発酵、長期熟成により完成する醸造醤油は、深い味わいと豊かな香りが特徴。色合いは陳醤油と大きな違いがない。

そのままの風味を味わうのが一番で、熱を加えない料理やソースとして利用するのに向いている。刺身を食べる際の醤油としてもおすすめ。

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

和え物料理の代表、 チャプチェにも欠かせない

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

日本の刺身醤油に比べると 少し甘め

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

薬味野菜や唐辛子粉を入れると ピリ辛ダレが完成

その他の市販されている韓国醤油

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

有機農醤油 (ユギノンカンジャン) 有機大豆を使用して作られる醤油。割高だが、健康や食の安全に関心の高い人に人気。

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

低塩醤油 (チョヨムカンジャン) 塩分含有率が低いため、塩分を気にする人や、小さな子ども、お年寄りの食事に適している。

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

煮物用醤油 (チョリムカンジャン) 野菜や昆布のエキスが入った調味醤油。甘味が強いので料理の際に砂糖を大量に入れなくて済む。

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

海鮮醤油ソース (ヘムルカンジャンソース) 煮干で作った魚醤油(オカンジャン)に蟹や海老のエキスを配合。海鮮料理はもちろん、炒め物や汁物の味付けにも。

カンジャンを使った韓国料理と食べられるお店

煮物から炒め物、汁物、ソースまで、幅広い料理に使われるカンジャン。韓国グルメというと唐辛子を使用したスパイシーなイメージがありますが、カンジャンを主な調味料として用いる料理は、辛くないものもいろいろあります。素材の味を際立たせたり、マイルドな味をプラスするカンジャン。その魅力をぜひ味わってみませんか?

カンジャンケジャン

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

新鮮な蟹を醤油ダレに漬け込んだ珍味、カンジャンケジャン。醤油のキリっとした味が蟹の甘味を引き立てる。醤油ダレを絡ませて食べるご飯も絶品!

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カルビチム

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

骨付の牛カルビを醤油ベースの汁でじっくり煮込んだカルビチム。しっかり味が染み込んだ柔らかい肉はご飯のお供に最適。

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プルコギ

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

プルコギは醤油ダレに漬けた牛肉を野菜などと一緒に炒め煮した料理。甘辛い味付けで子どもから大人まで人気の料理。

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チムタク

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

チムタクはぶつ切りの鶏肉、各種野菜、乾燥唐辛子、韓国風春雨を醤油ダレで煮込んだ安東(アンドン)の名物料理。

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韓定食

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

上品な醤油味のおかずを一度に楽しめるのが韓定食。カルビチムやチャプチェは、韓定食メニューの定番です。

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パンチャン(おかず)類

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

小皿いっぱいのおかずはいわゆる家庭式韓定食で、一般の食堂で味わえます。煮物や炒め物、漬物など、家庭で食べる常備菜の調味料としても醤油は基本。素材との組み合わせ、調理法など、日本との違いを比べてみるのも面白いかも。

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カンジャンニョ(醤油女)とは?

韓国の調味料 カンジャン(醤油)
(画像=『韓国旅行コネスト』より引用)

ブランド志向の見栄っ張りな独身女性「テンジャンニョ」という流行語に対して生まれたのが、「カンジャンニョ」。直訳すると醤油女!

「간장(カンジャン、醤油)」の塩辛い(짜다、チャダ)とお金に厳しい(짜다、チャダ)をかけた言葉で、金銭感覚に厳しく、割引クーポン・イベントなどをうまく活用する節約上手な女性のこと。

悪口で言われる「テンジャンニョ」に比べて、よい意味で使われることが多いようです。

提供・韓国旅行コネスト

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