季節の色や柄の和服を着こなす素敵な女性に出会うと、「一体どんな感性や教養の持ち主なのだろう」「自分もいつかこういう風に素敵に年を重ねたいな」と心踊るという中里彩さん。目標は、いつか海外で正装として和服を着ることーー。今回は和装のススメについて綴っていただきました。

■人生の節目を和服で迎える、美しい日本の伝統文化

お宮参りや七五三、成人式、結婚式など、日本人なら誰もが経験する大切なライフイベントでは、今でも通過儀礼として和服を着用して人生の節目を祝う文化があります。

私も3歳の七五三のときには、仕立てた赤いお着物をいっちょまえに着せられていました。まだ草履がうまく履けなくて、撮影のギリギリまで長靴を履いていたほほえましい写真がアルバムに残っています。

私の祖母はよそ行きの格好をするときは、よく和服を着ていました。凛として、品格を感じさせる佇まいは、幼心にも私が日本人として和服にへの憧れを持つきっかけになりました。

祖母もまた、日頃から和服を着ていた明治生まれの祖母(私の曽祖母)の姿をみて育ったので、和服が当たり前の環境にあったのです。私自身もお着物が好きで、パーティーや芸術鑑賞のときには和装することもしばしば。今では年に1度、お着物で祖母と歌舞伎を鑑賞しに行くのが楽しみになっています。

「着物は3代で着られる」というほどに、着物は親から子へ代々受け継がれていくものでした。親子はさほど背丈が変わらないので、子どもに合わせて裄丈や着丈を調整すれば着ることができたのですね。

現代でも、お母さんが成人式で着た振袖を娘が着たというお話を耳にすることがあります。家族や伝統という概念が薄れている現代において、これはいくらお金を積んでも得られない価値のあることだと私は思います。

■感性豊かな平安の人々の色彩表現「襲の色目」

日本人は大昔から色彩感覚に優れた民族だといわれています。平安時代には、「十二単」のように、衣服を重ね合わることで日本の美しい四季の風景や草花の色合いを表現していました。これを「襲(かさね)の色目」といいます。

「若草」「杜若(かきつばた)」「菖蒲」「花薄(はなすすき)」「枯野」「氷襲(こおりがさね)」など、薄い色から濃い色までおよそ200ともいわれる色目の組み合わせは、世界にも例を見ない日本独特のカラーコーディネーションです。

当時、色目にはさまざまなルールやマナーがあり、ちょっと違ったカラーコーディネートをすると「センスがない」を評価されてしまったのだそう。平安の女性たちも、おしゃれな装いをするには感性と知識が必要だったのですね。

『新古今和歌集』などを読んでいると、自然の移り変わりの情緒を自分と重ね合わせながら、ストレートに、叙情的に歌にして詠みあげた日本人の繊細な感性はすばらしいなと感心してしまいます。それほどに、五感を文章や色で表現することに長けていたのでしょう。

現代でも、季節の色や柄の和服を着こなす素敵な女性に出会うと、「一体どんな感性や教養の持ち主なのだろう」「自分もいつかこういう風に素敵に年を重ねたいな」と心が踊ります。スタイルとして、日常に和装がある女性に強く憧れるのです。

私の目標は、いつか海外で正装として和服を着ること。そのためにも、そろそろ着付け教室に通おうかな、なんて思い始めています。まだまだ先は長いですね……。


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