コロナ禍の影響により、テレワークで仕事をする人が増えています。テレワークといっても多くの人が自宅で仕事をしているようです。
会社や店舗に出勤していれば、通勤中や仕事中のケガは労災に認定されますが、テレワーク中の事故やケガは労災に認定されるのでしょうか?
今回は、テレワーク中の事故やケガで労災が認定されるのか?についてご紹介していきます。
■テレワーク中の事故やケガは労災に認定される?
まずは、労災保険について確認していきましょう!
•労災保険(労働者災害補償保険)とは?
勤務先において、労働災害(事故や怪我など)があった場合、雇用主は従業員に対して、労働基準法に基づいて補償責任を負うことがあります。
補償内容は、治療費であったり、怪我や病気で就業ができない期間の休業補償など、多岐に渡ります。
会社が労災保険に加入することにより、従業員が確実に補償を受けられるようにすることを目的に、原則として必ず加入することが定められています。
•労災の2つの種類
「労働災害」には、業務災害、通勤災害の2つの種類があります。
業務災害とは、業務が原因で従業員が怪我をしたり、病気にかかったり、場合によっては障害を抱えたり死亡に至った場合に該当します。
通勤災害とは、従業員が就業場所へ向かう移動中にケガをしたり、病気にかかったり、場合によっては障害を抱えたり死亡に至った場合、該当します。
ただし、通勤=合理的な経路・方法であることが求められます。たとえば、会社に向かう途中に立ち寄った場所で怪我をしたり、仕事終わりに同僚と飲みに行って帰りに足を滑らせて怪我をした、という場合は通勤災害にあたらないケースがほとんどです。
また、在宅勤務をする場合は、通勤をすることがないので通勤災害は該当しません。
テレワークでは「業務災害にあたるか?」がポイントになりそうですね。
■テレワークでも法律は守られる!
テレワークをしていても、労働基準法など職場に勤めているときと同じように法律が適用されます。たとえば、
労働基準法… 労働時間、年次有給休暇、割増賃金(時間外労働、深夜手当など)、変形労働時間制やフレックスタイム制の活用
労働契約法 …労働契約の内容変更など
最低賃金法 …最低賃金など
労働安全衛生法 …雇入時健康診断・定期健康診断など
労働者災害補償保険法 …労災保険など
つまり、テレワークテレワーク中であっても労災保険は受けられることになります。
ただし、先述したとおり事故や怪我を「業務時間内に」かつ「業務と事故やケガとの間に因果関係が認められれば」、労災保険の適用の対象になります。
ポイントは
・業務時間内かどうか
・業務と、怪我や病気等に因果関係があるか
の2点です。
テレワーク中は会社の直接の監視下にないため、第三者等の目撃や証言など客観的な情報が不足します。そのため、職場にいるときよりも労災保険が適用されるためのハードルは高くなりがちです。
•厚生労働省:テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン
厚生労働省が発行している「テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン」によると、テレワークについて労災保険が適用される旨が以下のように記載されています。
テレワークを行う労働者については、事業場における勤務と同様、労働基準法に基づき、使用者が労働災害に対する補償責任を負うことから、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となります。
また、テレワーク総合ポータルサイトでは
Q.テレワークを導入する場合、労災保険は適用できますか。
テレワークをする人にも、通常の従業員と同様に労災保険法が適用されます。業務上災害と認定されるためには、業務遂行性と業務起因性の2つの要件を満たさなければなりません。
業務遂行性とは「労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態」を言います。災害発生時に仕事をしていたかどうかが問われます。また、業務起因性は「業務または業務行為を含めて、労働者が労働契約に基づいて事業主の支配下にある状態に伴って危険が現実化したものと経験則上認められること」をいいます。
テレワーク勤務においても、業務遂行性と業務起因性を鑑み、負傷や疾病が発生した具体的状況によって、個別に労働災害の適否が判断されます。たとえ就業時間内であっても、自宅内のベランダで洗濯物を取り込む行為や、個人宛の郵便物を受け取る行為で、転んで怪我をした場合等、私的行為が原因であるものは、業務上の災害とはなりません。
このように説明されています。
■たとえばどんな時に「業務災害」とされる?
テレワーク中の業務災害の例を見てみましょう!
自宅で、仕事に使った書類を破棄するように言われたのでシュレッダーにかけていたら、指を切ってしまった!
→業務から生じた怪我なので、対象になるでしょう。
仕事をしている間にトイレに行きたくなったので、仕事を中断してトイレに行った。うっかり段差でつまづいて指を骨折してしまった……
→仕事中ではないから労災にならないのでは…?と思われがちですが、トイレなどの小休憩中や、オフィス内の移動、立ったり座ったりは業務と関連していると考えられます。就業時間中だった場合、労災適用の対象になる可能性があります。
休憩時間になったので昼食を準備していたら、熱湯を手にかけてしまいやけどしてしまった。
→これはプライベートな行為にあたるので、労災対象になりません。
仕事中に子どもが声をかけたので様子を見に行こうとしたら、つまずいて捻挫してしまった。
→この場合も仕事を離れて家事・育児をしていたとみなされ、適用対象にならない可能性が高くなります。
■テレワーク中はオン・オフをはっきりと!
テレワーク中は上司や同僚の目がない分、勤務時間があやふやになったり、休憩を取らずに働き続けてしまうこともあります。
職場にいれば「休憩とってね!」と声がけもできますが、常にお互い気に掛けることができない環境では、働く人の自主性に任せるほかありません。
先述のとおり、プライベートな時間に起きたことは業務災害に認められませんが、実際には区別が難しいものになっています。
勤務開始時間、休憩時間、勤務終了時間など、雇用元と報告・連絡を行うなど、オン・オフの時間をできるだけハッキリとわけておくことが必要です。
また、テレワーク中の業務管理として企業では「ログ」が重視されてきています。
たとえば、メールの送受信記録や、管理システムのログイン・ログアウト時間、日報の提出時間、会社貸与のパソコンのログイン・ログオフ時間の記録などをそれぞれ照らし合わせ、長時間労働の防止や業務時間把握が進められています。
また、会社に「家で仕事をします」と伝えていたにもかかわらず、実家や子どもの家で仕事をしているときに災害が発生した場合、会社の管理下になかったと判断されることもあります。
■もしかしてそれ、「テレワークうつ」かも?
テレワークが推奨され、自宅で仕事ができることで通勤がなくなり楽になったと感じる人もいれば、テレワークになってコミュニケーションロスが増え、むしろストレスが増えたという人もいます。そして、なんとなく不調を感じているという人も少なくありません。
「在宅勤務になってから、メリハリがなく気が滅入る」
「きちんと評価してもらえているか不安で、つい残業が増えたり、周りの人の目が気になってしまう…」
「会社からテレワークをしろと指示されて自宅で働いているけど、家族に気を使う。職場のビジネスライクなコミュニケーションが恋しい…」
という声も聞こえてきます。
うつ病などの精神障害が労災認定される場合、
・認定基準の対象になる精神障害を発病していること ・認定基準対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務要因で強い心理的負荷が認められていること ・認定基準対象となる精神障害の発病前おおむね6ヶ月の間に、業務要因で強い心理的負荷が認められていること
・業務以外の心理的負荷や、個体側要因による発病ではないと認められること
が要件となっています。
「業務による強い心理的負荷」について、例えば時間外労働(残業)が極めて長時間であったり、業務に関して重大な事故を起こしてしまった、達成できないほど重いノルマが課された、等も該当するとされています。
また、「勤務環境に変化があった」場合も心理的負荷のひとつとして挙げられます。
テレワークになった=強い心理的負荷だった、と言うことは通常言えませんが、テレワークになったことで長時間の時間外残業が増えた、等の業務にかかわる事実が認められる場合、労災の対象となる可能性もあります。
テレワークになってから、なんとなくずっと調子が悪い、気分がしずみがちなまま……という状況の時、どんな対策を撮ったらよいのでしょうか。
■テレワークができる=転職をしないほうがいい?
新型コロナウイルス感染拡大により、通勤型の勤務から在宅勤務を含めたテレワークの導入が急速に進みました。
東京都が調査した「テレワーク導入率調査」(2021年1月発表)によると、東京都内の企業のうち、テレワーク導入率は57.1%。テレワークを実施した社員は平均約5割と、東京都内の会社に勤める人の半数以上がテレワークを経験していることになります。
ただし、業務上テレワークができない、という人も多くいます。接客・販売業や、飲食業などでは特に難しいでしょう。そのため、
「テレワークで仕事ができているんだから、この環境のままいたほうがいいのかもしれない…」
「テレワークができる仕事ってあるの?転職してすぐは出勤が強制されることもあるのでは?」
という声も聞こえてきます。
手前味噌ですが、主婦のお仕事探しサイト「しゅふJOB」では、一部在宅ができるお仕事や、完全在宅で働ける(テレワークができる)企業だけを絞ってお仕事を検索することができます。
■まとめ
今回は、テレワーク中の事故やケガで労災が認定されるのか?についてご紹介しました。
テレワークだからといって、会社や店舗に勤めているときと変更なく、法律に守られて仕事をすることができます。
そのため、仕事が原因である!とハッキリしている場合、在宅勤務中だったとしても怪我や病気を労災として認めてもらい、補償をしてもらうことができます。
ただし、職場の労災事故は人の目もありますが、テレワーク中は自宅の中での事故や怪我になるため、労災対象となるかのハードルは高くなっています。
「仕事中かどうか」ができるだけハッキリとわかるよう、勤務時間中はしっかり仕事を行ったり、出勤・退勤のログをしっかり残したり、意識的に仕事のオン・オフをつけることも必要でしょう。
提供・しゅふJOBナビ
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