韓国の秋を代表する名節
秋夕(チュソク)とは、旧正月(ソルラル)と並ぶ代表的な韓国の名節で「ハンガウィ」とも呼ばれます。毎年秋夕当日(旧暦8月15日)とその前後1日ずつが祝日となり、親戚一同が故郷に集まって先祖の墓参りをしたり、秋の収穫に感謝したりします。
こうした秋夕の慣わしは、古く新羅時代(紀元356年~935年)に始まったと見られています。1年で月が最も明るく輝く旧暦8月15日には昔から盛大なお祭りが行なわれていましたが、徐々に名節としての風習が形成され、今に伝わるようになりました。
2021年の秋夕(チュソク)はいつ?
「旧暦の8月15日」を秋夕(チュソク)としているため、新暦である現代ではこれを置き換えて考えるため毎年秋夕(チュソク)の日にちは変わります。 2021年は9月21日(水)が秋夕の当日となります。 前後1日ずつが休みになるため、2021年の秋夕連休は土日まで入れると9月18日から9月22日までの5連休になります。
秋夕前の様子をみてみよう
1カ月前―墓の草抜き・清掃
墓参りは秋夕当日に行なわれる風習のひとつ。土をこんもりと盛った墓が一般的な韓国では、当日に備えて夏の間に伸びた草を刈り、墓の周囲を清掃しておく習慣があります。これを「伐草(ボルチョ)」といい、秋夕の約1カ月前から時間のあるときに済ませておきます。
たとえ、どんなに遠くにお墓があっても伐草をするのは当たり前と考えられていて、「伐草しなければ子孫の証が失われる」とまで言われるほど。秋夕の2~3週間前の週末になると、高速道路は伐草のために里帰りする人々の車で渋滞することもあります。
2~3週間前―親戚や取引先への贈り物を購入
日本ではお盆の時期に親しい知人や日頃お世話になっている人たちにお中元を贈る風習がありますが、韓国の秋夕でも同じような光景が見られます。
秋夕が近づいてくると百貨店や大型マートには特設売場が登場し、贈り物商戦が繰り広げられます。売れ筋は海苔、食用油、韓国の伝統的なお菓子・韓菓(ハングァ)などの食品類や、シャンプー、洗剤、歯磨き粉といった生活関連の実用品。
「今年は3人で帰省だね」
一方、庶民の台所である市場も大盛況。親戚一同が集うため連休中の食べ物をたんまり買って備えます。
先祖供養の祭祀「茶礼(チャレ)」で使用する食材の調達も欠かせません。茶礼床(チャレサン)と言う祭祀のお膳には栗やなつめ、野菜のナムルに肉、魚と、たくさんのお供え物がのるため、家庭の女性陣は買出し後も休む暇なく働き続けます。
韓国には名節に体を酷使してその反動で無気力になったり、体の節々が痛んだりする「名節後遺症」という言葉もあるほど。主婦たちにとっては怒涛の日々の始まりです。
秋夕にまつわる韓国古来の風習
~民俗遊び~
古来は先祖の墓参りが終わったら、近所の人たちと様々な民俗遊びをして過ごしたと言います。
その代表的なものが、韓国南西部の全羅道(チョルラド)地方に伝わる「カンガンスルレ」。女性や子どもたちの遊びとして、皆が手をつないで円になり、左右に動きながら一緒に歌を歌います。
~パンボギ~
会いたい人同士が日時と場所を決めて会う「パンボギ」という風習もありました。昔は嫁入りした女性が実家の家族に簡単に会うことができなかったため、秋夕後に実家との中間地点で会い半日ほど楽しい時間を過ごしていたと言います。
「半分だけ会う」という意味の「パンボギ」は、積もり積もった話の半分ほどしかできずに別れる、ということから来ています。
家族をつなぐ伝統的な名節
現代に入り家族同士の会話もだんだんと少なくなって来ている韓国。それでも秋夕になると、どんなに離れていても家族親戚がひとつの場所に集まってきます。
家族が仲睦まじく暮らし、先祖に礼を尽くすことを大切とする基本姿勢は、今も昔も変わらずに韓国の人々の心に根付いているようです。
秋夕は人と人との繋がりをかたく維持させてくれる伝統的な名節として今後も受け継がれていくことでしょう。