初めて訪れるのに懐かしい。そんな日本の原風景が今も残る場所・奥会津に、夏だけ出現する霧の渓谷「霧幻峡」。緩やかに湾曲しながら流れる只見川は、雪解け水をたたえ、冷たく美しい。温度差によって発生する霧が、山も川も覆い、渓谷全てを白い世界へと誘います。限界集落からの脱却をめざして立ち上げられた霧幻峡プロジェクトは、NHKでも放映され、注目が集まっています!また、新潟・福島豪雨で大規模な被害を受けた後、復旧へ向け頑張っているJR只見線にも目を向けてみましょう。
霧幻峡はどこにあるの?
霧幻峡と呼ばれる三更(みふけ)集落周辺は、福島県奥会津に位置する山あいの小さな廃村集落。只見川沿いに集落が点在し、冬は積雪が2メートルにもなる豪雪地域です。
川沿いには、JR只見線が走り、渓谷と鉄道が織り成す四季折々の風景を楽しむことができる場所。昔から川霧が発生することで知られ、流域では幻想的な風景が見られるのです。この流域の三島町と金山町にまたがる只見川の峡谷が、今回ご紹介する霧幻峡です。
霧幻峡の渡しと霧幻峡プロジェクト
歴史は300年も前にさかのぼります。三更集落では、対岸の早戸地区に渡る唯一の交通手段として和船と呼ばれる渡し船が利用されていました。和船はそれぞれの家で所有しており、子供でも船の操縦をしていたそうです。
しかし昭和39年、裏山の土砂が崩壊したことにより三更集落は廃村となり、村民は他の集落へ集団移住することに。移住に伴い、早戸地区に渡るために利用されていた和船も、以降は使われなくなってしまいました。
それから50年の時を経て、三更の人々が立ち上がりました。星 賢孝(ほしけんこう)さんを代表とした霧幻峡プロジェクトが発足し、限界集落からの脱却をめざして様々な取り組みを行い、その核となる2艘の和船が2010年4月に建造されました。只見川渓谷に50年ぶりに渡しが復活したのです。
霧幻峡の魅力
霧幻峡に渡しが復活したことにより、毎年4月下旬から11月中旬までの土日祝日は、和船(要予約)に乗り旧三更地区を散策することができます。
廃村になってしまった集落には、大山祇神社や小安観音、霧幻地蔵や古民家が当時のままに残されており、厄災から免れたこれらの施設に宿る力が、訪れる人の運気をあげ、願いをかなえるパワースポットとして注目を浴びているのです。最近では、NHKの番組『あさイチ』などでも取り上げられています。
雪解け水が流れてくるため、年間平均水温が11度といわれる只見川。霧が発生するのは、気温が上昇する夏の時期に、30日程度といわれています。
霧の中に浮かぶ和船は、消えてしまいそうな儚さを感じさせながら、ゆらゆらと対岸へ進みます。霧が出るかどうか、こればかりは、その日の天候と運次第となりますが、ゆったりと流れる美しい只見川を、昔ながらの和船で巡るだけでも、目の前に広がる雄大な自然の美しさに癒されますよ。
住所:福島県大沼郡三島町大字早戸字湯ノ平687番地