投資の世界では「8割の人が損をする」と言われるが、これは事実を反映しているように思う。そこには明確な理由があり、なぜか投資家は「利益を上げるために株を買っているのに結局最後は損をする」という不思議な状況にある。はたから見れば、「なぜ損をする株を買うのか?」と思わずにはいられないこの事実の裏にある法則について解説する。

上がるか下がるかは5割の確率?

投資家がある銘柄を購入した後、株価の動く方向は2つしかない。上昇するか下落するかだ。実際のところはともかく、この意味に限って言えば確率は5割だ。

しかし、上に書いたように、投資の世界では「8割の人が損をする」。ある瞬間の次の値動きの確率が上昇か下落か5割の確率で動くとすれば、この環境の中で8割の人が損をするのは、理解に苦しむ。

実はここには投資家の歪んだ心理が影響しているのだ。

投資家は利益と損失に対してまったく違った行動を選ぶ

投資家の歪んだ心理を解説するために、2つの例を上げてみよう。

ある投資家が(1)含み益を保有している状態と、(2)含み損を保有している状態の2つだ。この時、この投資家は何を考え、どんな行動を選ぶだろうか。具体的に心理を想像できるように、それぞれ利益と損失の金額を100万円とする。この投資家は、「100万円」という同じ金額の利益と損失に対して、何を感じ、どう行動するのだろうか。あなたも想像して欲しい。

(1)含み益を保有している状態

100万円の含み益を保有している投資家が気にすることは、「この利益が無くならないだろうか」という“利益の減少”に対する心配だ。この投資家は、どうしてもこの心配が頭から離れず、それほど遠くない将来にこの含み利益を生んだ株式の買いを決済し、投資を終える。利益を失いたくない一心で、早々に利益確定を行うのだ。

(2)含み損を保有している状態

100万円の含み損を保有している投資家が気にすることは、「これを決済すれば損をしてしまうので、決済をせずに価格が元の買値まで戻ってほしい」というものだ。決済すれば損失が確定されるので、この状況を耐え忍び、含み損の確定を先送りして、価格が元に戻るのを待つ。俗に、「塩漬け」と呼ばれる株は、こうして完成する

これらの心の動きと行動の選択は、投資家の典型的なパターンだ。なぜなら人は、脳の奥深くに、「生存の可能性が広がるものを手に入れ、生存の可能性が低くなるものを避けようとする本能」を持っているからだ。

別の言い方をすれば、「人は痛みを避けて快楽を得ようとする」。これが人の本能であり、投資家は本能に従い行動しているに過ぎない。しかしこの時点で投資家は、自らの無知により目の前に大きな落とし穴が空いていることに気づいていない。

上で書いた2つの行動を読み返してみると、1つの事実に到るだろう。

投資家は含み利益が出た株保有ばかりを決済し、含み損失が出た株保有は決済せずに、そのまま保有を続ける。この行動を繰り返せば、いつしかこの投資家の株式のポートフォリオは、含み損失だけの銘柄で占められるようになる。

ここで問題は、含み損が購入価格まで戻るのだろうかという疑問だ。この疑問に対して、「100%戻る」と答えられる人はいない。ここに注意しなければならない。