元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。
そんな宇垣さんが映画『17歳の瞳に映る世界』についての思いを綴ります。
●作品あらすじ:アメリカの北東部、ペンシルベニア州に住むオータムは、愛想がなく、友達も少ない17歳の高校生。ある日、オータムは予期せず妊娠していたことを知ります。
ペンシルベニア州では未成年者は両親の同意がなければ中絶手術を受けることができません。いとこであり唯一の親友スカイラーは、オータムの異変に気づき、中絶に両親の同意がいらないニューヨークへふたりで向かいますが……。
ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)、サンダンス映画祭2020ネオリアリズム賞を受賞し、批評サイト「ロッテン・トマト」で99%(2021/7/14時点)の超高評価の作品を宇垣さんはどのように見たのでしょうか?
中絶手術のためNYに向かう少女2人が見つめる世界
「男だったらと思う?」「いつも」。
自分の性別を嫌というほど意識させられる世界で、男にさえ生まれていれば、少しは安心して自由に生きていけたと思うから。考えたことのない女などいまい。
望まない妊娠をしたオータムが住む保守的な田舎町では、未成年者は両親の同意がないと中絶手術を受けることができない。ただ一人気づいてくれた親友の従妹の力を借り、手術に両親の同意を必要としないNYへと2人で旅立つ。
セクハラ上司や地下鉄で出会う露出症者、卑猥な言葉を投げかける同級生、常に大小の性暴力がつきまとう女のコを取り巻く環境を、セリフではなく、彼女たちの横顔と揺れ動く表情で浮き彫りにしている。核心の部分を伏せたままにしているからこそ彼女が抱く孤独を想像させ、その脆(もろ)く頑(かたく)なな心情が痛いほど伝わってきた。
原題の「Never Rarely Sometimes Always」の意味がわかったとき、長回しのカメラがとらえるオータムの瞳から目が離せなくなり、その言葉が繰り返されるたびに胸が締めつけられた。彼女はまだ17歳なのに!
母親になる想像ができないと口にすれば中絶を非難するビデオを見せられ、その権利が規制されているというアメリカの現状に驚いた一方、相手と連絡が取れなくなり同意書が出せないことを理由に産婦人科で中絶手術を拒否され、トイレで出産し逮捕された女性のニュースを思い出した。日本の話だ。
私の住まう国は、14歳の女のコも50歳の相手と同意の上で性交するだけの判断力があると信じている一方で、若い女は無知なので悪用するにちがいないから緊急避妊薬は市販すべきでない、と考える大人によって運営されている。
出産は命懸けの行為なのに、その決定権は持たされていない。犠牲になるのはいつも女のコだ。
きっとオータムはカウンセラーに電話なんかしない。だって救ってなんかくれないし。今までだってそうだった。
ただ、くだらないマジックや何げない会話、親友の払ってくれた犠牲、小指でつないだあの温もりだけが、支えだった。
『17歳の瞳に映る世界』 ’20年/アメリカ/101分 監督・脚本:エリザ・ヒットマン 出演:シドニー・フラニガン タリア・ライダーほか 配給:ビターズ・エンド ©2020 FOCUS FEATURES, LLC. All Rights Reserved.
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<文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 宇垣美里 ’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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