神楽坂のランドマーク『AKOMEYA TOKYO in la kagū』の道路を挟んだ向かい側、オリジナルのセレクトが本好きに支持されている書店『かもめブックス』の軒先。日が落ちた19時から、どんどん人が集まってきます。人々の目の先には、パンの数々が並んでいます。
ここは週に3日、しかも夜だけオープンする『夜のパン屋さん』。
このパン屋さんは、都内と静岡、北海道の人気ベーカリーから売れ残ったパンを集めて販売しているちょっとユニークな形態なんです。
都内各所の人気ベーカリーが勢揃い!
現在発売されているのは全14店舗のパン。そのうち日によって6店舗ほどのベーカリーの商品が店頭に並びます。訪れた時は、『BEAVER BREAD』『Universal Bakes』『ル・ミトロン』『PISTRINA DIO』の商品が販売されていました。
●新解釈の進化系和風パン『BEAVER BREAD』
同業者のファンも多い割田健一さんがオーナーシェフを務める東日本橋の『BEAVER BREAD』。平日の昼間でもお客様の列が絶え間ない人気店です。
バゲット、カンパーニュなど、フレンチスタイルのパンが並んでいました。バゲット、カンパーニュはシンプルながらしっかりとした食べ応えで、食事のお供にぴったり。スコーンは、ジャムをトッピングして。カフェオレと一緒に朝食にどうぞ!
●ヴィーガンパンのパイオニア『Universal Bakes and Cafe』
ドイツ・ベルリンでの在住経験がある大皿彩子さんが作るヴィーガンパンが話題の世田谷代田『Universal Bakes and Cafe』。菜食主義者でなくても楽しめるこだわりの100%ヴィーガンパンは、その種類の豊富さも魅力です。
この日販売されていたのは甘いパンのアソートセット。ヴィーガンながらメロンパンなど、馴染み深いパンがあるのもうれしいですね。クイニーアマンはキャラメリゼされた砂糖の食感と、芳醇なバターの香りが濃厚。カフェオレと合わせるのが◎!
●毎朝の食卓に!目白&小石川の食パン専門店『ル・ミトロン』
全国に16店舗を展開する食パン専門店『ル・ミトロン』。濃厚な生食パンではなく、毎日の生活に寄り添うシンプルな食パン作りにこだわっています。小さなパン型で焼かれる食パンは、膨らみすぎずぎゅっとキメが細かく仕上がります。
トーストするとサクッとした食感が楽しめ、バターとの相性も抜群。しっとりとした食パンでサンドウィッチを作ってもおいしそう。食べ続けても飽きのこない、デイリーな食パンです。
●イタリア直輸入の小麦粉で作る本格イタリアンベーカリー『POSTRINA DIO』
全国のレストランにもパンを卸しているという『モリノオーログラーノ』の2号店『POSTRINA DIO』。厳選されたイタリア産小麦粉を使った、イタリアの伝統製法で作られる本格的なイタリアのパンはイタリアンシェフからの信頼も厚いのだとか。
こちらも数種類のパンを組み合わせたアソートセットを販売。シンプルなプチパンはワインとペアリングしてもおいしく味わえそう。じわじわと注目されているピスタチオクリームが入ったクロワッサンは、見た目とは裏腹にさっぱりとした後味です。
フードロスだけでなく雇用再生にも貢献
この『夜のパン屋さん』、生活困窮者をサポートする『ビッグイシュー』が運営元。なぜこのような取り組みを始めたのか、ビッグイシュー日本の佐野未来さんにお話を伺いました。
このプロジェクトの発起人は料理研究家の枝元なほみさん。実は枝元さん、ビッグイシュー日本の活動から生まれたNPO法人ビッグイシュー基金の共同代表でもあるのです。
「枝元さんは以前より、食を通じた仕事づくりのプロジェクトを立ち上げたいと言っていました。そんななか知ったのが北海道・十勝の満寿屋商店さんのビジネスモデルです。満寿屋商店さんは、系列店で売れ残ったパンを夜本店に集め、安価で販売していたそうです。その話に感銘を受けた枝元さんが、東京で同じようなことがしたい!と思ったのがプロジェクトスタートのきっかけです」。(佐野さん)
枝元さんの思いに共鳴したのが『BEAVER BREAD』の割田さん。どうすれば、このプロジェクトを成功できるか、パン屋さんの立場から一緒に考えてくれたそうです。ところが、いざスタートしようと思っても、そう簡単にプロジェクトは進みません。
「協力ベーカリーを募っても、なかなか店舗は集まりません。枝元さん自身が飛び込み営業もして、やっと6店舗から『夜のパン屋さん』をスタートさせました。場所も、最初はキッチンカーを検討していたのですが、割田さんが『かもめブックス』さんを紹介してくれて、ここの軒先を借りれることに。これも本当に奇跡だと思っています」。(佐野さん)
紆余曲折がありつつ、食という視点から飢餓や食品ロスを考える活動「世界食料デー」の2020年10月16日に開店した『夜のパン屋さん』。6店舗からスタートしましたが、その活動に共感するパン屋さんの立候補などもあり、現在では倍以上の14店舗にまで協力ベーカリーの輪が広がっています。もちろん『夜のパン屋さん』の協力ベーカリー第1号は、『BEAVER BREAD』でした!
また『夜のパン屋さん』のスタッフは、さまざまな事情で職を失った方々。ベーカリーからパンをピックアップしたり、店頭での販売も行っています。スタッフ同士で「ここのパンはこういうところにこだわってるんだって」「このパンとこのパンは、製法が違うから仕上がりが変わるらしいよ」とイキイキと会話している様子も印象的でした。
『夜のパン屋さん』でパンを買うことは、フードロス削減だけでなく雇用再生という側面からも社会貢献できるのです。
まずはパンを“選ぶ”ことを楽しんで!
“社会貢献”というと、ちょっと敷居が高い気もしますが、『夜のパン屋さん』には難しいことは考えず「人気のパンが一気に買える」という楽しみがあります。
実際オープン直後には10人以上の行列ができるほどの人気ぶり!皆さん、『夜のパン屋さん』のオープンを待ち侘びているようでした。
「メディアを見てわざわざ訪れてくれるお客様もいますが、通りがかりに買って帰る方も多いです。夜にオープンしているパン屋さんは貴重なので『明日の朝食にする』と買って帰られます。また、オープンから半年以上経ち、段々と定着してきました。お客様にも『このパン屋さん!』というご贔屓ができて、SNSをチェックして買いに来てくれる方もいます」。(佐野さん)
やはり、人気ベーカリーのパンが一堂に買えるというのは魅力的なんですね。
「“選ぶ”楽しさもありますよね。私もお店に顔を出した時はついつい買っちゃいます(笑)。店頭に並ぶベーカリーも日によって変わるので、毎回新しい出合いがきっとあるはず。楽しみながらフードロスや、社会貢献について考えるきっかけになると私たちもうれしいです」。(佐野さん)
『夜のパン屋さん』はまさに“パンのセレクトショップ”。おいしいパンに出合いながら、食の未来を考えてみてはいかがですか?
■店舗情報
夜のパン屋さん
住所:東京都新宿区矢来町123 第一矢来ビル1階『かもめブックス』軒先
営業日:毎週火・木・金曜日
営業時間:19時〜21時頃
※営業や販売店舗についてはお店のSNSでご確認ください
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