株式の値動きを読む上で非常に重要な「5%ルール」をご存知だろうか。正式には「大量保有報告制度」と呼ばれるもので、株券等の大量保有の状況等に関する開示制度のことをいう。保有状況に関する報告から株価の先行きを読み解く投資法を紹介していこう。

5%ルールとは?

上場企業の発行済み株式の5%を保有した株主は、個人であろうと法人であろうと、保有した日から5営業日以内に内閣総理大臣宛ての「大量保有報告書」を管轄する財務局に提出しなくてはならない。

大量保有情報は株価に影響を及ぼすため、市場の透明性、公平性を高め、投資者保護のために1990年の証券取引法改正で導入された。5%保有した時点で報告するだけでなく、5%超保有する投資家がその割合を1%以上増減させた場合にも、5営業日以内に報告が義務付けられている。2007年4月には、金融庁の開示システムであるEDINET(電子開示システム)での報告が義務付けられた。

アクティビストが買い増す川崎汽船のパフォーマンス

この開示された情報から、ファンドなどが株式を買い集めていく流れが把握できる。 たとえば、シンガポールのヘッジファンドでエフィッシモ・キャピタル・マネジメントという会社。

村上ファンド出身者が設立したファンドで、銘柄数を絞り込み、割安株を長期で大量保有する戦略をとっている。日本市場を代表するアクティビスト・ファンド(物言う株主)の一つで、株主提案や訴訟を通じて企業に株主還元の強化など経営改革を求めている。総運用資産は5500~6000億円とされている。

エフィッシモは、2015年9月4日の報告書で、初めて海運大手の川崎汽船 <9107> の大量保有者として登場。当初、保有比率は6.18%だった。9月24日には、保有比率を7.94%まで上げたことを報告している。その後1%買い増しが増えるたびに変更報告書を提出、16年7月4日には33回目の変更報告書で、発行済み株式数の35.37%まで保有比率を上げている。

エフィッシモが初めて、5%ルールに登場した2015年9月4日を基準にパフォーマンスを検証してみよう。川崎汽船は、15年9月4日の264円から16年7月15日の258円までマイナス2.3%安で一見上がっていないように見える。しかし、その間同業の日本郵船 <9101> はマイナス37.7%。商船三井 <9404> はマイナス29.3%と円高やドライバルク市況の低迷などで、海運セクターは大きく下落していたのだ。その間日経平均もマイナス7.3%と下落しており、川崎汽船の相対的なパフォーマンスは、同業他社や市場を大きく上回っている。 仮に、川崎汽船買い/商船三井売りのロング・ショート戦略をとっていれば大勝ちだ。