個性あふれる5つの庭園
苔庭
ゲートを抜けるとすぐに見えるのは苔庭。その名の通り、岩や土一面に苔むした姿が特徴です。山に生えていた姿をそのまま再現するため、庭園の木はあえて斜めに植えているというこだわり。
庭園の中心に細長い岩が橋のように架かっています。焦点を合わせやすいものを一つ置くだけで、風景が締まって見えるのだとか。
苔庭の奥では、木の間から五重塔が顔を出しています。実はこの五重塔、今から700年前の室町時代のもの。重要文化財級の価値を秘めていながら、風景の一部として使われているなんて、大胆すぎます。
寿立庵の庭
苔寺から進むと、飛び石が印象的な庭園が現れます。茶室と比べてずいぶんと簡素な印象を受けますが、実はこれも演出。それぞれの飛び石を山に見立てて、峠を一つずつ超えていくうちに、華やかな茶室にたどり着く。内と外、わびさびを感じるために、あえて機能的な作りをしているんですね。
こちらは茶室「寿立庵」へと続いていて、庭園を眺めつつお抹茶をいただくこともできます。茶室内からは庭が一望できて、秋になると紅葉がいっせいに色づいた光景も見られます。
訪れたのは4月の上旬、ちょうど春が本格的に到来する時期。花も色づき始めてきました。
片隅では竹が密集して生えていて、竹林のような雰囲気を醸しています。庭園の隅では、タケノコがひょっこりと顔を出していました。
枯山水庭
足立美術館の中で一番の見どころ、枯山水庭です。枯山水とは、水を使わずに岩や砂だけで山や川を表現したもの。日本にはたくさんの枯山水がありますが、これほど大規模なものはなかなかお目にかかれません。
枯山水を端から見てみると、遠くに細長い滝が見えます。一見するとちょろちょろと流れているように見えますが、実は高さ15メートルもある滝です。ここから湧き出た水は、巡り巡って庭園へ注がれています。この滝は、鶴亀(きかく)山から湧き出るため、鶴亀の滝と呼ばれています。
後ろを振り向くと、この美術館を設立した足立全康氏の銅像が。まるで美術館を訪れたお客さんを案内しているようです。
池庭
ほかの庭園とは違い、こちらは目の前に大きく広がる池が主役。のんびり泳ぐコイが作り出す水紋を眺めるのも、オツなものです。
庭園の奥にある湧水にじっと耳をすませば、水が流れる音が聞こえています。
白砂青松庭
真っ白な砂が特徴の、足立美術館の中では最も古い庭園です。風景の中心を苔や松よりもごつごつした岩肌が陣取っていて、エネルギッシュな雰囲気があります。
松の配置や砂の蒔き方を工夫することで、風景を横長に見せているそう。
足元に見える砂の模様にも注目。水が流れているように見えて来ませんか。