オタクが抜群に似合う『あのキス』&映画『あの頃。』

『あのときキスしておけば』のほうは、漫画オタクで、映画『あの頃。』(2021年公開、6月18日DVD発売)のほうは、アイドルオタク。松坂桃李にオタクが抜群に似合うのは、本人がゲーマーとして有名であること、非常に凝り性であることも、良い方に作用していると思います。

 なぜなら、「愛するモノ」に対する純粋な思いには、本人が心から共感できるはずだから。

 Twitterで「今はFFⅨにハマっています。どれくらい好きかというと、UCノジンネマンくらい好きです」などと謎用語を連発、ファイナルファンタジーの話のたとえにガンダムのキャラを挙げて、ガチオタク認定をされたり、菅田将暉のラジオ番組で自身のプレイヤー名を綴りまで詳細に説明して、フレンド募集したりという空気を読まないぶりは、実はネットユーザーの男性たちからも愛されてきました。

 だからこそ、松坂桃李がハロプロのコンサートに行っていたことが報じられると、ハロプロオタク界隈などから歓迎されていたのですが、実は役作りのためだったことが後で発覚します。それでも決して叩かれないのが、松坂桃李ならでは。

『あの頃。』では仲間たちといるときの楽しそうでキラキラしているのに、どこか残念な感じがリアリティを醸し出していましたし、原作者の劔樹人本人を演じることで、演奏指導などで頻繁に撮影現場を訪れていた劔の立ち姿、話し方、揺れながら近づいてくるクセなど、細かいところまで観察し、その再現度の高さが絶賛されました。

『あのキス』のほうは、憧れの漫画家先生(麻生久美子)が亡くなり、知らないおじさんの体に魂が入ってしまうというトンデモ設定なのに、おじさん(井浦新)に押しまくられて同棲状態になり、さらに驚くほどすんなりおじさん姿の先生を受け入れる展開が、実にスムーズ。尋常でないピュアさと順応性の高さが、残念でありつつも愛おしいです。

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』

映画『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017)では、見事にぺらっぺらのことをぺらっぺらに言える内容のないクズ男を演じていました。

 その中身の薄さという点では、『ここぼく』神崎真にも通じるものがありますが、実は神崎を彼にオファーした理由の一つに、芝居の確かさとこの『彼女がその名を知らない鳥たち』での演技があったことを、『ここぼく』の勝田夏子プロデューサーはインタビューで語っています。真の原点ですね。

(ただし『ここぼく』神崎を誰にと考えたときに、『彼女がその名を知らない鳥たち』や『ゆとりですがなにか』の演技が良かったから似合うんじゃないかと思ったということで、イメージして書いたわけではありません)

『あの頃。』のモデルがある人物に対する徹底的な観察と研究・分析からもわかるように、また、プライベートでのオタクぶりからも推察されるように、松坂桃李は非常に凝り性で努力型の人。だからこそ、ヘタレだったり、中身が薄っぺらな人だったり、どこか抜けた残念な人を演じるときに、そこにおかしさが漂います。

 真面目で、仕事に対する姿勢も真摯で、モノをいろいろ考える人だからこそ、ヌケの演出が際立つのでしょう。小顔+長身のどう見ても目立つ容姿も、欠落した「残念」部分を強調する上で大いに役立っていると思います。

<文/田幸和歌子> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 田幸和歌子 ライター。特にドラマに詳しく、著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』など。Twitter:@takowakatendon

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