カフェで出会い、結婚したふたりのストーリーをお届けします。恋愛への入口となる「出会い」で、背伸びしたり、無理したり、取り繕ったり。自分を追い込んでつらいと感じているなら、がんばりすぎないで。疲れない、自然な出会いもきっとあるはずです。
恋がしたい、結ばれたい、結婚したい――。相手を探すところから、と合コンに行ったり、婚活・恋活アプリを駆使したりしている人も多いのではないでしょうか。
でも、日常生活の中で出会い、交際・結婚に発展することはたくさんあります。そんなナチュラルな出会いはどうすれば手に入るのか。限られた人だけの奇跡ではなく、自分にも起こり得ることなのでしょうか。
お互いの行きつけのお店で出会い、交際~結婚に至った薗部雄一さん(33歳)、陽花さん(30歳)ご夫妻にそのなれそめと、ナチュラルな出会いについてお聞きしました。
■出会いはカフェで。ふたりの行きつけの店だった
――おふたりの出会いは行きつけの喫茶店で、だったんですよね。
雄一さん(以下、雄一):マスターがこだわりを持って経営しているこじんまりとした街に根差したお店でした。雰囲気がとても好きで通い詰めていたら、妻もそのお店の常連だったんです。
陽花さん(以下、陽花):私は当時、整体師の仕事をしていて、喫茶店のマスターがお客さんでもあったんです。喫茶店は院から歩いて5分くらいのところにあって、よく行っていました。
雄一:でも、最初からすぐに親しくなったというわけではなかったんです。たまに店で一緒になるくらい。ただ、お客さんは年配の男性が多く、女性のひとり客は少なかったので、印象には残っていましたね。声がよく通る女性で、マスターと仲良く話していて、最初は馴れ馴れしい人だな、というイメージ(笑)。でも綺麗な人だなあって。
――話すようになったきっかけはいつだったんですか?
雄一:彼女の存在を知ってから数カ月経ったころ、閉店ギリギリに彼女が来たんですよ。そのとき、席が隣同士になったんです。少し話はしたけど、とにかく壁がある感じで。
陽花:私は「げっ、人がいる!」と思って。最後のひとりだと思っていたのに、早く帰ってほしいなあ、って(笑)。男の人が苦手だったので、あまり仲良くなりたくなかったんですよね。冷たくあしらってしまいました。
■カフェでの顔見知りから友だちへ。そして一番大切な人に
雄一:だから、出会いはちっともロマンチックでもないし、会った瞬間、雷がビビッ! みたいなドラマのようなこともなかったんです。名前も知らないし、顔見知りになった程度。でも、そのあと、近所のスタバでばったり会ったんです。
陽花:その日はお休みでいつものお店に珈琲を飲みに行こうと思ったんですけど、店休日だったからスタバにするかな、って。スタバは近所に2軒あるんですけど、1軒は満席で、もう1軒のほうに行ったら、知ってる顔がいるぞ、と。
雄一:僕はそのとき、転職して有給消化中でした。で、空き時間にふたり掛けの席でパソコンを広げていたら、テーブルをトントン、と叩かれて。顔を上げたら、妻がいたんですね。それで相席どうぞ、ということに。そこで初めてお互いのプライベートについて話しました。名前とか職業とか、出身地とか。で、一緒に帰ってきたら意外と家が近いことを知ったんです。そこでちょっと意識するようになりました。
――お互いのことを知って一気に仲良くなったんでしょうか。
陽花:そうですね。でも男女というよりは女友達、的な感覚でした。話をしてみると彼ってかわいいものが好きだったりとか、すごく女子っぽいトークをする人で、女の子も苦手だと言っていたので、この人は安全だ、って私の中でハードルが下がったんです。住んでいる町に仲の良い友達ができた、わーい! って喜んでました。
雄一:僕は好きで、好きで、仕方がなかったんですよね。一緒にいるとすごく落ち着いたし、妻といる時間がとても好きでした。こういう時間をもっと増やしたいなあ、お付き合いしたいなあ、とはもちろん思っていましたけど、今踏み込んだら嫌われるだろうから、といろいろ考えましたね。関係を切られるのが怖いので、いつか……とチャンスを伺っていました。
陽花:私ももちろん好きだったんですけど、それが人間的に好きなのか、男性として好きなのかが判断がつかなかったんです。もし告白されたとしたら、なんて言うんだろう? まだちょっと男の人として見られないから、ちょっと待って、って言うかなあ、と思っていたのに、実際に言われたら「はい」って即答しちゃったんですよね。それも食い気味で。自分でもびっくりしました。
■次に付き合う人とは結婚する、と決めていた
――交際4カ月で結婚とのことですが、けっこうスピード婚ですよね。プロポーズはいつだったんですか?
雄一:お付き合いした1時間後くらいには、「結婚してください」って言ってました。
陽花:そう言われたので、「あ、はい」って。
――展開が早い!
雄一:まだ、友だちだったころに「この人と、お付き合いはもちろんしたい」と思っていましたけど、「この人と一緒に人生を歩んでいきたい、歩むんだろうな」っていう予感があったんです。だから思いきって伝えました。
陽花:私は誰かと付き合い始めるときはいつも、別れのことを念頭に置いているタイプだったんですよ。ずっと一緒にいる人と付き合いたい、一生一緒にいないのに付き合っても意味ないんじゃないかな、って思っていた時期がわりとあって。「別れる」ということが悲しかったし、夫の前に付き合っていた人と別れたときに本当につらかったので次の人とは絶対に結婚しよう、って決めてたんです。だから迷いが一切なかったんだと思います。
――同じコミュニティで付き合う良さってなんでしょうか?
雄一:生活の場が近いのは大きいかな、と思います。喫茶店以外にも行きつけのお店、好きなお店がいっぱいあって、いろいろ一緒に行ったし、結婚のときも祝福してもらいました。街自体が自分たちの思い出になるというか、受け入れられていたように感じられて、心地よかったですね。
陽花:その街に住んでいるという時点で趣味が合いやすいのかな、と思います。たくさんある街の中で「そこ」を選んでるって、かなり大きいですよね。選び方っていろいろあると思うんですけど、たまたまその場所に住んでいたとしても、住み続けるのにはワケがある。たくさんある中から住処を選んで、しかも好きなお店が一緒という時点でかなり好みが似ているんじゃないかなあ。ほかにも経済観念とか、同じ街に住んでいる時点で、普通の人よりも合いやすいのかなあとは思うんですよね。話が通じやすいですし。
■疲れない恋愛=自然体な自分でいること
――おふたりの話を聞いていると楽しそうだな、という印象が強いんですが……。
陽花:そうですね、付き合う前も「ごはんがおいしいね」とか、日々ほのぼのとしていて、穏やかに楽しい時間を過ごしていました。
――肩の力が抜けている感じがいいですよね。疲れる恋愛と疲れない恋愛の違いはなんだと思いますか?
雄一:出会いの場を求めすぎる、ガツガツすればするほど疲れました。紹介してもらって、期待はずれだったとか、そういうのを繰り返していると、だんだん心が疲れてくるんです。そのうち、恋人を作ることが目的になってしまって、相手と自分はどうすればいいのか、その後わからなくなるんじゃないでしょうか。
陽花:自分を良く見せようとすると疲れる――それに尽きるかな、って思います。必要以上によく見せようとしすぎないことが大事かな。恋愛では微妙な嘘をつきがちだと思うんですよ。自分も経験がありますし。些細なことだと、料理ができないのに、料理ができる人のほうがモテるから、できるって言っちゃうとか(笑)。そういうことを繰り返すと、嘘に嘘を重ねることになるというか、常に気を張ることになるから。素の自分でこう出していくのが一番疲れないかなあ、って。
雄一:隠しきれないよね。一緒にいたらボロが出るから。
■出会いは案外、近いところにある
――最後に。ナチュラルな出会いをするにはどうするのがいいと思いますか?
陽花:自分が大好きなところに行き続けることだと思います、場所を問わず。ライブが好きならライブ会場に行き続ければいいし、喫茶店が好きならそこに行き続ければいいと思うんです。
雄一:同感です。楽しいなあ、ワクワクするなあ、と思えることをやり続けていたら、出会いってあるんじゃないかなあ。楽しんでいるときの自分ってとても自然だと思うんです。自然体のときに出会って、仲良くなっていく相手っていうのは恋愛して結婚したとしても、その状態のままいける可能性が高くなるような気がします。もちろん、結婚して仕事とか育児によってお互い変わっていくところはあると思いますけど、基本的にはお互いが自然体な関係を継続できるんじゃないでしょうか。
陽花:出会いってどこにでも転がっていると思うんです。出会いを求めてどこかに行くよりは、日常の延長線上にあるんじゃないかな。
編集後記
まだ「友人」だったころのことを「毎日楽しくて、いつ会えるかな、ってワクワクしていた」と笑顔で話す雄一さんに「私もやっぱり楽しいから会っていた」と陽花さんが大きく頷く……。当時のことを思い出すように、ふたりで見つめ合う瞬間があって、互いを大切に思い合っているのが、ひしひしと伝わってきたのが印象的でした。
「付き合う前からすごく幸せな気分だった」(陽花さん)、「出会いからずっと疲れるということはなくて楽しかった」(雄一さん)という言葉に象徴されるように、ナチュラルな出会いはナチュラルな恋愛や結婚に続くものなのかもしれません。
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