日々、何気なく視聴しているテレビドラマ。しかし、よく考えてみたら現実では違和感があるシーンが数多くあります。
2月に放送された『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)でも「ベタでもよく考えてみたら、現実ではありえないシーンが放映されている」という話題がとり上げられていました。
今回はそんなドラマでよく見るちょっと不思議なシーンの“裏事情”について、連続ドラマに携わる制作関係者たちに話を聞きました。ちょっと不自然でも入れざるを得ない理由とは――?
※今回取材した方々は、記事中に例として挙げるドラマの関係者ではありません。
急に吐き気をもよおしたら、実は妊娠
「うっ……これは、まさか妊娠?」などと、無自覚な状態から急に吐き気や体調不良によって妊娠が判明することもドラマのあるあるです。
しかし、実際に妊娠を経験した女性はそのシーンに違和感をもつことが多いようです。確かに、妊娠に至る行為は無自覚ではないでしょうし、大半の女性は生理の遅れや体調の違和感がある時点で、敏感に「もしかして?」と思いますよね。それで妊娠検査薬を使ったり。(もちろん、妊娠超初期から吐き気に悩まされる人も中にはいらっしゃると思いますが……)
正月に放映された『逃げるは恥だが役に立つ ガンバレ人類! 新春スペシャル!!』(TBS系)では、急激な眠気によって妊娠が判明するという目新しいものでしたが、本人が無自覚だったところは変わりませんでした。こういった表現の理由を、脚本家のA氏が語ってくれました。
「気持ちはわかりますが、それはあまりにも生生しいですよね。女優さんに生理や排卵日と言わせるなど、リアリティを追究しすぎるとドラマの本質や主人公のキャラがぶれてしまうこともありますから。性や妊娠というテーマのドラマであれば別ですが……」
確かに『逃げ恥』のみくりたちのような「子どもはできてもできなくても」というスタンスだった二人の場合、生理をいちいち気にする描写があるのはたとえリアルではなくともイメージと違うような気がしますね。
「あと、男性視聴者も多い場合、妊娠反応に無知な人も多いので、おなじみの描写にすることで無駄な説明を省くということもあるのではないでしょうか」
つまり、もっと妊娠についての知識が多くの人に広まれば、画一的な表現もなくなるかもしれません。
常連だらけで大丈夫? 店に集まる仲間たち
日本のテレビドラマでよくあるシーンとして挙げられるのが、「やたらと常連の店に集まる登場人物たち」です。
『相棒シリーズ』の(テレビ朝日系)の小料理屋「花の里」をはじめ、今期ドラマでも『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系/関西テレビ)や、『コントが始まる』(日本テレビ系)などでもそのようなシーンを毎週のように見ることができます。
NHK朝の連続テレビ小説では、登場人物の誰かが突然飲食店を開業し、そこが主人公たちの憩いの場になる展開が「あるある」としてファンにも受け入れられているようです。
しかし実際は、公私ともにおなじみの面子が通うなじみの店というシチュエーションはあるようでないのが現実です。あったとしても、勢揃いになるってどれだけの確率! しかもこのご時世に……。また、その店は登場人物関係者以外の客はいない、もしくはわずかなのが多く、経営は大丈夫なのか心配になってくるほどです。
「皆さんそう言いますが、実は重要なシーンなんです。常連が集まる店は、登場人物たちのハブになる場所。ひとつ集まる場を作ることで展開が進んだり、日が変わるときなどのシーンの繋ぎにもなるんです」と語るのは、現在放映中の連ドラにも携わる脚本家のB氏。
また、小説や漫画の原作モノは、原作にはない常連客が集まる店がオリジナルシーンとして追加されることが多いそうです。
「小説や漫画原作でモノローグとして表現されていたものを、マスターや友人たちに吐露したり、悩む様子を見せる等、映像で見せるための場になっているんです」(B氏)