高齢出産にはリスクもあります。35歳以上で初めて出産することを高齢出産といい、今では珍しくなくなりましたが、リスクがあることには変わりありません。二児の母で内科医の筆者からみた高齢出産のメリットと、心にとどめておきたいリスク(デメリット)を解説。また、高齢出産に関するメリットについても触れていきます。
高齢出産とは何歳以上のこと?
シドニイ・シェルダンの著書『女医』に「3分の1が結婚、3分の1が離婚、3分の1が独身」と書いてあったためか、わたし自身「女医は独身や子どもがいない人の割合が高い」というイメージがありました。
ところが、わたしの友人や同級生たちは、ほとんど(数えてはいませんが実感では8〜9割ほど)が20代で結婚し第1子を1〜2年以内に出産していき、驚きました。ひとりの出産で1年前後キャリアは中断しても、出産をとりあえず優先させた人が多い印象でした。
なぜ女医は戦略的・計画的に出産するのか? それは高齢出産のリスクやデメリットをよく知っているからなのかもしれません。
高齢出産とは、35歳以上で初めて出産する場合です。ちなみに昔は30歳以上で高齢出産とされていましたが、現在は初産の平均年齢が30歳です。40歳代で初めて出産する人も珍しくなくなりました。
周産期管理(妊娠中から出産までの母親と赤ちゃんの管理)や不妊治療が進歩したとはいえ、女性が出産するのに最も安全なのは、やはり20代なのです。高齢出産の主なリスクやデメリットを3つ紹介します。
高齢出産3つのリスク
1.流産・早産・帝王切開の確率が上がる
流産は若い女性であっても妊娠の15〜20%に起こります。妊娠早期の流産は赤ちゃんの染色体異常が原因のことがほとんどです。確率の問題でもあり、流産を100%防ぐ方法はありません。
女性が40歳以上になると、流産の確率は約40%と高くなります。妊娠する確率も女性の年齢とともに下がります。これは、妊娠を希望してから出産するまでの平均期間が、女性が高齢だと長くなりやすいということです。
また、妊婦さんが高齢であれば、妊娠高血圧や妊娠糖尿病も増えます。治療をしても高血圧や糖尿病が進行してしまう場合、赤ちゃんに影響が出ます。早めに赤ちゃんを外に出してあげたほうがいいと判断されると、結果として早産や帝王切開になることもあります。
子宮筋腫などの合併妊娠が多いこと、若い女性に比べると難産が多いことも、高齢出産で帝王切開が増える原因です。
2.赤ちゃんの先天異常が増える
染色体異常で有名なのはダウン症ですね。40歳以上の女性がダウン症の子どもを出産する確率は1%、100人にひとりです。30歳だと700分の1です。ただし、女性の年齢にかかわらず、何らかの先天異常がある子どもが生まれる確率は4%ほどあります。一般の方が思われるより高いのではないでしょうか。
一見しただけでは先天異常がわからなかったり、障害があっても小さい頃に治療を終えて気づかれなかったりしますが、先天異常を持って産まれる赤ちゃんは意外と多いのです。
3.妊婦自身の親が高齢である
若いうちに出産した人は、一般的に自分の親もまだ若く健康なので、祖父母に子育てを手伝ってもらいやすいです。高齢出産すると必然的に自分の親も高齢になるため、中には育児と親の病気や介護が重なる人もいます。それは高齢出産のリスクのひとつと言えるかもしれません。
ご自身やパートナーの親に子育てを手伝ってもらえそうになければ、出産前後のシッターサービスを利用するか、産後もしばらく入院できる病院・施設もありますので探しておいてもよいでしょう。
リスクだけじゃない。高齢出産のメリット
一方で、高齢出産はリスクやデメリットばかりではありません。
たとえば、「子育ては体力が必要だから若いうちに産め」という人がいますね。わたしの経験でいえば、不規則な生活をしていた20代のお母さんよりも、日頃からスポーツなどを楽しんでいた40代のお母さんのほうが体力がある、ということはありえます。
また、20代の親と違い、高齢出産する方は社会人経験が長い方が多いと思います。これまでに仕事などで培った忍耐力や柔軟性は子育てでは強みになります。「予想外のことが起こる」「理不尽なことが起こる」といった場面は子育てにはつきものですが、苦手な上司やお客さんに比べればわが子はかわいいものです。
また、共働きの場合、20代の若い夫婦に比べて経済的に余裕がある夫婦が多いと思います。高齢出産はデメリットばかりではありません。大切なのは「ひとりで抱え込みすぎない」こと。
母親だけで子育てをがんばろうとせず、パートナーはもちろん、周囲の人たちを信頼して頼ることも子育てに必須のスキルです。マラソンのような長距離走になるからこそ、人生経験を生かして楽しく子育てしたいものですね。
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