元TBSアナウンサーの宇垣美里さん。大のアニメ好きで知られていますが、映画愛が深い一面も。
そんな宇垣さんが映画『ペトルーニャに祝福を』についての思いを綴ります。
●作品あらすじ:東欧・北マケドニアの小さな街を舞台に、女人禁制の伝統儀式に思いがけず参加してしまった1人の女性が巻き込まれる騒動を描きます。
32歳のペトルーニャは、美人でもなく、体型は太目、恋人もいず、大学で歴史を学んだのに地元にある仕事はウェイトレスのバイトだけ。主義を曲げてしぶしぶ向かった就職面接でもセクハラされた上に不採用。その帰り道に、地元の伝統儀式“十字架投げ”に出くわします。
ペトルーニャは思わず川に飛び込むと、手に入れた者には幸せが訪れるという“幸せの十字架”をゲットしますが「女が取るのは禁止だ!」と男たちから猛反発を受け、さらには教会や警察を巻き込んでの大騒動に…。
ユーモアかつ切れ味鋭い風刺で“女人禁制”へのパワフルな闘いを描き、ベルリン国際映画祭エキュメニカル審査員賞&ギルド映画賞受賞ダブル受賞した本作を宇垣さんはどのように見たのでしょうか?(以下宇垣さんの寄稿です。)
彼女はなぜ、女性に禁じられた“幸せの十字架”を手にしたのか
この世で一番怖い質問は、結局のところ最もシンプルなものになる。子どもの曇りなき眼から発せられる「なんで?」が私は一番怖い。そして、本作のペトルーニャも本当に不思議で本当にわからなかったから聞いたのだ。「どうして男だけなの?」と。だから、その問いに対して男たちは皆困り果ててしまった。
彼女は別に大層な目的意識を持っていたわけじゃない。何か問題提起したかったわけでもない。ただちょっとむしゃくしゃしていたのだ。親には早く就職しろとせっつかれ、32歳なのに25歳と申告するように言い含められて向かった面接では、ひどいセクハラを受けた。大学では歴史を学び、成績だってオールAだったのに、見た目が悪いから若くないからと蔑(さげす)まれた。だから、ただ本当に幸運にあやかりたいだけだった。それだけのことがこんな大騒動へと発展してしまった。
これが事実を基にしているというのだがら、さぞ北マケドニアは息苦しい国であろうと思う一方、そういえば救急救命のために土俵に上がった女性に対し再三下りなさいとアナウンスし、その後大量の塩をまいた国があったなあと思い出した。
当初、閉鎖的な町の中で鬱屈した思いと自己嫌悪で爆発しかけのようだったペトルーニャが、警察の取り調べや男たちの恫喝(どうかつ)にも屈せず、徐々に研(と)ぎ澄まされ開眼し解放されてゆく様が愉快でたまらない。
彼女はもう十字架を必要としない。自分の強さも己の価値もこの手で見つけ出したから。そんなものはすがってる者たちにくれてやろう。理解してくれない人すらも受け入れて力強く歩きだす彼女の後ろ姿に圧倒され、背筋が伸びた。
『ペトルーニャに祝福を』 ’19年/北マケドニア・フランス・ベルギーほか合作/1時間40分 配給/アルバトロス・フィルム
<文/宇垣美里> ⇒この著者は他にこのような記事を書いています【過去記事の一覧】 宇垣美里 ’91年、兵庫県生まれ。同志社大学を卒業後、’14年にTBSに入社しアナウンサーとして活躍。’19年3月に退社した後はオスカープロモーションに所属し、テレビやCM出演のほか、執筆業も行うなど幅広く活躍している。
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