病気や怪我など、さまざまな事情を抱えて入院してくる患者さん。心おきなく治療に専念できるようサポートするのが、私たち看護師の務めです。

とはいえ、中には看護師がギョッとしてしまうような行動を起こす人も。白衣の天使と呼ばれる笑顔も引きつる、驚きの患者さんエピソードを紹介します。

糖尿病患者さんの引き出しの中にはなんと…!?

数十年来の糖尿病を患っていたAさんは、笑顔の可愛い60歳代の女性。最近血糖値が安定しないということで、生活や服薬など、自宅での療養について学び直すため教育入院となりました。

しかし、なぜか下がらない血糖値…。「なんでだろうねー?」と、ナースステーションでも噂になっていました。そんなある日のこと。

「Aさん、検温ですよ。体調はどうですか?」
「あら看護師さん、今日も元気ですよ」
いつも通り、にこにこ微笑んで答えてくれるAさん。次の瞬間、信じられないことを口にしました。

「看護師さんいつも良くしてくれてるから、おやつおすそわけするわね」
そういって、Aさんが開けた枕元の引き出しには、甘―いお菓子がぎっしり!

「主人は私の好きなお菓子をよく知っていて、お見舞いのたびに持ってきてくれるのよー」
嬉しそうに話される様子は大変微笑ましいのですが、治療的には残念ながら完全にNGです。ご本人とご主人に再度しっかり説明して、お菓子は全部持って帰っていただきました。
 

主治医の治療指示はなんと「買い食い」

検査のため入院してきたBさんは食べ盛りの10代男子。しかも身長は2m近く、スポーツマン体型。カロリー計算をすると、1日に必要な摂取カロリーはなんと3000kcal近く!けれど、病院食では2000kcalまでしか設定がなく、2000kcalの食事を食べてもらっていました。

「Bさん、体調どうですか?」
「体調は悪くないんですが…お腹空きました…」
申し訳なさそうに言う表情に、ナースステーションは全員悲しい気持ちになってしまいました。

病棟は原則間食NGですが、あまりに辛そうな様子です。
「先生、Bくんお腹が空いて辛いそうなんですけど…」
「そうだよねえ、あの体格じゃなあ…」
主治医に報告すると、主治医も悲しそうな顔で考え込みました。

「そうだ!いいことを考えた。俺、Bくんの治療計画に『買い食い』って書くよ。
 治療の一環として、好きなもの買って食べてもらって!」
「えっ、治療!?」

驚きの提案は他の医師にも受け入れられ、それからは「治療」として、病院食に追加してお弁当を2つ、毎食ぺろりと完食していました。

体調が悪く食が細い人が多い病棟の中で、他の患者さんも看護師も元気をいただいた出来事でした。