日本の熟語で見かける綺麗な漢字を覚えよう
日本語では、漢字の組み合わせで一つの意味を成す「熟語」があります。言葉の成り立ちの美しさや、綺麗な漢字の意味を改めて振り返ってみませんか。
日本の季節や感情、情景などを表すことができる漢字を知ることで、語彙力を高めることができます。
また綺麗な漢字の使い方を覚えると、知性がある人として一目置かれるようになりますよ。
綺麗な漢字(熟語)を【一文字】【二文字】【三文字】とそれぞれに分けてお伝えします。名づけを検討している人にもおすすめです。
日本の綺麗な漢字《一文字》
一文字の綺麗な漢字は、それだけで存在やその場の雰囲気などを伝えてくれます。
たった一文字の漢字にも関わらず、言葉の意味なども分かりやすいので、綺麗な漢字を見たら、覚えておくとよいでしょう。
ポピュラーなものを中心に一文字の漢字を覚えておくと、子供の名づけや創作作品に出てくる人物のネーミングなどにも役立ちます。
昨今は大正浪漫ブームなども相まって、綺麗な漢字が注目されているので、和を好む人は必見です。
たたずまいを感じる綺麗な漢字
【凛(りん)】という一文字の漢字には、季節上の寒さが厳しいさまや、気持ちがぐっと引き締まるさまを表現する意味があります。
「凛とした空気」といえば、日本の冬独特の、今にも肌が切れそうになるほどの冷たい空気をすぐに思い出せます。
また、「凛とした表情」といえば、本気モードのまなざしや表情を思い浮かべることができるでしょう。
また、声に出したときに「りん」というリズム感もよく、子供の名前などにもよく使われています。
嗅覚をつかさどる綺麗な漢字
【馨(かおる)】は画数が多く少々難しい一文字の漢字ですが、良い匂いを発する、香気が立ち込めるというような意味を持っています。
常用としては「香り」という漢字が主に使われています。
今では、熟語ではなく「馨」一文字で使われることが一般的ですが、かつては「寧馨児(ねいけいじ:神童や優れた子供を意味する)」というように、「よい評判」を意味する綺麗な漢字としても用いられていました。
聡明さを意味する綺麗な漢字
【慧(けい)】という一文字の漢字は、賢さや知恵を意味します。またものの道理を見抜くとともに、疑問を解く力といった意味もあるようです。
仏教などでよく使われる綺麗な漢字で、「智慧(ちえ)」と表記し聡明さや知性を意味する言葉として成り立っています。
この漢字はもともと「彗星」の「彗」が由来です。この漢字に心がつくことで、心の中のほのかな光を意味するようになりました。
やがて、機知や聡明さを意味する言葉になったと考えられています。
布を表す綺麗な漢字
【紗(しゃ・さ)】は薄絹を意味する綺麗な漢字です。
薄絹とは、目が粗く薄手の絹織物のことで、ストールとして用いられるほか、夏場の着物地としても用いられます。手触りがよく、涼やかな印象がもたらされます。
また、インド綿など手染めで織り上げられた布は、日本に持ち込まれたとき「更紗(さらさ)」として珍重されていました。
「さらさら/しゃりしゃり」といった布の手触りを表す擬音語とも相まって、美しく響きます。
貴石を表す綺麗な漢字
【翠(すい・みどり)】は、色でいうとエメラルドグリーンや萌黄色を表す綺麗な漢字です。貴石の翡翠(ひすい)を表す言葉でもあります。
また、カワセミの雌を表す言葉としても知られています。雄のカワセミは「翡」、雌は「翠」という呼び方も素敵ですね。
日本ならではの綺麗な漢字で、名前として用いられるほか、お茶の綺麗な緑色を表したいときや、春の若葉を表す言葉としても使われています。
さわやかな印象を持つ綺麗な漢字といえるでしょう。
日本の綺麗な漢字《二文字》
熟語になると新しい意味を持つ、綺麗な漢字も存在します。二文字の漢字の組み合わせを見ると、日本の言葉の美しさをさらに実感できるのではないでしょうか。
素敵な意味を持つものから、かっこいい印象を持つ漢字までさまざまです。熟語はたくさんあるので国語辞典や漢和辞典などを確認してみるとよいでしょう。
綺麗な漢字を見つけたら、ぜひ辞書にマーカー線を引くことや手帳などに書き留めるなどの工夫を試してくださいね。
季節を感じる綺麗な漢字
【花宴(はなのえん/はなうたげ)】は、文字の通り、花見の宴席を指す綺麗な漢字二文字です。
新型コロナウイルスなどが流行しているため、夜桜を見ながら燗酒を飲むというような楽しみができないのが残念ですが、その昔から花をめでながら宴を開くのはお決まりでした。
平安時代の宴は、花見をしながら歌詠みをすることだったとされています。自然の風流さが想像できるのではないでしょうか。
時間を表現する綺麗な漢字
【玉響(たまゆら)】は、「かすか」や「一瞬」を表現する綺麗な漢字二文字です。
古語として使われてきた言葉で、勾玉同士が触れ合って、小さな音を立てるその時間や音の大きさを表現しています。
触れ合った瞬間の「カチン」という音ですので、ほんのわずかな時間ですよね。ちょっとや少しという表現を音で表すのは、とても美しく感じます。
日葡辞典(日本語をポルトガル語で説明した辞典)では、玉響は「草に浮く露」を意味すると掲載されているそうです。
月の美しさがわかる綺麗な漢字
【氷輪(ひょうりん)】とは、氷のように冷たく輝く月を表現する綺麗な漢字です。
「冷たく輝く」とは比喩表現ですが、静かな夜に白く輝く満月や、触ると切れてしまいそうなほど切っ先が鋭い三日月などが当てはまるでしょう。
冷たさを色で表すと黄色より白をイメージします。また、鋭さや静かさなども「冷たさ」に近いことでしょう。
このように漢字二文字だけでその状態を表現できるとは日本語の奥深さを感じます。
黒色を表す綺麗な漢字
【漆黒(しっこく)】とは、黒色を表す綺麗な漢字ですが、漆を重ねて塗ったような深くて艶のある黒色を意味する熟語です。
硬質なものの色を表現するとき用いられます。日本語にはこれに近い「濡羽色(ぬればいろ)」がありますが、似て非なるものです。
濡羽の場合は、日本女性のツヤのある黒髪を表現するときに使うそうです。単純に「黒」を表現するだけでも、言葉がたくさんあることに驚かされます。
雨の状態がわかる綺麗な漢字
【驟雨(しゅうう)】は、突然降りだし少しの時間が経過した後にやむ雨を指す綺麗な漢字です。夕立やにわか雨をさす熟語とも言えます。
自然に関する言葉も二文字で表せるのは素敵ですね。「驟(しゅう)」の漢字の意味が分かると、「夕立」などが連想できます。
最近では瞬間的に激しい夕立もわかりやすく「ゲリラ豪雨」と置き換えられるようになり、このような美しい日本語が使われなくなっていることに若干さみしさを覚えます。