本記事は、井上ヨウスケ氏の著書『38歳までに受けたい「甘くない」お金の授業―― ビターな現実に打ち勝ち、人生を9割ラクにする方法』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
年金受給額を1.84倍にする方法とは?
今現在、65歳が年金の支給開始年齢となっています。しかし、望めば60歳から受け取ったり、75歳まで受け取りを先延ばしすることが可能です。
65歳から受け取るはずの年金を、65歳よりも早く受け取ることを「繰り上げ受給」と言います。反対に、65歳から受け取るはずの年金を65歳以降へ受け取りを遅らせることを「繰り下げ受給」と言います。だったら、「早く受け取る方が得じゃん」となりそうですが、これがそうでもなくて、よくできている仕組みなのです。
「繰り上げ受給」をすると年金額は減額され、「繰り下げ受給」をすると年金額は増額されます。増減する金額は後ほどお話ししますが、「いつ受け取りを始めても、平均的な死亡年齢まで生きた場合の受取総額が同じ金額になる」ように調整されています。薄く長く受け取るか、濃く短く受け取るかの違いでしかありません(図29参照)。
出典:増減されるこの割合ですが、繰り上げ受給の場合1ヶ月につき0.5%減額されます。減額される割合は、早く受け取った年の年金額だけではなく、将来にわたりずっと減額が適用されます。
たとえば、60歳から年金を受け取るとします。減額割合は、0.5%×12ヶ月×5年= 30%です。仮に本来の年金額が 100万円なら70万円となります。この70万円の年金を60歳から亡くなるまで ずっと受け取ることになります。
反対に受け取りを遅らせる繰り下げ受 給の場合、1ヶ月につき0.7%増額さ れます。最長75歳まで受け取りを遅らせることが可能です。もし75歳まで繰り下げた場合、「0.7%×12ヶ月×10年=84%」となります。
仮に本来の年金額が100万円だとすると、184万円となります。この184万円の年金を亡くなるまでずっと受け取ることになります。この繰り下げ受給が、僕たち世代にとってはポイントだと考えています。年金は損得ではないと言いましたが、あえて損得の面から考えてみましょう。75歳まで繰り下げ受給しても80歳で亡くなれば繰り下げ受給した方が損をすることになります。
しかし、反対に長生きした場合、繰り下げ受給した方が圧倒的に得をすることになります。本来の年金額100万円の例をベースに考えてみましょう。
60歳から繰り上げ受給をして、70万円の年金を80歳まで20年間受け取ると、合計1400万円となります。反対に繰り下げ受給し、75歳から受け取った場合、184万円の年金を5年間受け取ると、合計920万円となります。80歳まで生きると仮定すると、繰り上げ受給の方が得になりました。
でも、これが85歳まで生きる、と仮定するとどうなるでしょうか? 繰り上げ受給の場合は、1750万円(70万円×25年) です。一方、繰り下げ受給の場合1840万円(184万円×10年)となり、損得が逆転しました。当然、長生きすればするほど、繰り下げ受給の方が総受給額は多くなります。
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