2017年1月から20歳以上60歳未満のすべての人が利用できるようになった個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」。2016年末には30万人強だった加入者は、2018年末には112万4,329人に増え、着実な広がりをみせています。
一方、投資を始めたいと考えている人の中には、普通に証券会社に口座を作って投資するのと何が違うの?と思う人もいるのではないでしょうか。今回はイデコの口座と一般の証券口座の違いをご紹介します。
税金面では圧倒的にお得
掛け金を拠出するだけで税金が軽減される所得控除
皆さんが普通に証券会社で投資を始める場合、給料の一部を運用資金にすると思いますが、給料は受け取る時点ですでに税金(所得税・住民税)が引かれています。一方、イデコを利用して資金を運用すると、その掛け金に対しては所得税や住民税がかかりません。
例えば、所得に対して税金が20%かかっている人であれば、イデコで10万円運用した場合、10万円の20%である2万円の節税効果があります。年末調整や確定申告で金額を申告すれば、税金が還付されます。
正確には税金がかからないのではなく、60歳以降に年金や一時金として受け取る際にかかります。ただし、そのときは「退職金」や「年金」としての税金がかかり、給料にかかる税率より安くなるか、税金自体がかからない場合もあります。
運用益がかからない
証券会社の一般口座や特定口座で投資を行う場合、利益に対して20.315%(復興特別所得税を含む)の税金がかかります。例えば、100万円の資金を運用して150万円に増やし、それを売却して利益を確定した場合は、利益である50万円に20.315%の税率がかかり、10万円強が税金として差し引かれます。
しかし、イデコ口座で利益が出た場合、その利益に税金はかかりません。上の例だと50万円がそのまま資産として残ります(ただし、保有している投資信託を売却して利益を確定させる際に手数料が発生する場合があります)。
このように、税金のことを考えればイデコは普通に証券口座で投資を行うより、とても有利な制度です。
老後資金の用途以外には使えない
60歳までは原則として引き出せない
確定拠出年金は名前に「年金」とついていることからもわかるように、老後のため資金を貯めることが本来の目的であり、原則として60歳までお金を引き出すことができません。そのため、30代や40代の方で住宅ローンの頭金や子供の教育費にイデコのお金を使う、という使い方ができない点には注意が必要です。
一方、証券口座で株式や投資信託を運用している場合、基本的にはいつでも現金に変えることができます。すぐに現金化できたりお金を引き出せたりできる性質のことを「流動性が高い」といい、投資商品の特徴を判断する上での大切な要素の一つです。
逆に、イデコは流動性が低いからこそ、その分、税制で優遇されているともいえます。
強制的に貯蓄が増えるメリットも
投資をして利益が出ると、やはりうれしくなるものです。ついつい「儲かったから……」と少しぜいたくなものを買ったり、ご褒美に海外旅行を考えたりする人も多いのではないでしょうか。もちろん、たまにはリフレッシュも必要ですが、自分のご褒美が増えると当然お金は貯まりません。
イデコの口座にあるお金は60歳までは引き出せないため、急な出費があるからといって使うことはできません。とはいえ、逆に無駄遣いや衝動買いに使ってしまう心配がなく、確実にお金を貯めることができる点はメリットであるといえます。
結局、個人型確定拠出年金は利用すべき?
老後資金を貯めたいなら利用を考えよう
イデコは老後資金を作るという点では、最も優れた方法の一つです。今後ますます少子高齢化が進み、公的年金が減っていくことが予想される中、自分自身で老後に備える必要が出てきます。収入が安定している方や老後資金が心配な方は、利用を考えてみると良いでしょう。
ライフイベントが多いなら額を少なく
イデコは途中でやめることができないので、収入の変化が予想される人や今後予想されるライフイベントが多い人は、いつでも現金にして引き出せる証券会社の口座で運用する方が合っているかもしれません。
例えば、妊娠・出産で収入が減りそうな人や、転職や独立企業を考えており今後の収入がどうなるかわからない人は、イデコを利用する場合でも掛け金は少なめにしておきましょう。
老後資金も自分で準備する意識が必要
個人型確定拠出年金は運用においては有利なメリットが多いものの、用途は老後資金の蓄積に絞られます。証券口座で投資をすると、税金は多く引かれる一方で、いつでも引き出せていろいろな用途に使えるというメリットがあります。
どのような目的でお金を貯めるかにもよりますが、老後資金は誰にでも必要になるもの。いずれの方法であっても、早くから自分で準備していく意識が大切です。
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