原宿の賑やかな大通りから1本入った裏路地にある『kiki harajuku(キキ ハラジュク)』。フルーツをふんだんに使ったコース料理が話題を呼んでいると聞き、伺ってきました。
取材当日は平日で、ランチもそろそろ終わる15時頃でも店内はほぼ満席。壁一面ガラス張りの店内は明るく、キッチンのあるカウンター内とホールの間でスタッフは声を掛け合いながら忙しそうに動きまわっていて、活気のあるお店というのが第一印象でした。
フランス料理とフルーツの関係
『kiki harajuku』はクラシックなフランス料理をベースに、フルーツを使った創作フレンチと日本のワインをカジュアルなスタイルで楽しめるお店として、今人気を博しています。
オーナーシェフの野田雄紀さんはフランスをはじめ国内外で修行を積んだ実力派。フルーツを料理に多用するようになったのは、「もともとフランス料理にはフルーツを使うことがよくあるので、フルーツの料理にはもっと可能性があるはず!」と思ったことがきっかけだったそう。
「日本ではフルーツは生食する習慣が根強いので、フルーツを使った料理に抵抗がある人も多かったのでは?」というこちらの質問にも、「意外な組み合わせでも食べておいしいとわかれば、みなさん気に入って下さるんです」と野田シェフは笑顔で応えてくれました。
そして、案の定、野田シェフのフルーツをふんだんに使った料理は、多くのメディアでも取り上げられ評判となりました。
日本のワインとマリアージュ
現在『kiki harajuku』で扱うワインは日本のワインのみ。その理由を野田シェフは「以前はヨーロッパのワインも扱っていたのですが、僕の料理には日本のワインの方が合うと思うんです。日本のワインはヨーロッパのワインのような強さや派手さはないけれど、料理をサポートしてくれる。料理とペアリングすることで料理もワインも活きてくるんです」と教えてくれました。
確かに、日本人が造る日本のワインは総じて繊細な味わいのものが多いので野田シェフの造る料理との相性が良さそうです。
1皿ごとに驚きと感動があるお料理とワイン
さっそく、ランチのコース料理に合わせてワインのペアリングもお願いしました。
コースの最初の1皿は大きな黒いボックスでサーブされます。どんな料理が出てくるんだろう!と、ワクワクする気持ちはレストランで食事をするときの大きな楽しみですよね。
ボックス開けると、目にも美しいテリーヌとふんわりと香る青海苔の香りに思わず顔がほころびます。テリーヌの中には江戸前のかますとフォアグラが入っていてなんとも贅沢です。けれども、想像するよりずっとさっぱりとした味に仕上がっているのは、フォアグラを日本酒でしっかりとマリネしているからだそう。
合わせるワインはスパークリングワイン。山梨県の老舗ワイナリー「ルミエール」のスパークリングワイン『ORANGE』。フランスのシャンパンと同じ瓶内2次発酵の製法で造られています。いきいきとした泡は胃の中を刺激して食欲を増進させるとともに、今から食事を楽しむ気分を盛りあげてくれるよう。
2品目はなんとそうめん!ビストロでそうめんが出てくるとは驚きです。でも、ふんわりとそうめんを包んだ湯葉のスープの上には、肉厚のマッシュルームやちょっと苦みのあるハーブのセルバチコがあしらわれており、それが優しい味わいのスープにボリューム感を与えています。
柿のおかき揚げは、金山寺味噌をつけていただきました。そうめんのやさしい味、鰹出汁の旨味、柿の甘味、おかきの塩っぱさ、味噌のコク、1皿でいろんな味が楽しめます。
ワインは澱(おり)といっしょに熟成させたコクのある白ワインと。完熟したシャルドネを原料に造られた神戸ワイナリーの『Bénéciction Blanc 2015』グラスよりおちょこでいただくと口当りがよりまろやかに。まるで日本酒のよう!湯葉のスープに効かせた鰹出汁の旨味と、澱からくるワインの旨味がぴったりと合いました。
3品目の色鮮やかなサラダはフルーツとトマトとクリームチーズのカプレーゼ。早生みかんやトマトの酸味と、ココナッツ風味のクリームチーズとマンゴーのクリーミーな甘味が絶妙のバランスです。小さな橙色のほおずきは甘酸っぱくて、懐かしい味。ギリシャのオリーブやレーズンがしっかりアクセントになっていました。
ワインはジューシーなロゼ。食用ブドウ7種をブレンドした北海道の藤野ワイナリーが造る辛口ロゼワイン『KOHARU 2017』をいただきました。苺やクランベリーのようなフルーティーな香りと酸味が特徴で、カプレーゼの瑞々しさとのマリアージュを存分に味わえます。
メインディッシュは鹿肉です。鹿の尻と太ももの間の貴重な部位しんたまをにんにくとバターでソテーしながらゆっくりと火を通した逸品。付け合わせは、粉を使用せずに栗やポルチーニで作った甘くないワッフルに、いちじくバターと生のいちじくをのせ、小豆のソースでいただきます。
ワインは長野県、楠ワイナリーの『Passage Rouge 2013』カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フランのブレンドを。やわらかいお肉とほうれん草のソテーの程よい苦み、そしていちじくの青っぽいニュアンスはボルドーブレンドの赤ワインと好相性。タンニンもしっかりあるけれどスルスル飲めるところが良質な日本の赤ワインの特徴です。
近くにあるおいしい食材を使ってリーズナブルに
料理の説明からもおわかりいただける通り、野田シェフの料理はどれも非常に手が混んでいます。これだけ手の混んだ、それも選び抜かれた食材を使ったコース料理がランチとはいえ2,800円(税抜)でいただけるとはなんともリーズナブルです。
「通常、日本でフランス料理を作る場合フランスから輸入された食材を使用することが多いのですが、僕は遠い国で誰が作ったかわからないものよりも、身近にある新鮮でおいしいものを使いたいと思っています。顔の見える生産者さんのすばらしい食材が日本にはたくさんありますから。それに、輸入食材は関税もかかりますし、円安などの影響を受けるとどうしても高価になってしまうので」と野田シェフ。
もっと気軽にビストロを楽しんでもらいたい、という野田シェフの熱い思いは食材選びから一貫しているのです。
いつでも食べられるビストロ
『kiki harajuku』ではコース料理の他にカレーやグラタンなどの1品料理も充実しています。正午のオープンから23時までの通し営業のため、食べたいとき、行きたいときに気軽においしい料理が食べられるのが魅力。また、野田シェフが静岡出身とのことで日本茶を使ったドリンクのメニューも豊富で、お茶とスイーツのみの利用も可能です。
旬を大切にした季節の食材を取り入れたコースのメニューは、2ヶ月毎に変更されます。今回ご紹介したメニューは11月中旬までの予定なので、今後どんなフルーツや食材を使った料理がいただけるのか楽しみです。フルーツ好きならずとも、野田シェフのオリジナリティ溢れる料理はきっと目も舌も楽しませてくれることでしょう。ぜひ気軽に訪れてみてくださいね。
■お店情報
BISTRO kiki harajuku
住所:東京都渋谷区神宮前6-9-9 アヴニール表参道1F
電話:070-3882-3150
営業時間:12:00〜23:00
定休日:水曜日
※ランチは17時まで、ディナーは17時から。
メニューはお店のサイトからも確認できます
※最新情報はお店のHP,Instagramをご確認ください。
※取材当時の内容となります。
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