高倉町珈琲は、すかいらーくを創業した横川竟氏が立ち上げたカフェ・レストランです。

リコッタパンケーキを始めとした、こだわりの美味しいメニューやシックでゆったりとした居心地のよい空間が人気を呼び、昨今のコロナ禍でも「高倉町珈琲は、安心してくつろげる!」と足しげく通う人も多いとか。

その高倉町珈琲には、「いい人が、いい店を作り、いい会社ができる」という考え方があり、人の育て方も大切にされているそうです。今回は、高倉町珈琲の人事部長の辰巳正吉さんに、その考え方の真意や人の育て方について、詳しくお伺いしました。

辰巳正吉 Masayoshi Tatsumi
株式会社高倉町珈琲 執行役員 人事部長
1956年生まれ 奈良県出身1979年、大学卒業後、株式会社すかいらーくに入社。東京、九州にて店長、スーパーバイザーとして勤務した後、人財開発部、新業態事業部責任者として経験を積む。1999年、ワタミフードサービス株式会社(現ワタミ株式会社)に転職。営業部長を経て新規事業関連会社で営業本部長、その後ワタミホールディング会社にて、ビジネスサービスグループ(人事・総務)グループ長。2014年、株式会社高倉町珈琲に入社。新規開発の業態にて新店店長を経て、現職。

レストランの「楽しさ」「豊かさ」「手作りの美味しさ」を追求

【辰巳正吉さん】コロナ禍でも人気の高倉町珈琲!「いい人がいいお店を作る」その人材の育て方とは!?
(画像=Cafendより引用)

──高倉町珈琲とはどういうお店なのか、改めてご紹介いただけますか?

高倉町珈琲は、すかいらーくの創業者でもある横川竟会長が、「今一度、『外食の魅力』をお客様に伝えたい」と立ち上げたものです。横川がすかいらーくの社長を辞任したのち、2013年に八王子の高倉町に一号店を開きました。現在は関東を中心に32店舗を展開しています。

──お客様に伝えたい「外食の魅力」とは、具体的にはどういったものでしょうか?

外食やレストランの本来の役割は「楽しさ」「豊かさ」「手作りの美味しさ」の提供だと考えています。そうした魅力を、今一度、お客様に味わっていただきたい、ということですね。

そもそも創業者の横川が、すかいらーくを立ち上げたときも「町には、ただおなかを満たす『食堂』はあっても、楽しさや豊かさを感じさせる『レストラン』がない。ないなら、自分たちで作ろう」といったところからスタートしています。

そうして1970年代に創業したすかいらーくは時代背景もあって急成長しました。ただ、バブル崩壊後、平成30年間のファミリーレストランは、低価格の商品を作ることに注力せざるを得ませんでした。業界全体がそうした低価格へと走ったあまり、省かれてきたものがあります。それが、手の込んだ料理や丁寧な接客といったものでした。

──その省かれてきたものを、高倉町珈琲では追求しようということですね?

はい。料理についても、コストカットを理由に使いたい材料や調理法を犠牲にしない。多少ファミリーレストランより高くても「この味ならこちらがいい」と言ってもらえるものを目指しています。接客についても、機械的にしないで、人にしかできない気配り、目配りといったことを大切にしています。

レストランには本来、美味しい料理だけでなく、おもてなしがいいとか、席が広々として居心地がいいといった価値も大切だと思っています。価格で勝負するのでなく、そうした価値の提供にこだわっています。

──お料理や接客、空間などトータルでのおもてなしを追求されているのですね。高倉町珈琲さんは、このコロナ禍でも安心してくつろげるお店として人気だと聞いています。

高倉町珈琲は、そもそも開業時に「今の時代、楽しくゆっくり休める店がないので、そうした空間を作ろう」ということで、座り心地のいい椅子を用意するほかに、席を広く、天井を高く、空気の入れ替えもよくするということにこだわりました。それが、コロナ対策にもちょうどよかったようです。

マスクケースを配布するなどの対策もしていますが、そうした空間への配慮なども、コロナ禍でも安心して過ごせるということにつながったのだと思います。

いい人がいればいい店ができる、いい店ができればいい会社になる

【辰巳正吉さん】コロナ禍でも人気の高倉町珈琲!「いい人がいいお店を作る」その人材の育て方とは!?
(画像=Cafendより引用)

──料理や接客面でのこだわりは、従業員の働き方に直結すると思うのですが、どういった風に人を育てているのでしょうか?

社員にもクルー(高倉町珈琲ではパートさんやアルバイトさんをクルーと呼ぶ)にも、「なぜこの会社やこの店を作ったのか」という理念や思想をしっかりと共有してもらうようにしています。理念を言葉で伝えるのはなかなか難しいのですが、時間をかけて、しっかりと話をします。

理念や思想が先にあれば、技術や知識、経験はそのあとでもついてきます。「心」の部分の理解がないと心のこもったおもてなしはできませんから、その部分の共有は重視しています。

──具体的にはどういうことでしょうか?

昨今のファミリーレストランに代表される店はとかくシステマティックになっています。極論を言うと誰でも一定の商品を作れますし、一定の接客もできますが、基本、言われた通りにやるだけです。それ以外の余計なことはやりませんし、やってはいけないという風潮さえあります。

われわれのしようとしているのは、そうした機械的なことでなく、人でしかできないおもてなしをしっかりとやることです。

今では接客も、お客様の鳴らす「ピンポン」というオーダー音に反応して動くケースが多いです。でも本来は、お客様に目配りをして、「食事がそろそろ終わるな、デザートやお飲み物を用意しないといけないな」と担当者が気づくのが理想なんですね。

──確かにそれは、人ならではの心配りですね。

そうした目配り気配りといったものには、スタッフひとりひとり、その人ならではの良し悪しが出るんですね。そして、それはその店の良し悪しにも大きく影響します。

大事なのは、言われるままに動くのでなく、自分がお客様であればどうしてほしいかをその場その場で考えたり、判断したりすることです。

私たちは社員やクルーがそれぞれにそうした判断ができるよう、「会社はこういうことを大切にしていて、こういう風にしたいと考えている」ということをしっかり伝えるようにしています。それに社員やクルーが、共感できたうえで、仕事をするのがよいかなと。

高倉町珈琲の基本的な考え方に「いい人がいれば、いい店ができる。いい店がたくさんできればいい会社になる」というものがあります。人が価値を作るという考え方です。

だから、いい人にいてもらいたい。『いい人、いい店、いい会社』この順番を間違えてはいけないと思っています。

人が価値を作る店であり、人が価値を作る企業でありたい。ですので、会社としては、ひとりひとりがどうやったら、この会社にロイヤリティを感じて、長くがんばってくれるか、そのために制度や環境をどう作っていくかを常に考えています。

制度はまだまだこれからですが、これからも相当、力を入れていかないといけないなと思うところです。

アルバイトやパートにも決算賞与や持ち株を

【辰巳正吉さん】コロナ禍でも人気の高倉町珈琲!「いい人がいいお店を作る」その人材の育て方とは!?
(画像=Cafendより引用)

──制度はまだまだとおっしゃいますが、高倉町珈琲さんは、従業員に様々な利益を還元する制度を確立されていると伺いました。

基本的な考え方としては、アルバイト、パートさん含めてみんなで幸せになりましょうというのがあるんですね。

そこで、利益の三分割をしています。年度決算で利益が出たら、3等分して、3分の1は決算賞与として社員やクルーに分配します。もう3分の1は、いわゆる株主配当です。なるべくみんなに行き渡るよう、一定の資格を得ればクルーの方でも株が買えるようになっています。残りの3分の1は社内留保です。

──クルーの方も決算賞与がもらえたり、自社株を持てるというのはすごいですね!

従業員持ち株制度は3年前に作りました。上場を目指しているので、上場するとすごいことになると思いますよ(笑)

──それはすごいです! 夢がありますね。

いい人にはとにかく長く勤めてもらいたいので、頑張った分だけ自分たちに返ってくるという仕組みを作っていきたいと思っています。おかげさまで飲食店の中ではスタッフの定着率がいい方だと思います。

──さらに独立支援制度もあると聞いています。

社員の独立支援制度も4年前に作りました。日本の外食業界ではフランチャイズビジネスはなかなか定着しないんですね。代表的なものではコンビニとかラーメン店とかありますが、レストラン規模のものは難しい。投資額が大きいのと、従業員をある程度抱えないといけないので、マネジメントの力も必要になります。また、昨今は特にロイヤリティがどんどん高くなっているんですね。

ですから、われわれは独立の際の資金面のハードルは低くしています。その制度を使って独立すれば、例えば加盟金も保証金も300万円、それだけです。ロイヤリティも売上高の5%だけですから、ほかにはない魅力だと思います。

──そうした独立支援をされるのは、外食産業に危機感を覚えていらっしゃるからですか?

そうですね。独立したくてもできない環境になっていますから。フランチャイジーになった人は一生かけてやるわけなので続かないと意味がありません。世の中には、続かなくても入れ替わりで新しい人が来る、そうした方がお金になる、というフランチャイザーもいます。

われわれは、出店する店舗のクオリティを低くするのでなく、あくまで資金面のハードルを下げて、長続きするような仕組みを作ることが大切だと思っています。