日本の伝統文化を通して、深い心の学びを促してくれる神社の世界。巫女ライター・紺野うみが、おすすめしたい各地の素敵な神社とその御朱印をご紹介します。今回は、実に1900年余の歴史を誇る、東京都文京区の「根津神社」。東京の下町に鎮座し、どんと構えて世の中を見守り続けてきた、江戸の文化が残る神社です。
■1900年前、日本武尊が創祀したと伝えられる神社
東京の下町・根津(ねづ)。
この周辺の地域は、谷中・根津・千駄木をまとめて、通称「谷根千(やねせん)」と親しまれ、日本の懐かしい雰囲気が残されています。
こちらに鎮座する「根津神社(ねづじんじゃ)」は、およそ1900年も前に、「日本武尊(やまとたけるのみこと)」が千駄木の地に創祀したと伝えられる、由緒ある神社。境内を歩くだけで、その長い歴史にロマンを感じることのできる場所です。
この神社を創祀したと言われている「日本武尊(やまとたけるのみこと)」そのものが、優れた武神として神話の英雄でもあり、日本各地の神社でお祀りされている神様です。
この地はこれまで、幾多の空襲・震災・火災の難を逃れてきました。その事実を知ると、人々が根津神社に寄せる信仰や信頼、そして、この場所に宿り続ける確かな力も感じられる気がします。
総称して「根津権現(ねづごんげん)」と呼ばれているこちらの主祭神は、「須佐之男命(すさのおのみこと)」「大山咋命(おおやまくいのみこと)」「誉田別命(ほんだわけのみこと)」の三神。
さらに、相殿(あいどの=主祭神以外にも合わせて神様をお祀りすること)には、「大国主命(おおくにぬしのみこと)」や「菅原道真公(すがわらのみちざねこう)」もお祀りされています。
どちらの神様も有名で力のある雄々しい男神であり、総合して厄除けや勝運にお力を貸してくださるとして、長く親しまれてきました。
根津神社が数多くの災害や戦火の被害に遭わず、ここまで残り続けていることからも、これらの神様方がその災いを退けているからこそだと言えます。
社殿の雰囲気も、見事な貫禄と懐の深さを感じさせてくれます。境内では、いつも多くの参拝者が思い思いに、ゆっくりと心地よさそうに過ごしている様子が見られます。
■300年前の江戸時代に生まれ、今も美しく残される社殿
根津神社には、朱塗りが美しい重厚な社殿が、本殿・幣殿・拝殿・唐門・西門・透塀・楼門の7つ、今なお残されています。
これらは、江戸時代に五代目将軍・徳川綱吉が、兄・綱重の子である綱豊(=六代目将軍・徳川家宣)を養子とし、綱豊が江戸城に移る際、その氏神社である根津神社の社殿大造営を行った際のものです。この社殿ができてから、根津神社は現在の場所に御遷座されたという歴史があります。
300年以上も前の建物が、現代までひとつも欠けることなく、寸分の狂いなく同じ場所にあり続けているということには、揺るぎない神様のお力と御神徳を感じずにはいられません。
これらの建物は、国の重要文化財として、今なお大切に受け継がれています。また、明治維新の時代には、明治天皇が江戸を「東京」として政務を行うにあたり勅使を遣わされ、この神社で国家安泰の御祈願を修めらたという御由緒も。
神社というのは、その多くがとても長い歴史を持っています。それぞれの時代を生き、その土地にご縁をいただいた人々にとって、その存在は確かに心のよりどころとなってきました。
日本各地に素晴らしい神社が数多く残されているのは、日本人が時代を越えて、人から人へとつないでいった証に他なりません。根津神社は、そんな壮大な時代の流れとロマンを間近で実感できる、かけがえのない場所なのです。
■女性守護の優しい神様「乙女稲荷」
この神社には、力強い男神とともに、優しさと華やかさを感じさせる「乙女稲荷神社(おとめいなりじんじゃ)」が鎮座されています。こちらの神様は、そのお名前が表現する通り、女性守護と縁結びの御神徳で親しまれてきました。
こちらのお社があるのは、池の上にせり出す舞台のような、少し小高い場所。お祀りをするご神体は、岩の中に包まれている珍しいかたちです。それが「胎内」を思わせるということも、女性にゆかりの深い神社と伝えられる由縁のひとつになっています。
乙女稲荷神社からは、根津神社の歴史ある社殿も一望できて、ここからの眺めもまた格別です。この場所にはやわらかな女性らしい雰囲気があり、御本殿の雄々しさとはまた違った、温かな心地よさが感じられるのではないでしょうか。
稲荷大神である「倉稲魂命(うかのみたまのみこと)」は、農業や商売にもお力を貸してくださる神様です。現代社会を生きる、働く女性にとっても、きっと心強い味方になってくださることでしょう!
■三社の御朱印と対照的な御朱印帳
根津神社の御朱印は、全部で三社いただくことができます。中央が根津神社、左が乙女稲荷神社、右が駒込稲荷神社の御朱印。
こうして三社分を並べてよく見てみると、御朱印の印の字体が違うことに気づきます。その違いには、どことなくそれぞれのお社の特徴が表れているようにも思えました。
まずはそれぞれの神社にお詣りをしてその雰囲気を体感してから、こちらの御朱印をいただいてみてくださいね。
それぞれの神社の空気をしっかりと感じ取ることは、そこにいらっしゃる神様に、より心を寄り添わせることにつながっているはずです!
そして、まさに根津神社を表現しているかのような、2種類のオリジナル御朱印帳も素敵です。
雄々しい男神を連想させる、黒地に御神紋のシンプルな御朱印帳。そして美しいツツジと楼門、裏には境内の千本鳥居があしらわれた、淡く柔らかなピンク地の御朱印帳。男性にも女性にも嬉しいデザインではないでしょうか。
■写真でご紹介する、境内の見どころと授与品!
春には、この鳥居をくぐりながら、3000株ものつつじが見事に咲き誇る様子を眺めることができます。
女性の心をときめかせてくれる、美しい千本鳥居の並ぶ道が、私たちを乙女稲荷神社へと導いてくれます。
左端2つ……月次花御札(つきなみはなみふだ)より2種。全部で13種類。お花を飾るように、季節ごとに飾りましょう。
右寄り中央……つつじの幸せ鈴守。小さな可愛らしい鈴の御守りです。つつじの色には数種類あります。お好みでどうぞ。
右端……根津神社の御守り。黒地と白地で2種類あります。根津神社ならではの、つつじのお花の刺繍が素敵です。
御祭神は乙女稲荷神社と同じ神様がお祀りされていますが、また違った雰囲気のある神社です。
御眷属(ごけんぞく=神様の御使い)の狐様が背筋を伸ばして見つめあいながら、お社を守られている姿が印象的です。
地域に深く根付き、長い歴史の中で人々に愛されてきた神社では、時代を越えて確かに息づいている優しさや強さが感じられるものです。
神社という空間を「感じてみる」ということは、私たちの心をより豊かに育ててくれるのではないでしょうか。今を生きる中で、その意味や感謝に目を向ける大きなヒントが、神社のお詣りには隠されている気がしてなりません。
根津神社は、春の「つつじまつり」はもちろん、境内でそれぞれの季節を楽しむことのできる素敵な神社です。神社の周辺も情緒あふれる街並みですから、ぜひ一度足を運んでいただき、ゆっくりと過ごしてみてくださいね。
■神社基本情報(アクセス、住所、最寄駅)
【神社名】
根津神社(ねづじんじゃ)
【御祭神】
■主祭神
須佐之男命(すさのおのみこと)
大山咋命(おおやまくいのみこと)
誉田別命(ほんだわけのみこと)
■相殿
大国主命(おおくにぬしのみこと)
菅原道真公(すがわらのみちざねこう)
【境内末社】
■駒込稲荷神社(こまごめいなりじんじゃ)
倉稲魂命(うかのみたまのみこと)
■乙女稲荷神社(おとめいなりじんじゃ)
倉稲魂命(うかのみたまのみこと)
【鎮座地】
〒113-0031 東京都文京区根津3-28-9
【電話】
03-3822-0753
【最寄駅】
■電車をご利用の場合
地下鉄千代田線「根津駅」「千駄木駅」より徒歩5分
地下鉄南北線「東大前駅」より徒歩5分
都営三田線「白山駅」より徒歩10分
■バスをご利用の場合
・上58「上野松坂屋前-早稲田」のバスに乗車
→「根津神社入口」下車、徒歩1分
・上60「上野公園-池袋東口」のバスに乗車
→「根津駅前」下車、徒歩5分
・上26「上野公園-亀戸駅前」のバスに乗車
→「根津駅前」下車、徒歩5分
・草63「池袋駅東口-巣鴨駅-豊島区役所」に乗車
→「団子坂下」下車、徒歩5分
・東43「江北駅前-田端駅前-東京駅丸の内北口」に乗車
→「向丘一丁目」下車、徒歩5分
・茶51「駒込駅南口-本郷三丁目駅前-秋葉原駅前」に乗車
→「向丘一丁目」下車、徒歩5分
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