インターネットが、医療にたどり着けないメンヘラのよすが
単に、境界性パーソナリティ障害の紹介をしているだけのサイトではなく、このページでは「回復へのステップ」が記されています。私は精神科で治療中、さまざまな文献をむさぼるように読みましたが、ついぞこのサイト以上にわかりやすく、豊富で正確なデータを見たことがありません。書かれた方は医療従事者か研究者ではないかと勘繰るレベルです。
eggs.g.dgdg.jp/toikake.html
こちらは、回復の最初のステップを記したページです。この語りかけを読んだとき、私は画面の前で泣いていました。自分が、ずっとほしかった言葉が、すべてここに詰まっていたからです。私は親から見捨てられた、愛されてこなかったと感じていました。そして親を恨み、親への復讐を糧に生きてきました。
しかし、そうする必要はなかったのです。なぜなら、自分で自分を捨てなくても、良かったのだから。慰みだけではなく、サイトには詳細にわたって自分の過去を振り返り、悲しみ・怒りなどの感情を乗り越えていくステップや、いい病院の選び方、大量の参考文献が掲載されています。
先ほど述べたとおり、パーソナリティ障害は治療を受け容れてくれる病院が限られます。ましてや20年前、地方に住んでいて精神科医療へのアクセスが絶望的だった私にとって、これが唯一の道しるべでした。
Amazonもない、Netflixで精神科系のドキュメンタリーも見られない。文字しか追えないネット回線で、このサイトが「いつか私は治る」という希望を繋いでくれたのです。
境界性パーソナリティ障害への回復を目指す中、途切れた更新、そして
しかし……残念ながら、回復までの道しるべを示したこのサイトは、途中で更新が止まりました。むりもありません、書籍何冊分もの、詳しい解説が載っていたのですから。もし完成していたら、おそらく日本最大級の境界性パーソナリティ障害に関する資料となっていたでしょう。
ただ、運よく、もしくは運営者の意思によって、このサイトは今も生き残っています。当時のサイトがいくつ残っているかを考えると、驚異的なことです。当時のデータにもとづいた開設は、今となっては古い情報もあるかもしれません。スマホで見ると閲覧に耐えないレイアウトでもあります。しかし「境界例と自己愛の障害からの回復」は、今でも訪問者が絶えない伝説のサイトでもあるのです。
ただ、前提として自分で取り組めるのは、自分で自分に向き合える程度に軽症のひとに限られます。自分を心理的に分析すれば、体力は削れ、心はボロボロになります。外科手術を自分でするようなものです。「これさえ読めば治る」という処方箋ではないことは、ご容赦いただく必要があります。
それでも……。もし今、医療にアクセスできない環境で苦しむ、境界性パーソナリティ障害や、自己愛性パーソナリティ障害の方がいたら。SNSでさまよったり、「#リスカ」で同志を探したりするだけでなく「本当に回復したい」と願うなら。
このサイトは情報の海の中、いまも灯台として患者を照らし続けています。
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