株価の下落によって、投資家や富裕層は少なからず影響を受けていることでしょう。実は株価が下落したときは、相続税対策のチャンスです。ハイリスクな節税対策をしなくても、税務上の評価方法の違いを活用するだけで、贈与税を節税しながら相続税対策を進められる可能性があります。
相続税対策が進んでいる人・進んでいない人
相続税対策の状況は、人によって大きく異なります。事業や投資のことならまだしも、相続税のことは気心の知れた友人関係でもなかなか話題にはなりません。そのため、周りがどのぐらい相続税対策を進めているか、よくわからないという人も多いでしょう。
相続税対策の状況は、おおよそ次のように分けられます。
1.相続税のことが気になりつつも、まだ対策を始めていない人
2.税理士やコンサルタント、友人のすすめで毎年110万円の贈与をしているが、それ以外の相続税対策の選択肢はよく知らない人
3.不動産投資や生命保険、養子縁組などさまざまな相続税対策を必要に応じて活用済みの人
今回紹介する株価の下落を活用した相続税対策は、1~3のどの状況の人でも活用できます。
株価下落時にできる贈与を活用した相続税対策
現預金の場合、贈与した金額がそのまま財産の評価額となり、贈与税率をかけて贈与税を計算します。これが株式の場合、時価で評価されます。つまり、株価が下落しているときに贈与することで、多くの株式を贈与できる可能性があるのです。
具体的には、上場株式の評価額には、下記の4つの金額のうち最も低い金額が適用されます。
1.贈与する日の終値(その日の株式市場が閉まった時点の金額)
2.贈与する日が属する月の毎日の終値の平均額
3.贈与する日が属する月の前月の毎日の終値の平均額
4.贈与する日が属する月の前々月の毎日の終値の平均額
例えば、贈与税がかからない基礎控除110万円の範囲内で贈与を実行する場合を考えてみます。時価22万円の株式なら5株しか贈与できませんが、時価が11万円に下落していれば、10株贈与できます。将来的に株価が元通りの水準に回復したとしたら、2倍の金額を贈与できたことになるのです。
例外はありますが、歴史的に見れば、株価が将来的に回復する可能性は高いといえるでしょう。株価が下落したときは、贈与によって財産を移転し、相続税対策を進めるチャンスでもあるのです。