20代の人たちにとって老後はまだまだ遠い先の話でしょうか。しかし、まだ先だからこそ老後に向けて有利なこともあります。生命保険文化センターが18~69歳の男女約4,000人を対象に全国で実施した2019年「生活保障に関する調査」では、老後生活の不安内容(複数回答)について2番目に多かった「日常生活に支障が出る(57.4%)」といった健康面の不安を抑えて、「公的年金だけでは不十分(82.8%)」という金銭面での不安がトップでした。今、20代の人の中にも「公的年金なんてあてにならない」と考えている人もいるのではないでしょうか。そんな20代の人が今から老後資金づくりを始めるなら、老後が間近な40代50代よりとても有利なことをご存じですか?

20代から老後資金の運用なんてまだ早い?

220代から始める老後資金の運用。一体何から始めればいいの?
(出典:厚生労働省 「2019年 国民生活基礎調査」より)
(画像=『UpU』より引用)

厚生労働省が実施している「国民生活基礎調査」(2019年)によれば、世帯主が20代以下の世帯当たりの平均貯蓄額は179万8,000円となっています。これに対し、一般的に定年となる60代の世帯では1,461万7,000円でした。

老後資金が足りない?

一時、老後資金2,000万円不足問題が話題となりました。これは男性が65歳以上、女性が60歳以上の平均的な夫婦では、年金収入のみに頼った生活設計だと毎月約5万円の赤字が出ることにより、老後の期間を30年とすると、年金以外に定年時に約2,000万円の貯蓄が必要という試算結果をもとにした問題でした。

先の調査結果では60代の世帯でもその2,000万円の金額まで届いていません。約500万円不足しています。20代以下の世帯の平均貯蓄額は約180万円ですが、そこから2,000万円を貯めるにはあと約1,820万円が必要となります。

なお、ここで2,000万円不足問題を取り上げましたが、老後にいくら必要になるのかは、もちろん人によってさまざまです。ライフスタイルや家族構成によっても数字は大きく変わってくるでしょう。そのため、どういう人生を歩んでいきたいか、どういった生活をしていきたいかを具体的にしていくライフプランづくりも大切になってきます。

ただ、ここでは20代の人たちにとってはまだ少し遠い先のことを考えるための、1つの目安としてとらえておいてください。

老後資金を貯めるには毎月いくら積み立てが必要?

20代の人が約1,820万円を30代、40代、50代の30年間で貯めるには、単純計算毎月約5万円の積立が必要となります。貯まったお金に一度も手をつけることなく30年間ずっと貯め続けてです。

上で参照した「国民生活基礎調査」(2019年)によれば、1世帯当たりの平均所得金額は552万3,000円。より実態に近いと言われる中央値では437万円でした。中央値で考えると、毎月5万円、年間で60万円を貯蓄しようとした場合、中央値437万円に対して貯蓄率は約14%になります。中央値以下の家庭ではさらに貯蓄率を上げる必要があります。

320代から始める老後資金の運用。一体何から始めればいいの?
(出典:厚生労働省 「2019年 国民生活基礎調査」より)
(画像=『UpU』より引用)

しかし、20代の人には定年まで30年以上ある期間も、30代、40代の人となるとその期間はさらに短くなります。もし20年間で同様に1,820万円を貯める必要があるとすると、単純計算で毎月約7万6,000円の積立が必要です。このことからも、長く時間を取れる20代から資産づくりを始めたほうが有利なことがわかります。

資産運用すると毎月の積立負担も軽くなる?

老後までに2,000万円を貯めようとすると、20代でも毎月約5万円の積立が必要であることわかりました。2021年1月現在の大手都市銀行の定期積立預金では年利0.002%なので、これをもとに計算すると30年間毎月5万円の積立を行っても、積立総額1,800万円に対して、この積立期間中の利息総額は約5,000円です。積み立てた元本以外に、ほとんど増えないことがわかります。

では、これを投資信託などへの積立で資産運用した場合はどうでしょうか?投資信託とは株式や債券などの金融商品を組み合わせて作られた金融商品のパッケージ版とも言えます。

仮に積立投資を行う対象の投資信託の運用利回りを年利5%とします。簡易的に手数料などの諸経費は考慮しません。それを30年間、毎月5万円を積み立てた(複利運用)場合の試算結果は、積立投資総額1,800万円に対して、積立期間中の運用益は約2,294万円にもなります。

投資総額と運用益を合わせて約4,094万円となり、老後資金2,000万円不足問題は大きく解消され余裕のある老後を送れることになるかもしれません。

一方で、老後資金としてあくまで2,000万円準備できればよいのであれば、同じように投資信託での積立で資産運用することにより、毎月5万円の積立は必要ないかもしれません。

毎月5万円の積立での試算結果で総額約4,000万円になるわけですから、毎月の積立を半分の2万5,000円にしても、30年間で運用利回りを5%と仮定した場合、総額で2,000万円になることがわかります。

このことから資産運用をすることで、毎月の積立負担も減らせる可能性があることが見えてきます。

なお、今回の試算で用いた5%という運用利回りは銀行の預金金利からすると信じられないくらい高いように感じますが、投資対象となる株式の世界では現実的な数字です。

実際、1973年から2018年までの約45年間の米国のS&P500指数(米国の代表的な企業500社の株価をもとに算出)の平均利回りは7.1%という試算結果もあります。

資産運用って必ず利益が出るの?損はしないの?

もちろん投資にはリスクがあり、そのリスクのひとつに「価格変動リスク」があります。たとえば投資信託に組み入れられている投資対象の株式や債券などは値上がりする場合もあるが、値下がりする場合もあるということです。結果、投資信託に投資することで利益が出ることもありますが、損失を被る場合もあります。

それでも、20代の人であれば、長い期間投資できる「時間」が味方になります。

以下の図は、金融庁が2017年2月に公表した「積立NISAの創設」に関する資料の一部です。この資料の説明では、国内外の株式・債券に分散投資した場合、その保有期間が5年の場合は損失の出る場合があるが、保有期間が20年の場合では投資収益率2~8%(年率)に収斂する、つまり「利益が出る」といった試算結果の説明になっています。

つみたてNISAの非課税期間の設定が最長20年間なのも、このことが根拠のひとつになっているようです。

420代から始める老後資金の運用。一体何から始めればいいの?
(出典:金融庁 2017年2月 積立NISAの創設より)
(画像=『UpU』より引用)

資産運用に価格変動リスクはありますが、20代であれば、ここでも長期の投資期間を味方につけることで、その価格変動リスクを抑えることができることがわかります。また投資信託は株式や債券などを組み合わせた商品なので、投資信託に投資することで分散投資も図ることができます。

資金の運用方法にはどのようなものがあるの?

520代から始める老後資金の運用。一体何から始めればいいの?
(画像=綾香-間瀬/stock.adobe.com,『UpU』より引用)

では、実際に20代の人が老後資金のために資産運用するにはどのような方法があるのでしょうか? 長い期間をかけてリスクを抑えながら分散投資するのに適した方法のひとつとして、投資信託への積立投資があるかと思います。投資信託への積立投資をすることで、投資対象の分散や、投資タイミングの時間的な分散を自動的に図ることができます。

また、投資信託の中には「インデックス型」と呼ばれるものがあります。対象となる指標(たとえば日経平均やS&P500指数など)と連動して基準価額が動くため、ほかの種類の投資信託と比べて、仕組みや値動きがシンプルなものが多いので、20代の投資初心者にも向いていると言えるでしょう。