瀬戸内の島々は近年アートのある場所として世界的にも注目を集めています。その中でも犬島は閉鎖された精錬所跡地を美術館としてオープンさせ、アート好きはもちろん、廃墟好きにも人気のスポットです。瀬戸内の島巡りで行っておきたい島の1つ、犬島の魅力を紹介します。
犬島ってどこ?
岡山県の犬島は瀬戸内海に浮かぶ島で、かつては銅の精錬所と花崗岩の採石場があり、隆盛をきわめてきた歴史があります。現在も当時の遺構が独特の雰囲気と景観を醸し出しており、2008年に犬島精錬所美術館が開館しました。また2010年から始まった瀬戸内国際芸術祭の開催地のひとつであり、現代アートの島として人気を集めています。
地図を見て分かるように岡山県側から犬島へは、宝伝港からたった10分の距離。しかし高松を起点に瀬戸内のアート巡りをしている旅行者は、高松港~直島~豊島を経由して犬島にたどり着くフェリーを利用することが多いようです。犬島まで向かうフェリーの本数は一日数本のため、フェリーの時間と島内の見学時間をしっかりと計画してから向かうことをオススメします。
犬島の目玉!犬島精錬所美術館
近代化産業遺産である銅製錬所の遺構を再生した美術館で、2008年に開館しました。自然エネルギーを活用、犬島で採れる石やカラミレンガを使い、三分一博志の建築によって環境に負荷をかけず設計されています。美術館内部では、日本の近代化に警鐘を鳴らしたことで知られる三島由紀夫を題材とした柳幸典の作品を展開しており、圧倒的な世界感で訴えかける作品に魅了されます。
館内は撮影不可で公式サイトでもあまり詳しい写真や映像はないのですが、とにかく圧倒的な世界観に引き込まれていきますので、直接体感されることをオススメします。筆者個人の意見としては一緒に巡ることが多いであろう直島の地中美術館、豊島の豊島美術館と比較して、それぞれ個性が違うものの3つの中で一番好きで、独特の世界感に圧倒させられた美術館でした。
犬島精錬所跡地も見逃がせない!
美術館の外にも精錬所跡地が広がっており、荒廃したかつての精錬所の痕跡を感じることが出来ます。自由に歩いて回れるようになっており、歩道も整備されています。
一部崩れ落ちた場所や草や蔦が生えているところなど、廃墟マニアならばグッとくるようなポイントがたくさんあります。思うがままに歩き回ってみてください。
犬島「家プロジェクト」
直島の家プロジェクトは有名ですが、犬島にも家プロジェクトがあり、島の日常や自然と一体となった作品群が楽しめます。神社に隣接する民家をリノベーションしたF邸/Biota (Fauna/Flora)は、名和晃平が「生物相」をテーマに発表した立体作品。透明なアクリル壁で囲われた荒神明香のS邸/コンタクトレンズは、大小様々な円形レンズが無数に浮かんでいます。
自然のなかに見られる幾何形体や人びとの暮らしの生命感を、エネルギーあふれる色を用いて仮想風景として表現したベアトリス・ミリャーゼスのA邸/Yellow Flower Dreamや、かつては集会所であった場所にあるC邸の作品も見逃せません。
また作品の中央に立ち自分を取り囲む3つの鏡をのぞき込むと、自分自身と映し出された風景とが無限にループ、時空の奥行きが感じられるオラファー・エリアソンのI邸/Self-loopなど、それぞれが個性あふれる作品ばかりです。
こちらは、地面に描かれた生命力あふれる動植物たちを表現した淺井裕介の、石職人の家跡/太古の声を聴くように、昨日の声を聴く。集落の路地やつじの地面には動物や植物のモチーフが、ゴム素材を焼き付ける手法で描かれています。敷地内に収まることなく少しずつ描き足されており、I邸の近くで見られますので探してみてください。