外貨投資とは、日本の通貨である円をユーロやドルなどの海外の通貨(外貨)に換金し預金したり、海外の市場に投資したりすることを言います。こうした海外通貨への投資は、どのような仕組みになっていて、どのようなメリットがあるのでしょうか。「これから外貨投資をしてみたい」「興味がある」という人に向けて、投資前に知っておきたい基礎知識や外貨に投資するための具体的な方法について解説します。
外貨で投資する意味は?
外貨で投資することにどのようなメリットがあるのか、整理しておきましょう。
今、世界はどんどんグローバル化が進んでいます。たとえ新型コロナウイルスの影響があったとしても、海外とのやり取りは完全になくなっているわけではありません。海外への渡航や輸出・輸入などの場面では、必ずお互いの国の通貨が交換されています。
日本円の価値は、海外の通貨との需給バランスによって変動します。たとえばドルを売って円を買う人が多ければ円高ドル安に、円を売ってドルを買う人が多ければ円安ドル高、といった具合です。
自分の資産として日本円だけを持っていたとしましょう。今後日本円の価値が下がったり物価が上がったりした場合、額面の金額は同じでも資産としての価値は低くなってしまいます。資産価値が低くなると、「購入できるものの量が少なくなる」「生活水準が下がる」といったことにつながります。
日本円だけでなく資産として外貨を持つことによって、もし日本円が下がったとしても外貨が上がっていれば経済的なダメージを減らすことができるのです。
外貨投資で分散投資
投資の世界には「卵を1つのカゴに盛るな」という格言があります。資産(卵)を1ヵ所(1つのカゴ)に集中させていたら、もしそのカゴに何かあったとき卵が全滅してしまいます。そうではなく、複数の場所に少しずつ分散しておけば、1つのカゴがダメージを受けて壊滅しても、ほかのカゴの卵は無事を保てます。
資産を外貨にも投資することはこの格言を実践すること、つまり、資産を分散させリスクを抑えることになります。
おもな外貨投資の種類
では、ここからは外貨で投資するための具体的な方法について見ていきましょう。いくつかの種類があります。
外貨預金
「外貨投資」と聞いて最初にイメージするのは、この「外貨預金」かもしれません。その名のとおり、日本円ではなく外国の通貨で預金をすることで、銀行などで取り扱っています。外貨預金で利益を出す方法は2通りあります。1つは「金利差」、もう1つは「為替の値動き」です。
・利益の出し方1.金利差
「日本は低金利」と聞いたことがあるかもしれません。銀行の普通預金に預けている場合、金利は0.001%などとわずかで、「お金が増える」という感覚はほとんどないに等しいでしょう。でも、海外を見渡すと日本よりも高い預金金利でお金を預けられる国はたくさんあります。預金金利が高ければ、それだけお金も増えやすくなります。
・利益の出し方2.為替の値動き
通貨同士をどんなレートで交換するか(為替)は常に変動していますので、その交換のタイミングによって利益や損失が出ます。たとえば日本円を外貨として預けたときより、その外貨を日本円として引き出すときの方が円安になっていれば「為替差益」が出ます。
・預金できる通貨の例
米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドル、NZドルなど、銀行によって扱っている通貨が異なりますが、5~20種類ほど用意しているところが多いです。
・メリットとデメリット
金利差と為替、2つの面から利益を狙えるのがメリットです。銀行で取引できること、仕組みがそこまで複雑ではないことから、投資初心者でも比較的始めやすいのもポイントです。
ただ、「預金」という名前ですが日本円の普通預金のように元本保証ではありません。金利が高くても為替の変動によっては最終的にマイナスが出てしまうこともあります。また、外貨投資全般に言えますが、通貨の両替に手数料がかかることも知っておきましょう。
・取引方法
銀行の窓口で、外貨預金用の口座を開設します。今はインターネットバンキングやスマホアプリだけでできる銀行もあるので、平日の日中に時間が取れない方でも始めやすくなっています。「外貨普通預金」や「外貨定期預金」といった種類があるので、希望する預金種類と通貨を選んで手続きしましょう。
・向いている人
外貨預金は、投資初心者や海外に行く機会が多い(外貨を利用する機会が多い)方に特に向いている方法と言えるでしょう。
FX
FXは「外国為替証拠金取引」の略称です。実はFXは「通貨間の金利差」や「為替の値動き」を利用して利益を出すという点では、外貨預金と同じです。
もっとも大きな違いは、FXだけにある「レバレッジ」という仕組みです。FXでは、取引の最初に「証拠金」を預けます。この証拠金を担保にすることで、手元の資金の何倍ものお金を動かすことができます。たとえば「レバレッジ25倍」であれば、元手10万円で250万円分と同じだけの取引が可能です。
・取引できる通貨の例
外貨預金同様、米ドル、ユーロ、英ポンド、豪ドル、NZドルなどがあります。金融機関にもよりますが、外貨預金よりも選べる通貨の種類が豊富なことが多いです。
・メリットとデメリット
メリットは、元手資金が少なくても大きな金額を動かしてハイリターンを狙えることです。ただ、「ハイリターン=ハイリスク」が投資の原則です。
うまくいけば多くの利益が出ますが、もし予想外の値下がりがあった場合は「追加証拠金」としてさらなる預け入れを求められたり、保有中の通貨を強制的に手放さざるを得なくなったりする場合もあります。
預け入れた金額以上の大きな損失が出ることもあるため、FXは一般的に「ハイリスク・ハイリターンの投資」に分類されます。
・取引方法
証券会社もしくはFX取引の専業会社でFX用の口座を開設するところからスタートします。口座ができたら証拠金を預け入れて、通貨を選び、今後の値動きを予想して売買の注文手続きを済ませます。
・向いている人
短期間で高いリターンを得たい方向きの投資方法です。マイナスが出ても生活に支障をきたさないくらいの少額(余裕資金)で取り組みたいところです。
外国株
外貨投資とは、外貨そのものを投資対象とするものだけに限りません。外貨で金融商品を購入することも含まれます。外貨で外国企業の株式を購入する「外国株投資」もその1つです。
株式とは、企業が資金調達のために発行しているものです。株式を保有していれば「配当金」が受け取れたり、企業が成長して株価が上がったときに売却すれば「値上がり益」を得られたりします。
世界的な大企業や成長著しい企業なども投資先として選べるため、外貨投資に取り組みたい方だけでなく、すでに日本株の投資に取り組んでいて幅を広げたい方などにも選ばれます。
・投資できる国の例
アメリカや中国を中心に、シンガポール、インド、ブラジルなど。金融機関ごとに投資できる国に違いがあります。
・メリットとデメリット
国によっては経済成長にともなって企業もどんどん大きくなっている=値上がり益を狙いやすかったり、日本よりも配当金が多い傾向であったり、大きな利益も目指せるのがメリットです。
ただ、日本株の投資と比べると手数料が高くなりがちなことや、投資先企業の情報を仕入れにくいことなどから、投資に慣れていない人にとってはハードルが高く感じるかもしれません。
・取引方法
外国株式の取り扱いがある証券会社で、投資用の口座を開設しましょう。投資先の企業(銘柄)を選び、購入の手続きを済ませます。スマホアプリや取引ツールなどを使って手軽に取引できるようにしている証券会社もありますよ。
・向いている人
投資先の企業を分析するための時間や知識が必要です。積極的に投資に取り組みたい方、日本株の投資経験がある方に向いているでしょう。
外国債券
債券は、国・自治体・企業などさまざまな団体が資金を調達するために発行しています。「債券を購入する=その団体にお金を貸す」ということになります。債券を保有しているあいだは利息が受け取れ、満期になると元本が返ってきます。
・投資できる国の例
アメリカ、ユーロ圏、オセアニア、新興国など世界各国。国が発行する「国債」、企業が発行する「社債」、世界銀行など公的機関が発行する「国際機関債」などの種類があります。
・メリットとデメリット
国が発行する「国債」は基本的に国が破綻しない限り返済されるため、基本的に株式投資よりもリスクが低いとされています。
ただし、政治や経済情勢が不安定でリスクが高い国もあります。リスクが高い国ほど国債の利回りが高いので、予測されるリスクとリターンを見極めて投資先を選ぶ必要があります。
外貨預金、FX、外国株投資に比べるとマイナーな投資なので、関連書籍や投資家ブログなどの情報が見つけにくい点もデメリットです。
・取引方法
証券会社で口座を開設しましょう。口座に投資用の資金を入金したら、どの国のどの債券に投資するのかを選んで購入手続きをします。
・向いている人
外国株投資よりリスクを抑えて投資したい方や、日本国債より高い利回りで国債に投資したい方などにとっては検討しがいのある選択肢となるでしょう。
その他の外貨投資
「外貨建て投資信託」「外貨建て保険」「海外不動産投資」なども外貨投資の手段になります。
・外貨建て投資信託
投資信託とは、多数の投資家からお金を集めて1ヵ所にまとめたものを、運用のプロが株式・債券・不動産などの資産に分散させて投資する金融商品です。おおまかな投資方針だけ決めておけば、自分で個別の銘柄を選ばなくてもプロにお任せできるため、投資初心者にも人気があります。
基本は円建て(日本円で投資する)ですが、外貨建て(外貨で投資する)も選べます。
・外貨建て保険
保険の中には「貯蓄型」と呼ばれるタイプがあり、万が一の備えとしてだけでなく、資産運用にも利用されています。外貨建て保険は外貨で保険料を支払っていき、解約時や満期時にはまとまったお金が受け取れる仕組みになっています。
・海外不動産投資
海外の不動産(住宅やビルなど)に投資するという方法もあります。ただ、多額の元手資金や現地の情報、不動産の知識などが必要になるため、かなり難易度が高いと言えます。海外不動産に興味があるなら、海外不動産に投資する投資信託を利用するのも1つです。