2018年に入ってから急速に円高ドル安が進行している。2015年までは、米利上げ期待から円安ドル高が進行していたが、実際に利上げが行われるようになってからは、どちらかと言えば円高ドル安に動いている。
東証一部の売買代金に占める海外投資家のシェアは約6割~7割にのぼっており、日経平均株価の動きに与える海外投資家の影響は大きい。株価の動きのみならず為替相場の動きで損益が変動しているため、海外投資家の売買動向は常に考える必要がある。
急激に進む「円高ドル安」の背景
2017年のドル円相場は、1ドル110円前後を推移する動きが続いていた。2018年は年3回、もしくは年4回の利上げが行われる可能性があるとされているにも関わらず、ドル円相場では円高ドル安が進行している。
3月に入ってから円高が進行した背景の一つには、米トランプ大統領が、中国に対して高関税の制裁措置を表明したことが挙げられる。マーケットではリスクオフの動きが進み、一時、1ドル105円を割り込んだ。
円高進行を消費者視点で考えた場合には、日本人が海外旅行に出かけた時に、円高外貨安であれば買い物などを安く済ませられるメリットがあるため、久しぶりの円高水準で、海外旅行を検討してもよいだろう。また、いずれは円安ドル高に反転する可能性を考えて、外貨両替ショップなどで米ドルの購入を検討している人もいるのではないだろうか。
企業業績に影響を与えるドル円相場
日本株を保有している投資家は、為替相場、とりわけドル円相場の動きには敏感になる必要がある。
日経の指数公式サイト「日経平均プロファイル」を見るとわかるように、日経平均株価はソニー<6758>やトヨタ自動車<7203>、東京エレクトロン<8035>などの日本を代表する企業が225銘柄として選定されている。
以前に比べれば、日本国内のみならず海外にも拠点を持つ企業は増えているとは言え、それでも円高進行は企業の業績に与える影響は小さくない。
決算発表時、多くの企業はその時々の想定為替レートを発表している。たとえば、トヨタ自動車が先日発表した2018年3月期第3四半期の決算資料では、2018年1月以降のドル円相場の想定為替レートは1米ドル110円に設定されている。すでに1米ドル5円以上も円高ドル安が進んでいることを考えると、ドル円相場が今後の企業業績に悪影響を与える可能性がある。
反対に、ドル円相場で円安ドル高が進行した際には、為替差益が計上されることになるので、企業業績が改善する可能性が高い。商品を海外から輸入する場合、円高外貨安になればその商品の価格が安くなる。そのため、海外製品を輸入している食品や小売り企業のほか、旅行費用が割安になる旅行会社や航空会社などは恩恵を受けられる。
日経平均株価を構成している225銘柄のなかで、円高ドル安進行で企業業績が悪影響を受ける企業が多ければ多いほど、日経平均株価も下落することにならざるを得ないのだ。