20世紀を代表する建築家、ル・コルビュジエ。スイスに生まれ、フランスを中心に活動していた彼の作品は、パリ郊外にある「サヴォワ邸」、スイス国境近くの「ロンシャンの礼拝堂」、リヨンの「ラ・トゥーレット修道院」など、フランス各地に残っています。2016年には世界遺産にも登録されたことでもニュースとなりましたね。
建築家としての活動が広く知られているル・コルビュジエですが、実は、画家としても活動していたのです。
今回、紹介するのは、2月19日に開幕したそんなル・コルビュジエの画家としての活動にフォーカスした初の大規模展覧会「ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代」。その舞台となるのは、なんと日本国内唯一のル・コルビュジエ建築である上野の『国立西洋美術館』!今回はその見どころを紹介します。
絵画から建築へ
スイスで生まれたル・コルビュジエ(本名・シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ)は、現地の美術学校で学んだ後、1917年パリへと拠点を移します。
18年末より、同年代の画家のアメデ・オザンファンとともに、単純化した美しさを追求する新しい芸術「ピュリスム(純粋主義)」の運動を開始。『エスプリ・ヌーヴォー』という雑誌を編集・発行し、芸術だけでなく、文学、化学、工業などのさまざまな分野において工業化社会に対応した新しい精神を広めることを訴えました。その中で、当時の美術界の先端を行く芸術家たちとの交流を重ね、やがて近代建築の巨匠「ル・コルビュジエ」へと生まれ変わるのです。
今回の展覧会は、その時代の約10年間のル・コルビュジエの活動に焦点をあて、絵画、建築、都市計画、出版、インテリア・デザインなど多方面での軌跡を紹介するというもの。
ル・コルビュジエと彼と同時代の作家たちの美術作品約100点に加え、建築模型、出版物、映像など多数の資料を展示。「ピュリスムの誕生」「キュビスムとの対峙」「ピュリスムの頂点と終幕」「ピュリスム以降のル・コルビュジエ」の4章構成で、ほぼ時系列に沿った流れで展示されているので、ル・コルビュジエの変化を感じ取ることができるはず。
同時代の画家ピカソやレジェの作品も
「ピュリスムの誕生」では、ル・コルビュジエとオザンファンの作品を対比して展示。食器や楽器など日常の対象物を安定感ある構図で描いているのが特徴的。秩序ある構成を追求しようとした2人の想いを伺い知れます。
第2章の「キュビスムとの対峙」では、パブロ・ピカソ、ジョルジュ・ブラック、フェルナン・レジェといったキュビスムを代表する画家たちの作品も並びます。
ル・コルビュジエが目指した「ピュリスム」に、「キュビスム」が大きな影響を与えたということが伝わってくるはず。
「ピュリスムの頂点と終幕」からは、建築家としての活動が活発になってきた時代のル・コルビュジエの作品が並びます。
ル・コルビュジエが近代建築の第一人者として国際的に注目されたきっかけともなる、「サヴォワ邸」の建築模型や図面も展示。
建築家としての活動が活発になって以降も絵画は変わらずル・コルビュジエにとって重要な芸術であり続けたのだそう。そして、その成果がさまざまな建築へと反映されていくのです。
ル・コルビュジエの思考の変化はもちろん、彼の中で絵画と建築がどのように影響しあっているのかも感じられる展示となっています。
ル・コルビュジエの作品をル・コルビュジエの建築で鑑賞するという贅沢
そして、今回の展覧会の見どころで忘れていけないのは、ル・コルビュジエの作品を彼自身の建築空間の中で観ることができるということ!会場の中心にある吹き抜けの「19世紀ホール」は、天井に三角形のトップライト(天窓)が配置され、やわらかな自然光が差込みます。
ル・コルビュジエの建築の代名詞スロープも。
低い天井と高い天井が組み合わされた2階の展示室は、ひとつながりながらも空間に変化が感じられます。
展示室は、今回の展示のために照度が上げられており、明るい空間に。ル・コルビュジエの歴史を辿りながら建築をぐるっと体験できる順路になっています。
作家自身が設計した建造物の中で、作品を見れるチャンスなんてそうそうありません。ぜひ、作品の展示はもちろん、ル・コルビュジエの建築空間も楽しみながら鑑賞してみてくださいね。
■展覧会情報
ル・コルビュジエ 絵画から建築へ―ピュリスムの時代
会期:2019年2月19日(火)~5月19日(日)
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7(地図)
開館時間:9:30~17:30、金曜日・土曜日は20:00まで ※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(3月25日、4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)
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