町屋の一棟貸しやゲストハウス、外資系のラグジュアリーホテル、日本資本のホテルなど、京都の宿泊シーンはとても賑やかです。中でも私のイチオシは、やはり「ザ・リッツ・カールトン京都」。シックでモダン、そして、古都・京都の空気感をまとっている唯一無二の場所。立ち寄るだけでも素敵ですが、今回はじっくりステイしてみました。
■二条大橋のたもと、鴨川沿いの絶好の立地
「ザ・リッツ・カールトン京都」に泊まるからには、ぜひ「おこもり滞在」を敢行してみたいところです。ご存知、京都は日本屈指の観光地。
京都まで来てホテルから出ないってどういうことよ? しかも二条大橋のたもとにある「ザ・リッツ・カールトン京都」は祇園や先斗町に近くて、観光にとても便利な立地なのに! という感じですが、だからこそ、大人の選択を決め込んでみようじゃありませんか。
私もこれまで京都に来たら、生き急ぐかのように観光地や飲食店を駆け回っていたのですが、今回は覚悟を決めて(!)ホテルとがっつり向き合うことにしました。
館内に入ると早速、甘くて、でもさわやかな「よい香り」が漂ってきます。こちらは「ザ・リッツ・カールトン京都」のイメージでブレンドされたホテルオリジナルの香りなのだそう。
お茶とシトラスが主な成分となっているアロマで、地下のスパで購入できます。ここでしか購入できないので、お土産におすすめですよ。
客室に通してもらい、全面のガラスの大きな窓の外に広がる鴨川、そしてその奥に広がる東山三十六峰の風景にまずため息。選択は間違ってなかった! 部屋のなかからこの景色が眺められるのですから、もはや外に出る必要はありません(きっぱり)。
人目を気にせず、だらーんと寛ぎながら(ついでにお酒なんかも楽しみながら)京都ならではの風景を愛でられるなんて極楽そのもの。
そんな私の心を知ってか知らずか(知らないですよね)、デイベッドもちゃーんと用意されていました。町家の縁側に見立てた、窓辺のリビングエリアも雰囲気たっぷりです。
このリビングエリア、夜がまたいいんです。平安時代、貴族が東山から昇る月を愛でるために集ったというのも納得の美しさ。
客室、そしてホテル内には、和傘をモチーフにした照明や格子戸など、さまざまな場所に「和」を感じる設えが。ネスプレッソのコーヒーメーカーに加え、京番茶のセットも用意されていて、ホテルのコンセプトを体現するように、いい感じで和と洋が混在しています。
ベッドはシモンズ製でした。ベッドに横になるやいなや意識を失ったのは言うまでもありません。
心地良い部屋で時間を気にせず寛ぎたいのは山々ですが、「ザ・リッツ・カールトン京都」に来たら必ず足を運ばなければならない場所があります(誰にも頼まれているわけでもないけれど)。
そう、地下にあるシックな屋内プールです。数あるホテルのプールの中でも、こちらが一、二を争う私のお気に入り。
スパ施設へのアプローチとなる長い廊下の両脇には、ぼわんと行灯の光がともっていて、まるで時空を超えていくかのように幻想的です。
プールも洞窟のような作りで非日常感満点。BGMは地上階から壁面を流れ落ちてくる滝の音! サウナやお風呂も併設していて、ここで何時間でも過ごせてしまえそう(というか過ごしたい)。
地上から陽の差し込む日中と、シックな照明に照らされる夜とでは雰囲気が異なるので、時間を変えて訪れるのはマストです。
プールと同じフロアにあるスパにもぜひ足を運びたいところです。施術には英国の高級スパブランド「ESPA」のアイテムを使用していますが、こちらでは京都産の素材を取り入れたメニューも用意。旅情をかきたてます。
ぜひ体験したいシグネチャーは「緑茶 セレニティー リチュアル」。2014年の開業時からある人気の施術です。名前の通り、緑茶のエキスをたっぷり使ったコースで、ウェルカムドリンクのお抹茶からスタートし、フットリチュアルのお湯にもお茶を投入。
さらには緑茶を含ませたハーブボールで全身をほぐしたうえで、「ESPA」のオイルを使ってマッサージしていくというものも。お茶の香りが心地よく、あっという間に夢の世界へと旅立ちました。カテキンなど抗酸化作用が期待できるのもナイスです。
■館内409のアートを巡る無料ツアーも
館内のお楽しみポイントはまだまだあります。ホテル内には、京都や同ホテルのアートワークのメインコンセプトである「源氏物語」をテーマにした、約80人のアーティストによる、さまざまなアート作品が飾られています。
その数、なんと409点(客室内のものを含む)! そんなアートの一部を解説付きで楽しめる、約1時間で無料のアートツアーも開催されていて、これがかなり面白いんです。
たとえば、エントランス入ってすぐの場所には、琵琶をモチーフにし、ガラスビーズで覆った名和晃平さんの作品「PixCell-Biwa(Mica)」が光を反射してきらきらと輝いています。
クリスタルのような透明感を湛えていますが、こちらは写真に撮るとピンクっぽく輝いてみえるのだとか。知らなかった! 近くの通路には七宝文様の壁がありますが、この模様はホテルのアイコン的存在になっていて、客室のドア、ベッドボード、宴会場のカーペットなど随所で見ることができます。
また、「ザ・リッツ・カールトン京都」が建つ以前、この場所には「ホテルフジタ京都」があったのですが、当時からあった石や滝は、極力手を入れずに残しているとか。
車寄せからエントランスまでは、両側に水が流れる通路を通ってアプローチするのですが、この水は鴨川とみそそぎ川をイメージしたものだと、ツアーで案内をしてくれたスタッフの方が教えてくれました。
■充実のアクティビティ。GMと走っちゃう!?
このアートツアーをはじめ、「ザ・リッツ・カールトン京都」には、無料・有料含め、20を超えるアクティビティを用意されています。
早朝の澄んだ空気のなかで、近隣の寺社を巡る「ランニング京都」や、名所を自転車で訪れる「サイクリングツアー」、京都の山歩きを楽しむ「ハイキング」は宿泊者ならなんと無料。太っ腹です。
「ランニング京都」は、日によってはランニング好きのジェネラルマネージャー、マーク・ノイコムさんが案内してくれることもあるとか。私は「サイクリングツアー」を申し込み、楽しみにしていたのですが当日は雨で中止に。残念でしたが、プールへと駆け込みました。
有料のアクティビティは創業100年あまりの職人にミニ和傘づくりを学ぶ「和傘作り」、名刹妙覚寺で、太鼓を使ったおつとめに参加した後、お経を唱え、簡単な朝食を頂く「朝のおつとめ体験」、ホテルの庭園を実際に担当している庭師の指導のもと、ミニチュアの枯山水をつくる「ミニチュア日本庭園」などを用意。どれも気になるものばかりです。
侍の衣装を実際に身に着け、剣舞のエキスパートから日本刀や扇の扱い方、華麗な剣舞の舞いなどを習得できる「サムライエクスペリエンス」なんてアクティビティは外国人観光客に人気だそうですよ(私もやってみたい!)。
今回、私は、唐紙は襖や壁紙に用いられていた伝統工芸品の「京からかみ」製作に参加。からかみの歴史や簡単な作り方を学び、実際に手摺りを体験しました。
■星付きの天ぷら、エルメのパン……必食がいっぱいです
さて。旅に「食」は欠かせませんよね。「ザ・リッツ・カールトン京都」のメインダイニングは、ナポリの伝統をベースにしつつ、日本の旬の素材もいかしたイタリアンを提供するレストラン「ラ・ロカンダ」。
料理はもちろんですが、明治41年に建てられた「夷川邸」を移築した個室も必見です。また、この「ラ・ロカンダ」のほか、館内には会席料理、寿司、天ぷら、鉄板焼きの4つのジャンルに分かれた「水暉(みずき)」があります。
夕食をいただく場所は最初から決めていました。『ミシュランガイド京都・大阪 2018』から2年連続で1つ星を獲得している「天麩羅 水暉」です。
「天麩羅 水暉」を率いる藤元健司料理長は、日本料理の修行後、「北新地天麩羅・鉄板・義」にて天麩羅の調理技術を磨き、2013年、ザ・リッツ・カールトン京都「天麩羅 水暉」の料理長に就任。視覚や味覚だけでなく、食材が油に入った瞬間の音や香りなど、五感で堪能できる天麩羅を追求しています。
この日いただいた天ぷらも、「近江牛フィレの紫蘇巻」「松茸の鱧巻き」など、ほかでは出会ったことのないものばかり。カマンベールや甘鯛、いちじくや銀杏もおいしゅうございました。
締めには、料理長のスペシャリテ「ハーブ卵を使った卵黄の天麩羅御飯 キャビアのせ」がオーダーできます(ディナーのみ)。これぞまさにラグジュアリー卵かけごはんです。悶絶です。
デザートが「ピエール・エルメ・パリ」というのも至福。とにかく大満足のディナーで、こうやって書いていてもおいしい記憶が蘇ってうれしい悲鳴です。
「美食」への探訪はまだ終わりません。ここ「ザ・リッツ・カールトン京都」では、朝食に、館内の「ピエール・エルメ・パリ」で焼き上げた名物クロワッサンやワッフルが楽しめるのです。
「エルメって言ったって、クロワッサンはクロワッサンでしょ。多少美味しいかもしれないけど」というあなた。わかります。私もそう思ってましたから(笑)。でもとにかく食べてみてください。クロワッサンは4種用意されていました。
シンプルなプレーンは外せませんし、ローズやライチ、フランボワーズをベースとした代表的なフレーバー「イスパハン」テイストのものも。きっとぜんぶ食べたくなるはず。
このときはカロリーなど、気にしている場合ではありません。「イスパハン」の名のついた、ヨーグルト、ヴィエノワズリー、グラノーラもありました。
33種の天然ハーブを餌に育てられた鶏の玉子で作る、玉子料理もぜひ。
そうそう、帰路につく前には、ホテル限定のマカロン「ジャルダン ド 京都」を購入するのもお忘れなく。こちらは、ピエール・エルメが「ザ・リッツ・カールトン京都」をイメージして作り上げた、煎り番茶の風味のホワイトチョコレートガナッシュとスモーキーな香りを堪能できる、これまたここでしか買えないマカロンです。
チェックインからチェックアウトまで約20時間、アクティビティ以外はホテルから一歩も出ないおこもり滞在。退屈するどころか、やりたいこと(プールサイドでだらだらする、昼酒を飲んで惰眠を貪る含め)がありすぎます。
極上のシチュエーション、おもてなしのなかで過ごす、日常の延長にある非日常の1泊2日。たまには自分にこんなご褒美をあげてみてもいいですよね。
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