退職直前には、有給休暇を消化するため長期の休みを取得するのが一般的です。ただし離職の時期がボーナス支給のタイミングと重なると「長期の有給休暇を申請することで査定が悪くなってボーナスの金額に影響するのでは」と心配する人は多いのではないでしょうか。そこで本記事では、退職直前に有給消化した場合に、ボーナスの基準や査定がどのように変化するのかについて解説します。最後まで読むことで「退職間際の有給取得とボーナスの間に関係があるのか」について、適切に見極めることができるようになるでしょう。

ボーナスって必ずもらえるの?

(画像提供:sb/stock.adobe.com)

ボーナスは、当たり前のようにもらえるものと思っている人はいませんか?しかしボーナスの支給には、法的な拘束力はありません。あくまでも会社からの恩給にしか過ぎず、義務は生じないのです。ただし雇用契約書や就業規則に「ボーナスを支払う」などの記載があった場合、会社は従業員へボーナスを支払う必要があります。

ボーナスが給付される場合、基準は企業によって異なり基本的には社内で規定されている「査定」に基づいて金額が決定されます。

ボーナスの査定期間

国家公務員の場合の支給日は法律で定められています。具体的な支給日は、夏が6月30日(基準日は6月1日)、冬は12月10日(基準日は12月1日)です。

一方で民間企業の支給時期は、おおむね6~7月ごろと12月ごろとなっています。7月に支給されるボーナスの査定期間は、前年の10~3月までとなっており、4~6月は査定内容に基づいて支給額を決定する計算期間です。

一方で12月に支給されるボーナスに関しては4~9月までが査定期間となり10月と11月は計算期間となります。

育休などの休業の場合

休業している人に対してボーナスを給付するかどうかは、会社ごとに規定が異なります。

たとえば育休などの理由で査定期間にまったく出社しなかった場合、査定担当者は休んでいる人の勤務状況や成績などの評価をすることができません。そのため「規定に基づいてボーナスを一切支給しない」と判断される可能性があります。

一方、わずかな日数でも査定期間に出社したのであれば満額ではなくともボーナスが支給される可能性は高いでしょう。しかし男女雇用機会均等法第9条によると「出産などの休暇で不利益な取り扱いをしてはならない」とあります。

また最高裁判例では、「産休で就業規則に満たない勤務日数として減額措置は無効と言えないが欠勤扱いとして賞与算定期間としなかったことは無効」という判決が出ています。

判例を踏まえると、「産休や育休により就業規則に規定する勤務日数に満たないと減額される可能性は否めないが、算定期間から除外することはできない」と言えるでしょう。

自己都合退職

ボーナスの支給日に会社に在籍していれば基本的にはもらえます。ただボーナスは「給付を受ける社員が引き続き勤務し会社に貢献する」という前提に基づいて支払われるものです。

そのため「査定期間に自己都合で退職したい」という意思を伝えた結果、評価が下がり満額をもらえないことは十分にありえます。逆にボーナス支給日前に退職してしまった場合は、もらえない可能性も出てくるでしょう。

過去にボーナスの支払いで裁判になったケースでは、「賞与支給日に在籍していれば賞与は支給されることが合理的」とされています。

仮に就業規則で「賞与支給日時点で在籍していても退職予定者には支給しない」と記載されていたとします。もしそれで支払いが無かったり、極端に減額されたりした場合は、違法となる可能性があるでしょう。

有給との関係性

(画像提供:takasu/stock.adobe.com)

年次有給休暇は、法律で定められている労働者の権利です。しかし有給を利用することに何となくためらいを感じる人は少なくありません。そのためボーナスや査定との関係性を正しく把握しておくのは有益でしょう。

ボーナス支払日に有給

労働基準法附則第136条によれば有給休暇の権利を行使したことに起因して給与が減額されるなどの不利益が発生することは明確に禁じられています。

有給のタイミングとボーナスの査定額に因果関係が生じてはいけないため、たとえボーナスの支払日にリフレッシュを目的として有給休暇を取得したとしても会社に在籍していることに変わりありません。

そのため有給が重大なマイナス要素とみなされて減額された場合は違法となります。

退職が決まり有給消化中にボーナスを迎えた場合

離職する意思を会社へ伝え、すでに有給休暇を消化している段階でボーナス支給日を迎えた場合、一定額の減額が行われる可能性はあります。過去の判例によると退職予定の人の賞与額を極端に少ない金額でしか支給しないことは違法とされています。