2016年から連載が開始され、現在(2018年10月時点)7巻まで発売されている『傘寿まり子』(講談社・おざわ ゆき先生作)は、ヒロインの設定からしてかなり特殊な少女漫画です。

ヒロインの幸田まり子さんは、息子夫婦・孫夫婦・孫夫婦の子供と四世帯同居をしているベテラン作家・80歳。

少女漫画は、「恋愛の成就」がゴールとされている作品が多いですが、本作では、「恋愛・結婚・出産」のその先が描かれています。

人生90年時代。『傘寿まり子』は新しい生き方のロールモデル

ところで、みなさんは自分が何歳まで生きると思いますか?

「そこまで長生きしなくてもいい。病院漬けになる前に死にたい」

と思われる方も多いかもしれません。

ですが、統計上、現代に生きている女性の2人に1人は、90歳以上長生きする、と言われています。(※1)

厚生労働省の調査によると、現代の女性の初婚平均年齢は31歳(※2)。つまり、私たちのほとんどは、結婚・出産してからの人生の方が長くなるということです。

少女漫画では、「両思いになれてハッピーエンド」「結婚してハッピーエンド」になることが多いですが、実際には、「ハッピーエンド」の後も人生は続きます。

『傘寿まり子』は、これまでの少女漫画では描かれることの少なかった、恋愛・結婚・出産後の女性の生き方のロールモデルを提示してくれている作品でもあるのです。

80歳で、自分で建てた家を捨て、自立を決意したヒロイン

ヒロイン・幸田まり子さんは、15年前に夫に先立たれてからも、家族に囲まれた生活をしており、周りから見ると「幸せな老後」をおくっているかに見える女性です。

ですが、実際には、自分で建てた家なのにも関わらず、自分抜きで建て替えの話を進められていたり、作家としてもベテランになりすぎてしまい、仕事が先細りになっていったりと、ストレスの多い暮らしをしています。

自分が家族のお荷物になっている現状を察したまり子さんは、家出を決意し、80歳にして新たな自立の道を選ぶことになるのです。