退職金制度が廃止される、給料が低くなるといった従業員にとって不利な変更は「労働条件の不利益変更」と呼ばれます。労働契約法第9条では「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と定められており、従業員との話し合いが必須です。
言い換えると、従業員から同意が得られていれば、退職金制度の廃止も法律上は問題ないでしょう。
ただし、労働契約法第10条によると、変更後の就業規則を従業員に周知させたうえで、不利益変更の内容などが合理的である場合は、従業員から合意を得ていなくても条件を変更できるケースがあります。
また、労働組合があるときは、労働組合の代表もしくは多数決などにより退職金制度が廃止される可能性もあるため、今回の事例のような一従業員である夫が合意していなくても廃止される場合があるでしょう。
納得できないときは、条件変更の内容をよく確認し、必要に応じて会社と話し合いが必要です。
退職金制度がないメリットはある?
退職金制度を採用していない会社では、退職金がない分手当や給料が充実している場合があります。月収が高くなるため、収入から貯金に回しやすくなるでしょう。
また、退職金は支給額が確定されていません。会社の業績によっては減少する可能性もあります。しかし、制度自体がなければ、最初からないものとして老後の資金計画を立てるため、退職後のライフプランが崩れにくい点もメリットです。
さらに、退職金は「退職所得」に分類され、金額によっては課税対象になります。退職金がなければ、こうした税金の手続きも必要ありません。
金額だけで見れば退職金の平均額より少なくなるが、メリットもある
退職金の平均額と比較すると、毎月3000円の支給に変わると勤続20~24年で受け取る退職金よりも300万円近く少なくなるケースもあります。もし退職金を含めて老後の資金計画を考えていた場合は、計画の練り直しが必要でしょう。
しかし、退職金制度がなければ税金の手続きが不要になったり月給が高くなったりといったメリットもあります。退職金制度が廃止になったときは、金額の減少幅だけでなく、具体的な変更内容もよく確認しておきましょう。