「この状態で元の場所に戻すとなると、保護した自宅の敷地内に放すということになる。それなら家に迎えて、お世話をしたほうがいいだろうと思ったんです」

◆警戒心が強く、甘えたいけど甘えられない様子

イケメン猫
 こうして家族の一員となったイケメンくんはお外で厳しい暮らしをしていたからか、人間への警戒心が強く、今もなお抱っこやブラッシングが苦手。

 近付いてきても追うと逃げてしまい、甘えたいけど甘えられない様子です。

「でも、名前を呼ぶと振り向いてくれますし、ご飯をいれる時やトイレ掃除時、洗い物をする時などには、後ろから私を眺めています。あと、私の手が届くか届かないかのところで、5秒くらいゴロンとしてくれるようにもなりました」

◆つい猫じゃらしに飛びついてしまう日も

イケメン猫
グイグイ来てくれることはあるものの、人間側から触られるのは苦手
 また、猫じゃらしを振ると、本能で飛びついてきて「しまった! うっかり、はしゃいでしまった……』という表情で、ちまきなころんさんの顔を見てくることも。

 そんなイケメンくんは人間相手にはまだ少し壁があるものの、同居猫たちとすっかり打ち解け、仲良しに。日常の中では微笑ましい光景を、たくさん見せてくれています。

◆保護できる猫は“一握り”という悲しい現実

イケメン猫
 焦らず、イケメンくんのペースに合わせて絆を育む、ちまきなころんさん。猫ファーストな日常を送るのは猫1匹の命を救うことがどれだけ難しく、尊いかを知っているからです。

「保護できる子は一握り。車に轢かれて命を落としてしまう子、腕の中で見送られる子などタイミングひとつで、猫の運命は変わります。全員は保護できないから、せめてお外の子が飢えることがないよう、見守って貰えると嬉しいです」

 そう話すちまきなころんさんは猫のことを苦手な方こそ、一緒に活動してほしいと思ってもいます。

◆出会った猫たちの幸せを願いたい

 また、下半身麻痺など世間一般ではハンデと呼ばれ、「可哀想」という視線のみが向けられやすい子たちのお世話をする中で、そうした子たちの愛くるしさも伝えたいと思うようになりました。

「例えば、『歩けないから』と安楽死を希望する方も多いものですが、病気を持つ子と関わったことがなかった私でもお世話はできるようになりましたし、そうした子たちも他の猫たちと同じく、無邪気に元気いっぱい遊べます。もっと身近に感じてもらえると嬉しいです」

 自身が出会った猫たちの幸せを願い続ける、ちまきなころんさん。そうした優しさを感じ取ったからこそ、イケメンくんは自分を売り込みに行ったのかもしれません。

<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>

【古川諭香】

愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291