資産のほとんどを投資信託に

(写真=PIXTA)

1ヵ月後に再び面談に来られたFさんは、開口一番「投資をはじめました!」と言います。内容を聞いてみると、国内の投資信託に200万円、海外の投資信託に500万円と非常に偏った資産構成。中でも海外の投資信託のうち300万円はリスクの高い途上国の商品でした。

今まで投資の経験が無いにも関わらず、いきなりすべての資産をリスク資産に割り当てたFさん。少しバランスを見直した方がいいとご提案しましたが、安全資産では増えないので意味がない、自分は独身だし無駄遣いもしない。すぐ使えるお金がなくても困らないといって聞きません。

実は投資歴の浅い人の中には、Fさんのように「株価が下がっても売らなければ損失は出ない」「何十年でも保有して、値上がりしたら売ればいい」と、長期投資では失敗はしないと考えている人が少なくありません。

コロナの影響で損失を確定し続ける羽目に

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Fさんは投資を実行に移せて満足されたのか、その後しばらくは相談に来られませんでした。しかし、新型コロナウィルスの緊急事態宣言が解除されたころ、今度は家計の相談に来られました。

残業代が減ったことや今回のコロナの影響でボーナスが期待できない上、実家を出ることになり、引越費用が必要だそうです。資産のほとんどが投資信託であり、その時点で売却すると損失が出てしまうタイミングでしたが、それでも投資信託を売って引越費用や当面の生活費を工面するしかありませんでした。

資産の3分の1でも貯金や国債などに振り分けておけば、それらで当面の費用をカバーしている間、投資信託が値上がりするまでの時間を稼ぐことができたのです。

Fさんは運が悪かったように見えますが、ウィズコロナという状況が特殊だから今回のことが起こったわけではありません。誰でも病気や怪我で収入が減る可能性はあります。倒産やリストラなどが無いとも言い切れません。そういった時に、投資信託の運用がうまくいってなければ、損失を確定させながら取り崩すしかなくなるのです。