シリーズ第1作目(1978年)から吉宗のライバル役として登場する尾張大納言宗春(尾張徳川家は御三家の筆頭)が、なにかと将軍の座を狙ってくる。吉宗が唯一成敗できない相手でもある徳川宗春を中尾彬がぎらぎらした眼差しで怪演していた。悪だくみを試みた幕臣たちが成敗される中、ひとりプイッとふてくされるこの宗春役を『新・暴れん坊将軍』では、GACKTが伊達者風情で現代的に演じている。

◆デビュー50周年を経てなお永久不滅を感じさせる

吉宗評判記 暴れん坊将軍 第一部 傑作選 VOL.1 [DVD](東映)
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 17年ぶりの新作で、しかも新年スペシャルともなれば、こうしたアップデートが有名時代劇シリーズにも求められるのだろう。とはいえ、お決まりの「余の顔を見忘れたか!?」は、さすがに変わらずクライマックスまで温存されるかと思ったら、冒頭でいきなり繰りだされる。

 上様、ちょっとサービスが過ぎるんじゃないか。松平健は、第1作から寸分違わない口跡で、この決め台詞を発している。すごい。上様が身体にしみこんで、いつ演じてもすぐに憑依できてしまうのである。

 決め台詞のあとの見せ場であるチャンバラ場面は、松平の年齢による多少もったりした手さばきをカット割りでカバーしながら、切れ味はまだまだ鋭い。デビュー50周年を経てなお永久不滅を感じさせる。

◆『暴れん坊将軍』とリンクする朝ドラ『おむすび』

 50周年を記念した2024年から2025年にかけて、どこか『暴れん坊将軍』的なDNAが刻まれたかのような、暴れん坊ぶりのキャラクターを演じるドラマ作品がある。橋本環奈主演の朝ドラ『おむすび』である。

 松平が演じるのは、主人公・米田結(橋本環奈)の祖父・米田永吉。家庭をかえりみず、破天荒に好き勝手放題の永吉は、息子である米田聖人(北村有起哉)と確執がある。

 第3週第12回の回想場面では、トラック運転手である永吉が「万博たい」といってひとり見物にでかけてしまう。困っている人がいたら、すぐさまトラックで駆けつける。ネット上では、永吉の人助け精神を『暴れん坊将軍』とリンクさせる声もある。